<この記事にはTVアニメ・原作漫画『ONE PIECE』のネタバレが登場します。ご注意ください。>
ローグタウンの処刑台に落ちた一筋の雷。ルフィを救ったあの奇跡は、偶然だったのでしょうか。しかしあの場所には、革命家、モンキー・D・ドラゴンがいました。彼の行くところ、常に嵐が巻き起こるという、世界でもっとも謎に満ちた男です。
彼の力は、ただの悪魔の実の能力か、それとも古代兵器「ウラヌス」の片鱗か。世界政府がもっとも恐れる男、ドラゴンの正体。その謎の核心は、彼の起こす“神業”の中に隠されているのかもしれません。
◆「嵐を呼ぶ男」──原作で描かれたドラゴンの“神業”
ドラゴンの登場シーンには、常識では考えられない、局地的な天候の変化が伴っています。それはまるで、彼自身が嵐を呼び寄せ、意のままに操っているかのように見えます。
もっとも印象的なのが、物語の始まりの地、ローグタウンで起きた一連の“奇跡”でしょう。
息子のルフィがバギーに処刑されそうになったまさにその瞬間。処刑台にだけ一筋の雷が落ち、ルフィを救ったのです。このあまりにも都合の良すぎる奇跡によって、ルフィは九死に一生を得ました。
さらに、海軍のスモーカー大佐がルフィを捕らえようとしたとき、ドラゴンは静かに姿を現します。すると、どこからともなく突風が吹き荒れ、海軍の兵士たちをなぎ倒し、麦わらの一味を海へと逃がすための一本の道が開かれました。
この“神業”は、ルフィの故郷であるゴア王国でも起きていました。グレイ・ターミナルが貴族たちによって焼き払われた、あの悲劇の夜。ドラゴンはサボをはじめとする人々を救うために現れました。そのときも、燃え盛る巨大な炎の中に、まるで一本の道のように風が吹き抜け、人々が安全な船へとたどり着くための活路を開いたような描写があります。
ここで注目したいのは、『ONE PIECE』の世界では既に「天候を操る」概念が存在しているということです。ナミがクリマタクトを使って天候を操作できること、偉大なる航路(グランドライン)の不可思議な気象が冒険の障害になっていること。天候はこの世界における重要なテーマの一つといえます。
そのため、ドラゴンの登場時に限って雷や突風といった異常気象が発生しているのは、偶然ではなく、彼自身が“天候に干渉できる力”を持っている可能性が高いといえるのではないでしょうか。
つまり、ドラゴンはただの革命軍のリーダーではなく、まるで「天を司る存在」そのもののように描かれているといえます。これは、のちに語られる彼の正体に直結する重要な伏線なのかもしれません。
◆「カゼカゼの実」か、それとも「古代兵器」か?──“正義”を捨てた男の力の謎
ドラゴンが天候を操るとして、その力の正体は何なのでしょうか。もっとも考えやすいのは、「悪魔の実」の能力者という説です。「カゼカゼの実」のような風を操る能力が存在するか、あるいは嵐を呼ぶ竜などをモデルとした、幻獣種の能力かもしれません。
しかし、彼の過去を知ると、その力がもっと特別なものである可能性が浮かび上がります。
ドラゴンはかつて海軍に所属していました。父ガープのように、一度は海軍の中から世界を変えようとしたのかもしれません。しかし「不自由な正義」を嫌って海軍を辞め、仲間と「自勇軍」を結成します。
このとき彼が選んだ戦いは、国家や軍隊といった枠を超え、“世界そのもの”を相手にする戦いといえます。そのためには、人智を超えた力──国を越えて天候や大地すら揺るがす力が必要だったのではないでしょうか。
ここで、古代兵器「ウラヌス」の存在が重要になります。その名から「天候を支配する」兵器だと考えられています。ドラゴンが海軍時代などに、何らかの方法で操る術を手に入れたとしたらどうでしょうか。彼が「世界最悪の犯罪者」と呼ばれるのは、世界政府がもっとも隠したい“真実”を知り、かつもっとも恐れる“力”を手に入れてしまったから。そう考えると、すべての辻褄が合います。艦隊を嵐で沈め、国を干ばつで苦しめる。革命軍のリーダーとして、これほど強力な兵器はありません。
ドラゴンの力の正体は、強力な「悪魔の実」かもしれません。しかし、彼が世界政府の隠す“裏側”を知ったうえで起こした革命であることを考えると、その力の源が、世界をひっくり返すための最終兵器「ウラヌス」であるという、壮大な可能性も決して否定できないのです。
◆世界政府がもっとも恐れるもの──天竜人を脅かす“天”の力
ドラゴンが操る可能性が高い「天」の力。それこそが、世界政府、特に世界の頂点に立つ天竜人にとって、最大の脅威なのかもしれません。
天竜人が住む聖地マリージョアは、赤い土の大陸(レッドライン)の頂上にあります。それは、彼らが下々とは違う「天」にもっとも近い特別な存在であることの何よりの証です。彼らはその場所から、800年間も世界を見下し、支配してきました。
しかし、ドラゴンが「天候」を自由に操れるとしたら、どうなるでしょうか。それは、天竜人たちの聖域に直接嵐を呼び、雷を落とすことができる、ということを意味します。自分たちは絶対に安全だと思い込んでいる彼らの頭上に、いつでも「天罰」を下せる力。これは、彼らの“神”としての権威を根底から覆しかねない最大の脅威といえるでしょう。
さらにこの力は、物語の最終局面でほかの古代兵器と連携する可能性があります。海の王である人魚姫「ポセイドン」、そして島一つを消し飛ばすだけの力を持つ「プルトン」。そこに、天空を支配すると考えられる「ウラヌス」を持つドラゴンが加われば、陸・海・空を三つ巴で支配する世界規模の力が完成します。
ドラゴンが「ウラヌス」のカギを握っているかもしれないという可能性。それは、世界をひっくり返すための最後のピースが揃うことを意味しているのかもしれません。だからこそ世界政府は、たんなる革命家のリーダーとしてではなく、この世界の秩序そのものを破壊しうる、最大の危険人物として彼を何よりも恐れているのではないでしょうか。
彼が持つ「天」を操る力こそが、天竜人の聖域を直接脅かし、ほかの古代兵器とともに世界を転覆させうる、もっとも危険な力といえるでしょう。
──革命家ドラゴンの「嵐を呼ぶ力」。その正体は、強力な悪魔の実か、古代兵器「ウラヌス」である可能性が高いといえます。いずれにせよ「天」を操る力は、天竜人の支配を脅かす最強の切り札といえるでしょう。
ローグタウンでルフィの船出を助けた風と雷は、父から息子への“祝福”だったのかもしれません。父と子が再会し力が並び立つとき、偽りの“天”は打ち砕かれ、本当の夜明けが訪れるのでしょう。
〈文/凪富駿〉
《凪富駿》
アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。特にジャンプアニメに関する考察記事の執筆を得意とする。作品とファンをつなぐ架け橋となるような記事の作成がモットー。
※サムネイル画像:『一番くじ倶楽部』公式Webサイトより 『「一番くじ ワンピース 革命の炎」 A賞 モンキー・D・ドラゴン MASTERLISE ©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション』