<この記事にはTVアニメ・原作漫画『ONE PIECE』のネタバレが含まれます。ご注意ください。>
4月より放送時間が変わり、深夜枠での放送となったTVアニメ『ONE PIECE』が急展開に突入しています。第1129話「くまの過去 死んだ方がいい世界」からタイトルにある通り、バーソロミュー・くまの過去について明かされる長編シリーズがスタートしており、原作漫画などを踏まえると相当な話数を使うエピソードとなる見込みです。
それもあってか、オープニングやエンディング、アイキャッチに至るまでが、ルフィたちではなくくまとくまの娘とされるボニーにスポットライトを当てたものになっています。ただ、内容を見ればそれも納得。くまのエピソードへの本気の度合いが分かる描写や演出が早くも詰め込まれていました。
◆スタートから過激な描写だらけ! ハードな内容は深夜だからこそ?
今回のくまの過去エピソードの注目点はなんといってもその“壮絶な内容”です。
過去編のスタートを切った第1129話のサブタイトルが「くまの過去 死んだ方がいい世界」な通り、くまの出生早々に悲劇的な内容が描かれます。その内容というのが天竜人による奴隷制の様子を、奴隷側のくまの視点から赤裸々に描くといったもの。奴隷たちは人間扱いされず、命すらもぞんざいに扱われ、暴力を振るわれます。過去編ということにもあり、その様子に慈悲はないものとなっており、生死を弄ばれる姿が描かれていくかなりショックの強いものとなっています。
『ONE PIECE』自体は架空の世界を描いた作品ではありつつも、ここまで具体的な“奴隷”の扱いを描くのはかなり挑戦的といえます。
今となっては放送時間帯が深夜帯に移動したのでそこまで違和感はないですが、少し前まで日曜日の午前中に放送していたと思うと、こういった描写を真っ向から描いていくことも踏まえて、放送枠を移動したのではないかとまで思うほどです。
このくまの過去編は、原作漫画でも珍しいことに原作者の尾田栄一郎先生が“原稿が間に合わない”という事態も引き起こしていたシリーズです。
事件が起こったのが原作第1098話の『週刊少年ジャンプ』。この時点での掲載時は仕上げが間に合っておらず、一部ページやコマで燻んだような状態になっており、扉絵には「原稿あがりませんでした。」「ごめんね」とメッセージが書かれる異例の事態となっていました。
これには先生の体調などを不安がる声もあがる一方で、過去のインタビューや番組でのエピソード紹介などで、自身が涙が出そうという状況までネーム(漫画のベースとなる下書きの状態)を提出できないことや、実際に自身のネームで涙しながらネームを書き上げることもあると語られていたことから、同様の感動的なネームへのこだわりが強く出た事態が起きていたのでは、という予想もされていました。
まさにその回はそういった反応が出てもおかしくない劇的な内容だったこともあり、ネームにこだわり抜いた説があながち嘘には思えないほどだったからこそです。
既に開始早々に涙腺を刺激してくるくまの過去編ですが、そんな連載での事件が起きるエピソードもまだもう少し先。ここから毎週怒涛の展開が控えているので、観ている側としてもぜひ覚悟して臨みたいところです。
◆ついにロックスがセリフ付きで登場! あの芸能人もまさかの登場
ただ感動的な内容だけでなく、このくまのエピソードでは『ONE PIECE』でも重要なシーンなども含まれている点も要注意です。
第1130話「消された歴史!絶望のゴッドバレー」では、長らく具体的な内容が明かされていなかったゴッドバレー事件の様子などが初めて映像化されています。
ここでは伝説的な存在のロックス海賊団の当時の様子が初めて具体的にお披露目されるということもあり、ファンから注目されていたのですが、しっかりいくつものサプライズが用意されていました。
中でも未だその素性に謎の多い“ロックス”がセリフのみですが劇中に登場。映画『007』シリーズでダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンドの日本語吹き替えなどを担当している藤真秀さんが声を担当しています。出番こそわずかながらその正体を想像させられる瞬間となりました。
さらなるサプライズとしての登場が金獅子のシキです。シキは映画『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』の宿敵として登場したキャラクターで、設定上ロックス海賊団の一員だったことから、映画で初登場のキャラクターとしては珍しく本編にもセリフ付きで登場となりました。
今回のTVシリーズのエピソードではセリフ数は大して多くないのですが、驚いたことに“特別出演”という形で映画同様に竹中直人さんが声優として参加しています。
こういった細かいところまで気を利かせてくれているのが最近のTVアニメ『ONE PIECE』。間違いなく今後の展開の細かなところにまでこだわりを見せてくれるのでしょう。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:https://one-piece.com/news/64180/より
(C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション