空島でルフィに敗れ、月へと旅立った「神」エネル。その後の彼の冒険を描いた扉絵連載に、物語の最終局面を覆す重大な伏線が眠っているのかもしれません。
彼が月で発見した「古代都市」。それは、エネルの能力が、世界政府の支配を破壊する“切り札”であることを示唆しています。忘れられた神が再び地上に降り立つとき、世界の運命は大きく動き始めます。
◆「絵」が語る歴史の真実──扉絵連載『エネルのスペース大作戦』の重要性
エネルの未来を語るうえですべての根拠となるのが、コミックス第44巻から第49巻にかけて描かれた、セリフのない扉絵連載『エネルのスペース大作戦』です。この短い物語には、文字情報以上の、あまりにも重要な二つの真実が描かれていました。
一つ目は、「各種族のルーツ」です。エネルがたどり着いた月の古代都市ビルカ。その壁画には、翼を持つ三つの種族が、かつては月に住んでいたことが、絵によって明確に記されていました。スカイピアの民、シャンディアの民、そしてビルカの民。彼らは資源不足のために、“青色の星”つまり地球へと降り立ったのです。これは、物語の核心である「空白の100年」や、各種族の成り立ちの謎を解き明かす、極めて重要な歴史的な資料といえます。
二つ目は、「古代文明の動力源」です。月でエネルは、活動を停止していた一体の古代ロボット・スペーシー中尉と出会います。彼は、そのロボットに自身の雷の力を与えることで、再起動させることに成功しました。
この何気ない描写こそ、決定的な事実を示している可能性があります。それは「電気エネルギー」こそが、失われた古代文明を動かしていた、主要な動力源であったということです。
この伏線は、今後登場するであろう古代兵器や、ベガパンクが探し求めるエネルギーの謎にも、深く関わってくる可能性があります。
『エネルのスペース大作戦』は、たんなる番外編ではないのかもしれません。それは、セリフがないからこそ、純粋な「絵」の情報だけで、物語の根幹に関わる「歴史の真実」と「古代の動力源」という、二つの巨大な謎の答えを、静かに示していたのではないでしょうか。
◆「電気」を制する者は「情報」を制す──エネルが持つ“神”の力
扉絵連載で古代文明の動力源が「電気」であった可能性が見えてきました。だとすれば、電気そのものを自在に生み出し操る「ゴロゴロの実」の能力者エネルは、とてつもない戦略的な価値を秘めていると考えられます。
空島スカイピアでのエネルの恐ろしさは、たんに雷を落とすだけの破壊力ではありませんでした。
彼が使っていた「心綱(マントラ)」は、自身の見聞色の覇気に「ゴロゴロの実」の能力、つまり「電波」を乗せることで、スカイピア全域のあらゆる会話を盗聴し、人々の心を読んでいました。これは、彼が「電波」という通信の仕組みを完全に支配し、情報を一方的に奪える、何よりの証拠といえます。
さらに、彼は自身の“無限の電力”だけで、巨大な方舟「マクシム」を空に浮かせ、雷雲を作り出す装置を完全に動かしていました。これは、「電力」で動く巨大な機械や仕掛けを、彼が意のままに操ることができるという事実を示しているのではないでしょうか。
エネルの能力の本当の価値は、その圧倒的な攻撃力だけではありません。それは「電波」、すなわち「情報」と、「電力」すなわち「動力」という、文明社会を支えるもっとも重要な二つのライフラインを、たった一人で完全に支配できてしまうこと。それこそが、彼が「神」を名乗るにふさわしい、本当の強さの秘密なのかもしれません。
◆再登場のXデー──世界政府の“弱点”を突く最終戦争の切り札
「情報」と「動力」を支配する、神のごとき力。このエネルの能力は、物語の最終戦争において、世界政府の“最大の弱点”を突く、最強の切り札となるかもしれません。
エッグヘッド編で明らかになったように、現代の海軍の強さの根幹は、天才科学者ベガパンクが開発した数々の科学技術に支えられているといえます。
強力な人間兵器であるパシフィスタやセラフィム部隊。全世界の海軍支部と連携するための、電伝虫による巨大な通信網。そして、その通信網を利用して発動される無慈悲な総攻撃、バスターコール。
これらの軍事的な仕組みはすべて「電力」を動力源とし「電波」によって制御され、つながっているのです。
つまりエネルの能力は、まさにこの世界政府の軍事の仕組み、その心臓部を直接攻撃し、無力化できてしまう唯一無二の“天敵”といえるでしょう。
そして、そんな彼が最終戦争にルフィたちの味方として参戦したとしたら──。
海軍全体の通信網を麻痺させ、指揮系統を大混乱に陥らせることも、パシフィスタやセラフィム部隊の動力を直接攻撃し、ただの鉄クズに変えてしまうことも可能かもしれません。世界政府そのものを「ハッキング」するに等しい芸当といえます。
さらに忘れてはならないのが、彼が月で手に入れた「古代都市の知識」です。
天候を司る古代兵器ウラヌスが、古代の「電気」エネルギーで動く装置だとしたら。エネルの再登場は、ルフィたち革命の勢力に「月の古代技術」と、そして「ウラヌスを起動させるための無限の電力」をもたらす、最終戦争の勝敗を決定づける“切り札”となるのかもしれません。
空島で一度は敗れた“神”が、今度は本当の“神”(天竜人)を討つための、最大の力として帰ってくる。物語の最終局面、エネルの再登場は、世界の夜明けを告げる壮大な雷鳴となるのではないでしょうか。
──扉絵連載で月の古代技術に触れた「神」エネル。「電気」と「電波」を支配する彼の能力は、世界政府が誇る科学技術のまさに天敵といえる力なのではないでしょうか。
彼の再登場は、世界政府の軍事網を内部から破壊し、古代兵器ウラヌスを起動させる「カギ」が、ルフィたちの手に渡る可能性を示します。
空島で敗れた“神”が、今度は世界の夜明けをもたらす“雷”として再び地上に降り立つ。彼の再登場は、最終戦争の始まりを告げる壮大な号砲となるのかもしれません。
〈文/凪富駿〉
《凪富駿》
アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。特にジャンプアニメに関する考察記事の執筆を得意とする。作品とファンをつなぐ架け橋となるような記事の作成がモットー。
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