「究極の悪魔の実」と呼ばれる、トラファルガー・ローの「オペオペの実」。ワノ国で見せた覚醒はその真価を示しました。刀に空間転移の“性質”を与え、敵から音を奪う“効果”を生み出す。この覚醒の本質が「能力の付与」だとしたら。
オペオペの実は、黒ひげとは違うやり方で他者の能力を“コピー”できる、もう一つの「能力者狩り」の力なのかもしれません。
◆「ROOM」のルールを書き換える──ローが見せた“覚醒”の片鱗
ローの「オペオペの実」は、彼が展開する「ROOM」と呼ばれる円の中のものを、自在に“手術”できる能力です。しかし、ワノ国でのビッグ・マムとの死闘で見せた彼の“覚醒”は、その基本的なルールすらも根底から覆す、異次元の力でした。
まず、彼が見せた覚醒技「K・ROOM」。ローはこの技で、自身の愛刀である「鬼哭」に、ROOMの性質そのものを“付与”しました。これにより、刀は「それ自体が空間転移の能力を持つ刀」へと変化し、ビッグ・マムの体を内側から貫くという、常識では考えられない攻撃を可能にしたのです。
これは、たんにローが刀を動かしたのではなく、刀という“物”の情報を書き換え、自分の能力の“性質”を一時的に上書きした、と考えることができます。
さらに驚異的なのが、もう一つの覚醒技「R・ROOM」です。ローはこの技で、ビッグ・マム自身に「音を消す」という“効果”を付与しました。これにより、ビッグ・マムが発する一切の音が消え、彼女は部下であるホーミーズに助けを求める声を届けることができなくなりました。
この「音を消す」という効果は、かつてローの命の恩人であるドンキホーテ・ロシナンテ(コラソン)が使っていた、「ナギナギの実」の能力とよく似ています。これは、ローがその効果を深く理解している他の能力を、ROOMの中で“再現”し、対象に無理やり付与した可能性を示しているといえるでしょう。
オペオペの実の覚醒。その本質は、ROOMの中にある物や人の“情報”を自在に書き換え、別の「性質」や「効果」を自由に与える力である可能性が高いです。それはもはや「手術」の域を超えた「創造」に近い、神の御業と呼ぶべきものなのかもしれません。
◆究極の“情報手術”──「能力コピー説」の核心
「性質」や「効果」を自由に付与できる可能性が高い、オペオペの実の覚醒能力。この力の本当の恐ろしさは、かつてこの実を渇望した男、ドンキホーテ・ドフラミンゴの言葉に隠されています。
「“オペオペの実”の能力があの日おれの手中に入っていたら……マリージョアの「国宝」を利用しおれは世界の実験さえも握れていた!!!」。
オペオペの実の価値が不老手術だけならば、これほど壮大な野望は語れないといえます。彼が本当に欲しかったのは、世界のことわりすらも書き換えられる、この実が秘めた「情報操作能力」だったのではないでしょうか。
また、悪魔の実の能力というものが、持ち主の血統因子に刻まれた、一種の“情報データ”のようなものだとしたらどうでしょう。
オペオペの実の覚醒は、その能力の“情報”をまるで手術で取り出すかのように読み取り、解析し、そして別の対象に一時的に“付与”できる。すなわち、“コピー”できるのではないでしょうか。
そして、その応用範囲は、まさに無限大です。ルフィのゴムの性質を刀に付与して「自在に伸びる剣」を生み出す、ユースタス・キッドの磁力の性質を自分自身に付与して「一時的に磁力人間になる」ことさえ可能になる──。オペオペの実の最終到達点こそ、「能力コピー」であると考えられるでしょう。
対象の能力を“情報”として抽出し、自在に付与する究極の“情報手術”。これこそが、世界政府が50億ベリーもの値をつけ、ドフラミンゴが渇望した、神の領域の所業。その本当の正体なのかもしれません。
◆黒ひげを超える“能力者狩り”──「外科医」の最終戦争
「能力コピー」という、神の領域の力。ローがこの力を完全に使いこなせるとしたら、彼は黒ひげとはまったく違う、もう一人の「能力者狩り」と化すのかもしれません。
黒ひげの能力者狩りは、相手の命を奪い、悪魔の実そのものを物理的に「強奪」するという極めて野蛮で破壊的な方法です。
一方、ローの「能力コピー」は、相手を生かしたまま、その能力の“情報”だけを冷静に抜き取り、自らの戦術に組み込む、知的な「複製」といえます。それはまさしく、“死の外科医”ならではの利口な能力者狩りといえるでしょう。
ローは「Dの一族」でありながら、ルフィや黒ひげのように、自らが「王」になることを目指しているようには見えません。彼の真価は、その冷静な頭脳と、オペオペの実がもたらす、戦況を支配するサポート能力にあるといえます。
物語の最終局面、彼はさまざまな能力者の力を“コピー”し、それを仲間や自分自身に付与することで、戦場のルールそのものを書き換える「最強の司令塔」として、ルフィを勝利に導く可能性があります。
とくに、ヤミヤミとグラグラ、二つの最強の能力を持つ黒ひげとの戦い。彼のような規格外の敵に対抗するには、こちらも複数の能力を同時に行使する必要があるかもしれません。
ローが、仲間たちの能力を一時的にコピーしてルフィに与えたり、あるいはロー自身が複数の能力を同時に操ったりすることで、黒ひげの異質さに立ち向かう。彼の「能力コピー」こそが、打倒黒ひげの、最大の“切り札”となる可能性が高いです。
ローの覚醒は、彼を黒ひげとは違う、知性と戦略で敵を狩る「もう一人の能力者狩り」へと進化させたといえます。彼の役割は王になることではなく、その神のごとき手術の力で仲間を強化し、敵を分析し、そして未来の海賊王を勝利へと導く、最高の“外科医”なのかもしれません。
──ローの「オペオペの実」の覚醒。その本質は「能力の付与」であり、最終到達点は「能力コピー」である可能性が高いといえます。
黒ひげが物理的な「強奪」で能力を集めるなら、ローは知的な「複製」で能力を操る、もう一人の「能力者狩り」。
最終局面、同じ“D”の名を持つ二人が激突するとき、ローのメスは戦場のルールそのものを書き換え、ルフィを勝利へと導く、神の一手となるのかもしれません。
〈文/凪富駿〉
《凪富駿》
アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。特にジャンプアニメに関する考察記事の執筆を得意とする。作品とファンをつなぐ架け橋となるような記事の作成がモットー。
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