元七武海、サー・クロコダイル。冷酷非道な彼には、革命軍のイワンコフだけが知る“隠したい過去”があります。なぜ、誰よりもプライドの高い彼が、イワンコフの脅しに屈したのでしょうか。
その秘密は、彼が「海賊王」を目指す過程で、何かを“捨てた”過去に関わっているのかもしれません。元七武海の隠された過去、その核心は、イワンコフの“あの能力”を振り返ることで見えてきます。
◆「弱み」の正体──イワンコフが握る“ホルホルの実”の記憶
クロコダイルが隠す「弱み」。その謎を解くカギは、インペルダウンでの彼と革命軍の幹部であるエンポリオ・イワンコフの不自然なやり取りにあります。
LEVEL6に幽閉されていたクロコダイルは、ルフィの脱獄計画に便乗しようとします。そのとき、イワンコフは「一切信用できないけど……」としながらも、不敵に笑い「ヴァターシはコイツの“弱み”を一つ握っている……!!!」と告げます。
その言葉を聞いた瞬間、誰にも従わないはずのクロコダイルが、不本意ながらもイワンコフとの協力関係を受け入れたのです。これは、その「弱み」が、彼のプライドやこれから成し遂げようとする野望にとって、絶対に知られてはならない、致命的な秘密であることを物語っているといえます。
では、その秘密とは何なのか。その答えは、イワンコフ自身の能力に隠されている可能性があります。
彼が食べた超人(パラミシア)系悪魔の実「ホルホルの実」。その能力は、ホルモンを操ることで、人の体温や性別さえも、内側から自在に変えられるというものです。彼は、人の「生まれ変わりたい」という願いを、文字通り叶えられるといえます。
ホルホルの実の能力者であるイワンコフが、クロコダイルの「弱み」を握っている──。この事実から導き出される、もっともシンプルで、そしてもっとも衝撃的な答え。それは「かつてクロコダイルは女性であり、イワンコフの能力によって男性になった」という仮説です。
イワンコフは、その“手術”の当事者であり、すべてを知る唯一の証人。だからこそ、クロコダイルは彼にだけは、逆らうことができなかったのではないでしょうか。
◆“白ひげ”に敗れた過去──「女の限界」を捨てた野心家の覚悟
クロコダイルが女性だったとして、なぜ性別を変える必要があったのか。その答えは、彼の過去、特に“白ひげ”との因縁に隠されているのかもしれません。
インペルダウンでは、彼が白ひげの首を取ることに執着しており、そのために脱獄したいと語る描写が描かれていました。その後、マリンフォード頂上戦争では、白ひげが瀕死のとき「みっともねェじゃねぇか!!!“白ひげ”ェ!!! おれはそんな“弱ェ男”に敗けたつもりはねぇぞ!!!」と叫ぶ描写がありました。
これは、彼が過去に白ひげに喫した“完膚なきまでの敗北”が、彼の人生を決定づけるほどの深い傷となっており、白ひげに対する複雑な感情があることを示しているといえるでしょう。
また、インペルダウン編の扉絵掲載では、クロコダイルが「海賊王」を目指していることも明かされています。
ここで、「元女性説」を当てはめてみましょう。若き日の野心的なクロコダイル(女性)が、「海賊王」を目指していた。そのためには、当時“最強”と呼ばれた白ひげを超える必要があったと考えられます。
しかし、クロコダイルは白ひげに完敗。その圧倒的な力の差を前に「女」という性別が持つ、肉体的な限界を痛感し「女」ではこの海の頂点には立てないと、絶望したのではないでしょうか。
その絶望の中、彼女はイワンコフと出会い、「ホルホルの実」の存在を知ったとしたら。
彼女にとって性別を変えることは、たんなる気まぐれではありません。それは、自らが感じた「女の限界」という足枷を捨て、純粋な「力」と「野心」だけで頂点を目指すための、非情で覚悟に満ちた選択だったといえるでしょう。
クロコダイルが「女」を捨てた理由。それは、「海賊王」という野望を叶えるうえで、「女」であることが“弱さ”につながると悟ってしまったからではないでしょうか。彼の性転換は、すべてを捨ててでも頂点に立とうとする、彼の歪んだ野心の証なのかもしれません。
◆クロスギルドと“ユートピア”──「弱み」が暴かれる未来
過去を捨て、男として生まれ変わったクロコダイル。彼は今、四皇となったバギー、そして世界最強の剣士ミホークと共に「クロスギルド」を率いています。その目的は、かつてアラバスタで夢見た、誰にも邪魔されない理想国家「ユートピア」の建国です。
しかし、彼の“隠したい過去”の証人であるイワンコフは、革命軍の幹部として今も健在です。物語の最終局面、クロスギルドが世界政府や麦わらの一味と激突する中で、イワンコフ率いる革命軍もまた、必ず歴史の表舞台に姿を現すかもしれません。
そのとき、何らかの形でイワンコフとクロコダイルが再会し、彼の過去が暴露されてしまうという可能性は、決して低くないといえるでしょう。
元七武海クロコダイルは、元“女”だった──。その事実が明かされたとき、彼のプライドはズタズタになり、築き上げてきたすべてが崩れ去るかもしれません。
しかし、アラバスタでルフィに敗れ、インペルダウンでの共闘を経て、彼もまた変化しています。その「弱み」を乗り越え、過去の自分をも受け入れたうえで、新たな目的のために戦う、より深みのあるキャラクターへと成長するのではないでしょうか。
その秘密を知ったうえでなお、彼の実力と野心を認め、ともに戦うことを選ぶバギーやミホーク。彼らの間には、たんなる利害関係を超えた、奇妙で、しかし本物の「海賊」が生まれるのかもしれません。
クロコダイルの“隠したい過去”は、物語の最終局面で彼の真価を問う試練として訪れるでしょう。そして彼は、その試練を乗り越えることで、たんなる悪役ではなく、過去の傷を克服した“海賊王”に一歩近づくのかもしれません。
──クロコダイルが隠す「弱み」。それは、「元女性」という過去かもしれません。彼が“女”を捨てたのは、「海賊王」という野望のための、歪んだ覚悟の表れだったのではないでしょうか。
物語の最終盤、彼の秘密が暴かれる可能性が高いです。そのとき、彼は過去を乗り越え、真の強さを手に入れるのか。その結末が描かれる日は、そう遠くないのかもしれません。
〈文/凪富駿〉
《凪富駿》
アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。特にジャンプアニメに関する考察記事の執筆を得意とする。作品とファンをつなぐ架け橋となるような記事の作成がモットー。
※サムネイル画像:魂ウェブ公式Webサイトより 『「フィギュアーツZERO クロコダイル」(メーカー:BANDAI SPIRITS) ©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション』





