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<この記事にはTVアニメ・原作漫画『ONE PIECE』のネタバレが登場します。ご注意ください。>

 虚の玉座の間で、世界の王イム様は一枚の写真を見つめていました。ルフィや黒ひげの写真を切り裂きながら、アラバスタ王女ビビの写真だけは、大切そうに手に取っていたのです。なぜ、世界の王は、たった一人の王女にこれほど執着するのでしょうか。

 その答えは、800年前に唯一イム様を裏切った、ビビの先祖「リリィ女王」の影にあるのかもしれません。

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◆ビビの写真を見つめる目──イム様の“異常な執着”の根源

 イム様がビビに向ける、特別な感情。その異常さは、虚の玉座の間での「敵」に対する態度と比べることで、よりはっきりと見えてきます。

 あのとき、イム様の手には4枚の写真や手配書がありました。世界の秩序を乱す、「ルフィ」と「黒ひげ」。そして、古代兵器ポセイドンである「しらほし姫」。イム様は、この3人の存在を明確に「敵」とみなし、ルフィと黒ひげの手配書を無慈悲に切り裂き、しらほしの写真には短剣を突き立てました。そこにあったのは、純粋な敵意だと考えられます。

 しかし、4枚目であるビビの写真に対してだけは、その態度はまったく違いました。危害を加えることなくただ静かに手に取り、慈しむように、あるいは何かを確かめるようにじっと見つめていたのです。これは、ほかの3人に向けた「敵意」とは明らかに違う「執着」と呼ぶべき、極めて個人的な感情ではないでしょうか。

 ではなぜ、イム様はビビにだけ執着しているように見えるのか。その答えは、800年前の歴史に隠されているのかもしれません。ビビの父、コブラ王によって明かされたように、800年前に世界政府を創設した「最初の20人」の中で、アラバスタ王国のリリィ女王だけが、聖地への移住を拒否し、歴史から姿を消しました。イム様にとって、彼女は自分の理想の世界に唯一逆らった「最初の裏切り者」といえます。

 イム様がビビの写真を見つめるとき、その脳裏には、800年前のリリィ女王の姿が重なっていたと考えられます。ビビはその血だけでなく、容姿までもが、かつての裏切り者と瓜二つなのかもしれません。

 イム様の歪んだ執着。それは、800年前に手に入れられなかったリリィ女王の面影を、その子孫であるビビに重ね今度こそ手に入れようとする、満たされなかった過去の“所有欲”から来ているのではないでしょうか。

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◆世界に夜明けを呼ぶ──リリィ女王が持ちビビが継ぐ“危険な力”

 イム様がビビ(リリィ女王)に執着するのは、感傷だけではないのかもしれません。イム様は、彼女たちが持つ世界をひっくり返しかねない“危険な力”を恐れているのではないでしょうか。

 リリィ女王が800年前に何をしたのか。コブラ王の明かした事実によれば「歴史の本文(ポーネグリフ)」を世界中に拡散させたのは、リリィ女王自身でした。彼女は、世界政府が隠そうとした真実を未来へ託すため、たった一人で反旗を翻したのです。これは、彼女が世界の支配を変えようとした、最初の“革命家”であったことを意味します。

 そして、その血を引くビビもまた、同じ力を秘めている可能性があります。アラバスタ編で、彼女は麦わらの一味を惹きつけ、国民の心を動かし、国を救うために戦い抜きました。彼女には、人々を惹きつけ導く、王族としての強いカリスマ性があるといえます。

 イム様は、ビビの中に800年前のリリィ女王と同じ「人々を扇動し、世界をひっくり返す危険なカリスマ性」を見出していると考えられるでしょう。

 800年前、リリィ女王の「意志」はポーネグリフとして世界に散らばりました。イム様は、その「意志」を受け継ぐ“器”であるビビ本人を手に入れることで、今度こそその危険な力を管理下に置き、二度と同じ過ちを繰り返さないようにしようとしているのかもしれません。

 イム様がビビをねらうのは、個人的な執着だけではありません。イム様は、ビビが先祖から受け継いだ世界を動かす「カリスマ」という“力”を恐れている可能性が高いといえます。ビビを手に入れることは、800年前の“裏切り”の再来を防ぐための、必然の選択といえるでしょう。

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◆モルガンズが報じる“Dの名”──王女が「革命の象徴」になる日

 イム様の執着と警戒心。その二つの感情が、皮肉にも自らの支配を終わらせる引き金を引いてしまうのかもしれません。

 父コブラ王の死後、ビビはCP0に命をねらわれ、ワポルとともに逃亡。そして今、彼女を匿っているのは、世界経済新聞社の社長、モルガンズです。

 一方、コブラ王の最期を看取り、イム様の存在と「Dの一族」の真実を知る唯一の目撃者サボはその情報を革命軍へと持ち帰りました。

 ビビはまだ父がなぜ命を奪われたのか、自らが「D」の名を継ぐ者であるという事実を知りません。この真実を、誰がいつ彼女に伝えるのか。その瞬間が物語の大きな転換点だと考えられます。

 しかし彼女が今、世界最大の情報屋モルガンズとともにいるという事実が、事態を加速させる可能性があります。

 「事実」よりも「売れるニュース」を愛するモルガンズ。彼が「ネフェルタリ家=Dの一族」という大スキャンダルを知ったら。あるいは、革命軍が意図的に情報をリークしたとしたら──。「アラバスタ王女ビビは“D”の名を持つ!」そんな見出しが、世界中を駆け巡るかもしれません。

 その報道が出た瞬間、ビビはもはや“悲劇の王女”ではなくなるといえます。世界中が、彼女の次の一手に注目するでしょう。

 父の無念を晴らし、先祖リリィ女王が託した「夜明けの旗」を掲げるため。彼女は自らの意志で、世界政府に反旗を翻す「革命の象徴」へと、変貌を遂げるのではないでしょうか。

 イム様がビビに執着しねらったことで、皮肉にも彼女は世界最大の情報屋の元へ逃げ込み、自らの“血の真実”が世界に暴かれる舞台が整ってしまった。神の“執着”が、結果的に自らを滅ぼしかねない最強の“語り手”を生み出してしまったのかもしれません。

 

 ──イム様がビビに執着するのは、800年前の裏切り者リリィ女王の面影と、彼女が継ぐ「世界を扇動する力」を恐れているからかもしれません。

 しかし、その執着こそが、皮肉にもビビを世界の真実へと導き、戦う決意をさせる引き金となると考えられます。

 かつてルフィに救われた王女が、今度はルフィと共に世界を救う「革命の象徴」となる。彼女が再び仲間の元へ帰るとき、世界の夜明けを告げる本当の戦いが始まるのではないでしょうか。

〈文/凪富駿〉

※本記事は漫画『ONE PIECE』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。

《凪富駿》

アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。特にジャンプアニメに関する考察記事の執筆を得意とする。作品とファンをつなぐ架け橋となるような記事の作成がモットー。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「ONE PIECE」第23巻(出版社:集英社)』

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