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<この記事には原作漫画『ONE PIECE』の最新話までのネタバレが登場します。ご注意ください。>

 若き日の白ひげ、ビッグ・マム、カイドウを従え、世界最強と謳われた史上最凶の「ロックス海賊団」。彼らがなぜ「神の谷(ゴッドバレー)」(以下、ゴッドバレー)で、たった一日の間に壊滅へと追い込まれたのか。それは、世界史から消された最大の謎の一つです。

 本来、決して交わるはずのない敵同士、ロジャーとガープはなぜ手を組まざるを得なかったのか。歴史の闇に葬られたその一日の真実は、彼らの“守るべきもの”を知ることで見えてくるかもしれません。

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◆「最強」にして「最弱」──ロックス海賊団、崩壊の予兆

 ゴッドバレーでの壊滅を語るうえで、まず理解しなければならないのは、ロックス海賊団が「最強」でありながら、同時に「最弱」の組織であったという奇妙な事実です。

 若き日の白ひげ、ビッグ・マム、カイドウ、金獅子のシキ。この船には、一人ひとりがのちの時代に伝説となるほどの、とてつもない力を持った猛者たちが集っていました。個人の強さだけを足し算すれば、間違いなく史上最強の海賊団だったといえるでしょう。

 しかし、彼らは仲間意識など一切なく、お互いを出し抜くことしか考えていない危険な集団だとされています。その内部の亀裂は、ゴッドバレーの戦場ではっきりと形になります。

 船長のロックスの指示を無視し、ビッグ・マムやカイドウは、それぞれが目先の敵と勝手に戦いを始めてしまいました。海賊団としてのまとまりは完全に失われ、せっかくの強大な戦力も、バラバラに分散してしまったのです。

 このとき、船長のロックスは、いったい何を考えていたのでしょうか。彼は「世界の王になる」という野望と同時に、この島にいるはずの妻「エリス」と息子「ティーチ」を救い出すという、個人的な目的も抱えていた可能性が示唆されています。

 この焦りが、彼の冷静な判断を惑わせ、ただでさえ言うことを聞かないクルーたちを、完全にまとめきれなくさせてしまったのかもしれません。ロックス海賊団の敗因。その半分は敵ではなく、自分たちの内側にあったのではないでしょうか。

 彼らは、個人の力の合計では最強だったといえるでしょう。しかし、目的もバラバラで信頼関係などまったくない「チーム」としては最弱の海賊団。ゴッドバレーは、その大きな矛盾が爆発してしまった場所だったといえます。

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◆敵が手を組むとき──ロジャーとガープ、それぞれの“守るべきもの”

 ロックス海賊団が内部崩壊していたとしても、個々の力は伝説級。そんな彼らを壊滅させるため、なぜ本来敵同士であるロジャーとガープは手を組んだのでしょうか。その答えは、それぞれがこの島で“守るべきもの”を抱えていたからかもしれません。

 海軍中将ガープの目的は、天竜人主催の「先住民一掃大会」でゴッドバレーにいた天竜人と奴隷たちを守ることだったとされています。

 天竜人の本拠地マリージョアでガープ自身が天竜人を「ゴミクズ」呼ばわりする描写もありましたが、彼は嫌悪感を抱きつつも、職務として非戦闘員を守ろうとしたと考えられます。しかし、ビッグ・マムやカイドウといった猛者たちが暴れる中で、一人ですべてを守り切るのは困難だったでしょう。

 一方、ロジャーの目的は、仲間であるシャッキーの救出だったと考えられます。奴隷として大会の「景品」にされていた彼女を助けるため、ロジャー海賊団はこの島に来ていたのです。実際、レイリーが彼女を救い出す描写があり、彼らが仲間を決して見捨てない姿勢はここでも表れていました。

 さらに、この島にはシャンクスとシャムロックという、天竜人の手にあった罪のない赤子もいました。自由を愛するロジャーが、こうした無力な子供たちを見過ごすとは考えにくいでしょう。

 「世界の王」を目指し、すべてを破壊しようとするロックス。この巨大な脅威を前に「天竜人と奴隷を守るガープ」と「仲間と子供を守るロジャー」の目的が、この瞬間だけ奇跡的に一致した可能性があります。

 彼らの共闘は、友情から生まれたものではありません。それぞれの“守るべきもの”を守るために、共通の敵ロックスを倒すしかなかった。その利害が一致して生まれた、一日限りの必然の共同戦線だったといえるでしょう。

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◆ゴッドバレーで何が“消された”のか──事件の多層構造と残された謎

 ゴッドバレー事件が歴史から消された理由は、たんに天竜人が危険に晒されたから、というだけではないと考えられます。この事件がいかに複雑で、世界政府にとって“不都合な真実”に満ちていたかを見ていきます。

 この一日、島では各陣営がまったく異なる目的で動いていました。ロックスは「妻子の救出」、ロジャーは「仲間の救出」、ガープは「海軍としての職務」、そして若き日のドラゴンまでもが「奴隷の解放」のために奔走する。この目的の交錯こそが、事件をコントロールできないほどの混沌へと導いたのです。

 では、世界政府が本当に隠したかったことは何だったのでしょうか。

 一つは、「海軍の英雄ガープが、海賊であるロジャーと手を組んだ」という事実。これは、海軍が掲げる絶対的な正義が、ときとして揺らぐことを示す、最大の汚点といえます。

 そして、もう一つが、「Dの一族」の存在です。ロックス、ロジャー、ガープ、ドラゴン、そして赤子であったティーチ。この島の運命を左右した中心人物たちが、ことごとく“神の天敵”である「D」の名を持っていた。この事実は、世界政府にとって悪夢以外の何物でもなかったのではないでしょうか。

 しかし、この事件は終わりではなく始まりだったのかもしれません。この混沌の中から、三人の子供たちがそれぞれの運命を背負って生き残りました。ドラゴンに救われ「光」の道を歩むシャンクス。神の騎士団に奪われ「闇の秩序」を学ぶであろうシャムロック。そして、ロックスの子として生まれ「闇の混沌」を継ぐティーチ。

 ゴッドバレーでの被害は、ロックスという一人の男だけではありません。そこでは世界の秩序、正義の定義、そしてDの意志が激しくぶつかり合い、未来の時代の主役となる子供たちの運命を大きく左右したのかもしれません。世界政府が歴史から消し去ったのは、このあまりにも不都合で、そして壮大な“物語”そのものだったのではないでしょうか。

 

 ──なぜロックスは敗れたのか。それは、仲間たちの内部崩壊と、ロジャーとガープの奇跡の共闘という、必然の結果といえます。

 世界政府がこの事件を消し去ったのは、そこに「海軍と海賊の共闘」や「Dの一族の暗躍」という、不都合な真実が満ちていたからではないでしょうか。

 しかし、この事件は終わりではなく、始まりでした。ゴッドバレーで生き残ったシャンクスとティーチ。彼らが再び激突するとき、それはゴッドバレー事件の本当の決着戦となるのかもしれません。

〈文/凪富駿〉

《凪富駿》

アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。特にジャンプアニメに関する考察記事の執筆を得意とする。作品とファンをつなぐ架け橋となるような記事の作成がモットー。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「ONE PIECE」第112巻(出版社:集英社)』

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