麦わらの一味の船大工、フランキー。なぜ彼の手配書だけ“本人”ではないのか。彼の懸賞金手配書には「フランキー将軍」と書かれており、そして現在は「サウザンド・サニー号」(以下、サニー号)の船首になってしまいました。
これはたんなるギャグなのでしょうか。この奇妙な手配書こそ、世界政府がフランキー個人ではなく、彼の造った“船”を脅威と認識している証拠なのかもしれません。
◆「船」が手配される異常事態──フランキーの手配書が示す“本当の脅威”
麦わらの一味の懸賞金が更新されるたびに、一つの奇妙な“お約束”が繰り返されてきました。それは、フランキーの手配書の写真が、なぜか本人ではないという問題です。
ドレスローザ編のあと、彼の手配書に載ったのは、彼が開発した巨大ロボ「フランキー将軍」でした。そして、ワノ国編のあとには、麦わら海賊団の船「サウザンド・サニー号」の船首の写真に変わってしまったのです。
一度ならず二度までも、手配書が「本人」ではなく「彼の発明品」になる──。これは、もはやたんなる偶然やミスとは考えられないといえます。
これまで、サンジの手配書がヘタクソな似顔絵だった描写がありました。しかしそれは、海軍がサンジの顔写真を正確に撮れなかった、という理由がありました。しかし、フランキーの場合は違います。彼の顔は世界中に知れ渡っている可能性が高いです。それでもなお、彼の発明品が写真として使われる──。
この異常な事態は、世界政府や海軍が、フランキーという男をどう見ているかを示しているのではないでしょうか。
彼らは、フランキー個人の戦闘力以上に、彼がその天才的な頭脳で生み出す兵器、特に「船」という存在そのものを、より大きな脅威として警戒しているのかもしれません。
フランキーの手配書に現れたサニー号の船首。これは「この男を捕らえろ」というメッセージ以上に「この男が作った“船”に気をつけろ」という、海軍内部への警告であると考えられます。それは、世界政府が彼を「危険な船大工」として特別にマークし、その最高傑作であるサニー号を「フランキー」という存在の象徴として手配していることの、明確な証拠なのではないでしょうか。
◆古代兵器“プルトン”の悪夢──サニー号に重なる「伝説の設計図」の影
世界政府が、なぜサニー号をこれほどまでに警戒するのか。その答えは、フランキーの壮絶な過去に隠されています。
彼は、師であるトムから、古代兵器プルトンの「設計図」を受け継ぎ、その記憶は脳内に焼き付いている可能性が高いです。プルトンとは、島一つを消し去ると言われる世界最悪の戦艦。フランキーは、その気になればいつでも「世界を滅ぼす力」を蘇らせられる、唯一の人間だったといえます。
もちろんフランキーはエニエス・ロビーで設計図を燃やしました。しかし、設計図を持っていた彼が、サニー号を造る際、持てる技術のすべてを注いだことは間違いないでしょう。
ここで、プルトンとサニー号の間に、奇妙な共通点が見えてきます。サニー号の船体は、伝説の「宝樹アダム」。そして、船首には「太陽」のマークが輝いています。一方、プルトンが眠るとされるワノ国は「太陽の神ニカ」がもたらす「開国」を待っていました。「最強の素材」と「太陽」。この二つの要素は、両方の船に共通する重要なキーワードなのではないでしょうか。
フランキーがプルトンを再現することは、決してないといえるでしょう。しかし、彼が「夢の船」を設計したとき、脳裏にあったプルトンの“考え方”や“仕組み”が、無意識のうちに反映されてしまった可能性はないでしょうか。
サニー号が手配書になった本当の理由。それは、世界政府がこの船に、フランキーの脳内に眠るプルトンの“影”を見ているからといえます。彼らにとってサニー号は、いつかプルトンに匹敵する脅威となりうる、「古代兵器の“弟”」のような存在なのかもしれません。
◆“夢の船”の本当の役割──ラフテルへ導く「最後のカギ」
世界政府は、サニー号を古代兵器プルトンの“影”を宿す、危険な「兵器」として警戒している可能性が高いです。しかし、トムやフランキーが船に込めた想いは、決して破壊ではありませんでした。「ドンと胸を張れる、夢の船」。その本当の役割は、別のところにあるのかもしれません。
トムが海賊王ロジャーのために「オーロ・ジャクソン号」を造ったように、フランキーもまた、未来の海賊王ルフィを「海の果て」まで運ぶため、サニー号を造り上げたのです。
サニー号には、まだその真価が完全には明かされていない、多くの謎が隠されています。
空を飛ぶための「風来・バースト」や、「フランキー将軍」となり陸を走るための「ソルジャードックシステム」。そして、一瞬で絶大な破壊力を生み出す「ガオン砲」。これらは、ただ敵を倒すためだけの仕掛けなのでしょうか。
物語の最終目的地、「ラフテル」。そこへ至る最後の航路には、レッドラインを超えるような、常識では考えられない困難が待ち受けているといえます。空を飛び、山を砕き、強力な海流を突き進む、そんな規格外の力を持つ船でなければ、たどり着くことすらできないのかもしれません。
サニー号に搭載された特別な機能。どんな荒波にも耐える「宝樹アダム」の船体、障害物を吹き飛ばす「ガオン砲」の突破力、そして何より、船首に輝く「太陽」の象徴。これらすべては、麦わらの一味を「歴史の真実」が眠るラフテルへと導く“最後のカギ”として、最初から設計されていたのではないでしょうか。
世界政府がサニー号を恐れる本当の理由。それは、この「夢の船」こそが、麦わらの一味をラフテルへと導き、自分たちが800年間隠し続けてきた嘘を暴く“最大の脅威”となることを、本能的に理解しているからなのかもしれません。フランキーの手配書は、その恐怖の表れだといえるでしょう。
──フランキーの手配書が「サニー号」となった理由。それは、世界政府がこの船にプルトンの“影”と、麦わらの一味をラフテルへ導く“最後のカギ”という、二重の脅威を見ているからではないでしょうか。
フランキーの夢は、自らが造った船が、海の果てにたどり着くのを見届けること。サニー号がラフテルに到達する瞬間。それは、船大工の夢が叶うときであり、同時に、世界の夜明けを告げる希望の船が誕生する瞬間でもあるのかもしれません。
〈文/凪富駿〉
《凪富駿》
アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。特にジャンプアニメに関する考察記事の執筆を得意とする。作品とファンをつなぐ架け橋となるような記事の作成がモットー。
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