これまで覇王色の覇気はルフィを代表とする限られた者だけの力とされてきましたが、ゾロにもその“王の資質”が秘められている証として、ワノ国編では覇王色の覇気が使えることが明かされました。彼には、シルバーズ・レイリーやシャンクスに通ずる王の風格が見え隠れしています。彼が持つ「野望なき忠誠」という独特な強さの源とは、いったいどのようなものなのでしょうか?
◆“覇王色の覇気”はルフィだけのものじゃない! ゾロの初登場と成長の軌跡
今まで『ONE PIECE』の物語において、覇王色の覇気はごく一部の強者が持つ特別な力として描かれてきました。その代表格がモンキー・D・ルフィです。しかし、最近の展開でゾロも覇王色の覇気を使えることが明らかとなりました。
ゾロの初登場は、シェルズタウンで十字架に縛られた姿で登場するシーンでした。彼の強烈な存在感と威圧感に惹きつけられたという読者も多いのではないでしょうか。
頂上戦争後の2年間、ゾロは“冥王”シルバーズ・レイリーのように、強者ミホークのもとで剣術を極める修行に入ります。修行後、彼は左目を閉じた姿で再登場し、読者の間では「ゾロの隻眼には力が封じられているのでは?」といった声も多く挙がりました。しかし、隻眼となった彼は、剣士としてさらなる成長を遂げてきました。
彼はより“精神的な余裕”と“判断力”を身につけ、麦わらの一味のブレーキ役であり、そして支柱としての存在感を強めました。ただの戦闘要員ではなく、ルフィを影から支える“副船長”的役割を果たす存在になったのです。
カイドウとの戦いでは、原作1010話にて死力を尽くして攻撃を仕掛けたゾロに対し、カイドウが「まさか、お前も…!」と言及。これはゾロが覇王色の覇気の持ち主であることをほのめかす重要なシーンでした。
さらに、TVアニメ第984話では、刀に覇王色の覇気をまとう描写が明確に示されました。これにより、ゾロの覇王色の覇気使用は紛れもない事実となり、戦闘力が飛躍的に向上していることも読み解けます。
◆野望なき剣士が持つ“王の資質”
ゾロの野望はあくまで「世界一の剣豪になる」ということであり、ルフィの「海賊王になる」という目標とは性質が異なります。誰かを従えるためでも、名声や富のためでもなく、彼にとって“剣の道”とは、己自身との戦いであり、信じる者のために振るう刃でもあります。
「覇王色の覇気を持つにふさわしい資質」を持ちながらも、そんな力すらも無言のまま当然のように使いこなす姿勢に、心を打たれた読者も多いでしょう。
ゾロの戦いは常に“誰かのため”という想いとともにあります。くいなとの約束を守るため、仲間の夢を守るため、そして船長であるルフィを海賊王にするため、彼は常に自分以外の存在に重きを置いているのです。
この利他的な強さこそ、まさに覇王色の本質に通じる資質であり、誰かのために戦い続けるゾロの姿勢は、そのまま彼の覇気の強さとなって表れていると考えられます。
覇王色の持ち主の多くは、物語を動かす中心人物として描かれていますが、ゾロの場合は常にルフィの背後に立つ存在であり、中心人物かと問われればそうではありません。
しかしゾロが一歩前に出たときの説得力や、空気を変えるほどの迫力、仲間を守るときの動じない意志には、自然と人を従わせる力があり、これこそが信頼で人々を引きつける力といえます。
ルフィが太陽のような王であるなら、ゾロは影に徹する王であり、それこそが今のゾロに与えられた“王の資質”であると考えられるでしょう。
◆副船長としての忠誠心と覚悟
ゾロは、公式に副船長と呼ばれているわけではないものの、誰もが自然とそう認識しているほど、麦わらの一味の中で絶対的な信頼と威厳を放つ存在です。
スリラーバーク編での、ルフィの代わりにすべてのダメージを引き受けた「何もなかった」事件は、その象徴的なシーンといえるでしょう。自らの命すら顧みず、船長を守り抜くことを選んだゾロ。「自分が命を落としてもルフィの顔を立てる」という満身創痍の体で立ち続ける姿、仲間にも船長にも心配をかけないという徹底した沈黙は、「俺がいれば大丈夫」という無言のメッセージでもあったのです。
ゾロのルフィに対する忠誠は、たんなる服従や上下関係ではなく、強い信念に基づいています。ルフィを「自分が背負うに値する男」として見極め、その背中を支える決意を固めました。
ウォーターセブン編でウソップが船を降りるかどうかでもめた際には、「このままウソップを許すなら、俺は船を降りる」とルフィに迫るなど、彼はただ従う部下ではありません。ルフィが海賊王になるために必要な資質を持ち続けているかを、常に側で見極める副船長としての責任を背負っているといっても過言ではないでしょう。
ゾロは、絶対にルフィの命を危険にさらさないという強い思いを持っています。だからこそ、カイドウとの戦いでは限界を超えながら、刀に覇王色の覇気をまとわせ、ルフィの未来のために戦いました。
この自己犠牲の精神と未来を見据える戦略眼の両立は、海賊団の戦闘員という枠を超え、「参謀」としての資質すら感じさせます。
◆レイリーやシャンクスとの共通点
実は、ゾロの“王の資質”は、かつてゴール・D・ロジャー(ゴールド・ロジャー)を支えた海賊王の右腕、シルバーズ・レイリーと共通しています。レイリーは剣士であり、副船長としてロジャーを陰で支え続けた人物です。彼もまた、覇王色の覇気を自在に使いこなしていました。
そんなレイリーとゾロは、「王を導く器」を持っている点で共通しており、自らが主役になることなく、主君の器を見極め、その背を支える忠誠と実力を兼ね備えています。
一方で、ゾロとシャンクスにも「覇王色の強さ」や「沈黙のカリスマ性」といった共通点があります。
シャンクスはゾロやレイリーのように“支える者”ではなく、自ら“王”として君臨する立場ではありますが、人を惹きつけるその佇まいは、ゾロの魅力にも通じる部分があるといえます。
──ゾロは「王になる」ことを選ばず、静かに「世界一の剣豪」を目指し、ルフィの最高の副船長として彼や麦わらの一味を支えています。
覇王色の覇気の覚醒は、彼がただの強者というだけではなく、“王の資質”を持った特別な存在であることの証明といえるのではないでしょうか。
〈文/anri〉
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