アラバスタ王国王女、ネフェルタリ・ビビ。彼女が、ルフィと同じ「D」の名を持つ者だとしたら──。
父コブラ王は、命と引き換えに一つの真実を突きつけました。800年前、歴史から消えた女王の名が「ネフェルタリ・D・リリィ」であったという衝撃の事実です。この父がつないだ「D」の意志は、ビビもまた「神の天敵」であることを意味します。彼女がこの事実を知ったとき、世界の勢力図は大きく変わるのかもしれません。
◆「D」の謎──コブラ王が命懸けで突き止めた“不都合な真実”
ビビが「Dの一族」である──。この衝撃的な仮説の根拠は、彼女の父、ネフェルタリ・コブラ王が、その命を懸けて世界政府に問い質した一つの歴史の謎にあります。
800年前、現在の世界政府を創設したのは「最初の20人」と呼ばれる20人の王たちでした。しかし、その中の一人、アラバスタ王国の初代女王であるネフェルタリ・リリィだけが、なぜか聖地マリージョアに移り住むことを拒否し、歴史の表舞台から忽然と姿を消しています。
コブラ王は、五老星との謁見という千載一遇の機会に、この「裏切り者」ともいえるリリィ女王について、問い質しました。そして、アラバスタ王家に代々受け継がれてきた手紙から、彼女の本当の名が「ネフェルタリ・D・リリィ」であったという驚愕の事実を突きつけたのです。
その「D」の名を聞いた瞬間、それまで冷静だった五老星と、玉座の奥に潜んでいたイム様の態度が豹変しました。「ネフェルタリ家=Dの一族」という事実は、彼らにとって絶対に知られてはならない、最高レベルの機密事項だったのかもしれません。
これらの原作で明確に描かれた事実から「アラバスタ王家であるネフェルタリ家は、800年前から続く“Dの一族”である」という一つの結論が導き出されます。
そして、その血を引く王女ビビもまた「モンキー・D・ルフィ」や「ゴール・D・ロジャー」と同じ「D」の名をその身に宿している。
父コブラが命懸けで証明したこの事実は、もはやたんなる推測ではない、揺るぎない真実といえるでしょう。
◆「世界に夜明けを呼ぶ」──リリィ女王が遺した“手紙”と“意志”
では、ビビが継ぐ「Dの意志」とは、一体どのようなものなのでしょうか。その答えは、800年前に歴史から消えたリリィ女王が、未来へと遺した“手紙”の中に隠されているのかもしれません。
コブラ王が命懸けで明かした衝撃の事実。それは「歴史の本文(ポーネグリフ)」を世界中にばらまいたのは、巨大な王国の生き残りではなく、なんとリリィ女王自身だったということです。
これは、彼女が800年前、世界政府の創設という大きな流れに一人で逆らい「空白の100年」の真実を未来の誰かに託そうとしていた、何よりの証拠といえます。彼女こそが、世界政府に対する、最初の「反逆者」だった可能性が高いといえるでしょう。
そして、コブラ王が最期に読み上げた手紙は、こう結ばれていました。「歴史の本文を守りなさい……ゆく世界に夜明けの旗をかかげ」。
この「夜明け」という言葉は、ルフィが覚醒した「太陽の神ニカ」の存在を、強く思い起こさせます。リリィ女王は、800年後の未来に、自分と同じ「D」の名を持つ者たちが、再び世界に“夜明け”をもたらすことを、予言していたのではないでしょうか。
ビビが継ぐ「Dの意志」。それは、たんに“神の天敵”というだけではありません。それは、800年前にたった一人で偽りの世界に反旗を翻し、未来に本当の“夜明け”を託したリリィ女王の、気高く、そして強い“反逆の意志”そのものといえます。彼女は、世界を変えるための極めて重要な役割を、生まれながらにして背負っているのかもしれません。
◆サボが伝える“血の真実”──王女が「革命の象徴」になる日
リリィ女王の「反逆の意志」を継ぐ、王女ビビ。しかし、彼女自身はまだ、自分が「Dの一族」であるという、あまりにも重い事実を知りません。父であるコブラ王は、その真実を娘に伝える前に、イム様と五老星によって命を奪われてしまいました。
では、誰が彼女にこの“血の真実”をビビに伝えるのでしょうか。その役割を担うのは、おそらくあの悲劇の現場に潜んでいた、もう一人の目撃者、革命軍のサボだと考えられます。
現在、ビビはサボのことを、父の命を奪った犯人だと誤解している可能性があります。しかし、二人が出会い、サボの口から「父の本当の敵はイム様であること、そしてあなたの一族こそが、その神の天敵「D」なのだ」という真実を告げられたとき、物語は大きく動き始めるのかもしれません。
そして、すべての真実を知ったビビはどうするのか。彼女は、もはやアラバスタという一国の平和だけを願う、心優しき王女のままではいられないといえるでしょう。父の無念を晴らし、800年前の先祖リリィ女王が託した「夜明けの旗」を掲げるため。彼女は、自ら戦うことを決意し、サボ率いる革命軍、あるいはかつての仲間である麦わらの一味とともに、世界政府に反旗を翻す道を選ぶのではないでしょうか。
ビビが「Dの一族」であるという真実。それは、サボによって彼女に伝えられ、彼女を“悲劇の王女”から、“戦う革命の象徴”へと、完全に変貌させる力を持っているといえます。
アラバスタでルフィに国の未来を託した彼女が、今度は世界中の人々の未来のために、自ら立ち上がる。彼女の決断こそが、物語の最終戦争の勢力図を大きく塗り替える、重要な一手となるのかもしれません。
──父コブラが命懸けで証明したように、ビビの血には「D」の名が刻まれていました。彼女が継ぐべきは、800年前の先祖リリィ女王が託した「夜明けを呼ぶ」反逆の意志だといえます。サボによって真実を知らされたとき、彼女は守られる王女ではなく、戦う「革命の象徴」となるといえるでしょう。
かつてルフィに救われた王女が、今度はルフィとともに世界を救う。二人の“仲間”の共闘が実現する日は、そう遠くないのかもしれません。
〈文/凪富駿〉
《凪富駿》
アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。特にジャンプアニメに関する考察記事の執筆を得意とする。作品とファンをつなぐ架け橋となるような記事の作成がモットー。
※サムネイル画像:Amazonより 『「ONE PIECE」第23巻(出版社:集英社)』





