※本記事にはTVアニメ・原作漫画『ONE PIECE』のネタバレが含まれます。ご注意ください。
※本記事はTVアニメ・原作漫画『ONE PIECE』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。
ミホークの懸賞金35億9000万ベリーは、クロスギルドのボスとされる四皇バギーを上回っています。幹部であるはずの彼に、なぜこれほど高い金額がついたのでしょうか。たんに「世界最強の剣士」だからではなく、かつて“海兵狩り”と呼ばれた過去と、クロスギルドが始めた「海軍に懸賞金をかける仕組み」が関係しているのかもしれません。
◆なぜミホークはバギーより高額なのか 「ボス越え」懸賞金に残る違和感
『ONE PIECE』の世界における懸賞金の額は、基本的には「その組織のトップ」がもっとも高額になるという共通ルールが存在しています。
たとえば四皇シャンクスが率いる赤髪海賊団では、副船長ベン・ベックマンよりも船長であるシャンクスのほうが高額です。同様に黒ひげ海賊団においても、一番船船長シリュウよりも提督であるマーシャル・D・ティーチのほうが高額に設定されています。
どれほど強力な実力を持つ幹部が脇を固めていたとしても、組織を束ねるボスの金額を部下が超えるということは極めて異例なことだといえます。
しかし新勢力である「クロスギルド」においては、このルールを完全に無視した現象が巻き起こっています。
第1058話で明かされた最新の懸賞金では、世界政府の大きな勘違いによって組織のトップへと据えられ、「四皇」となったバギーの懸賞金が31億8900万ベリーであるのに対し、その幹部とされているミホークには35億9000万ベリーという、ボスを約4億ベリーも上回る破格の金額がつけられたのです。
この不自然な“査定”が意味するものはいったい何なのでしょうか。それは世界政府や海軍本部がバギー率いる組織の規模や彼が持つ「伝説の箔」以上に、ミホークというたった一人の「個人」が海軍にもたらす直接的な脅威を、非常に重く見ている証拠と考えられるでしょう。
世界政府にとってミホークという存在は、たんに「世界最強の剣士」という圧倒的な称号だけではとても説明がつかない、何か特別な危険を秘めている人物として査定されている可能性があります。
では、海軍がこれほどまでに彼を恐れ、破格の金額を懸けざるを得なかった本当の理由とは何なのか。その答えは、彼の封印された過去の“実績”に隠されているのかもしれません。
◆ミホークはなぜ「海兵狩り」と呼ばれたのか SBSで明かされた重い過去
ミホークに四皇超えの懸賞金がつけられた理由。その最大の根拠となるのが、第1058話でクロコダイルが語った「“海兵狩り”と呼ばれた男」にあります。そしてその事実が、コミックス108巻のSBSにて作者の尾田栄一郎先生の口から直接明かされました。
尾田先生は読者からの「1058話にてクロコダイルが、ミホークは昔海兵狩りと呼ばれていたと言ってますがミホークが王下七武海に加入したのもこの事が関係しているのでしょうか?」という質問に対し、「ミホークは海兵を恨むような過去と、大きな裏切りにあってきた人なんです」という非常に生々しい設定を暴露しました。
そしてその過去に対する報復として、彼はかつて「海兵狩り」という恐ろしい異名で呼ばれ、文字通り海軍の人間を無差別に襲う政府にとっての最悪の天敵だったという事実が明らかになったのです。
さらにこの公式回答は、彼がかつて「王下七武海」に加入した本当の理由にもつながっていきます。
尾田先生は続けて、「七武海は少なくとも海兵に追われないという意味では平穏なので加入したんだと思います」とも語っています。ミホークが政府の傘下に入ったのは実力を認められた名誉のためではなく、年中襲いかかってくる海兵たちとの無益な戦いを避け、ただ静かに「平穏」に暮らすための選択だったといえます。
しかし今、その王下七武海制度は完全に撤廃されてしまいました。世界政府の視点に立てば、ミホークを縛り付けていた「平穏」という目的が失われ、過去に海兵を無慈悲に葬ってきたあの恐ろしい“海兵狩り”が再び野に放たれてしまった状況だと考えられます。
つまり35億9000万ベリーという懸賞金は、過去にどれだけの海兵が彼の黒刀の餌食になったのかという計り知れない“実績”に対する恐怖の表れなのではないでしょうか。世界政府にとってミホークは、いつまた自分たちに牙を剥くか分からないもっとも危険な爆弾なのかもしれません。
◆クロスギルドで何が変わったのか 海軍が恐れる「一匹狼」の危険度
ミホークが抱える海軍への過去の因縁だけでも世界政府にとっては十分に大きな脅威といえます。しかし世界政府にとっての本当の脅威は、現在の彼が「クロスギルド」という強力な組織に所属しているという点にあるのかもしれません。
第1056話でユースタス・キッドの口から明かされた通り、クロスギルドは「海軍に懸賞金を懸ける」という前代未聞のビジネスを始めました。これにより、今までは海賊を追う側だった海兵たちが、今度は世界中の悪党や民間人から命を狙われる「追われる側」へと強制的に変えられてしまったのです。
この仕組みは、かつてミホークが行っていた「海兵狩り」を組織の力によって世界規模へと“標準化”する、あまりにも恐ろしい仕組みだといえるでしょう。かつては一匹狼だったはずのミホークが、大勢の部下と資金を持つ最悪の仕組みを手に入れてしまったといえるでしょう。
つまり世界政府から見たクロスギルドという組織は、バギーが持つ「圧倒的な知名度と人を引き寄せるカリスマ性」、クロコダイルの持つ「知略と手堅いビジネス資金力」、そしてミホークの持つ「“元・海兵狩り”としての圧倒的な武力と恐怖の実績」という海軍を壊滅させかねない危険なパズルがすべて揃った、歴史上最悪な組織として映っている可能性が高いです。
ミホークの懸賞金がバギーの金額を超えた理由は、彼がたんに強いからという理由だけではなく、クロスギルドという「海軍を狩る組織」のもっとも冷酷な “引き金”を引ける実行犯だからではないでしょうか。彼の過去の恐ろしい実績と現在の危険な立場が最悪の形で噛み合ってしまった結果、彼は世界の正義にとって四皇以上の脅威として重く査定されたと考えられます。
──ミホークの懸賞金がバギーを上回った理由は、単純な戦闘力だけでは語りきれません。かつて“海兵狩り”と呼ばれた過去、王下七武海制度の撤廃、そしてクロスギルドが始めた「海軍に懸賞金をかける仕組み」。これらが重なったことで、世界政府はミホークという個人を、四皇級の脅威として見ているのかもしれません。
静かな一匹狼だったはずの世界最強の剣士が、今は海軍そのものを揺さぶる組織の中にいる。そう考えると、35億9000万ベリーという金額は、ミホークの強さだけでなく、彼が再び“海兵狩り”として動き出すことへの恐れまで映した数字だといえるでしょう。
〈文/凪富駿(ONE PIECE担当ライター)〉
《凪富駿》
アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に活動するフリーライター。アニギャラ☆REWでは『ONE PIECE』関連記事を担当し、物語の伏線、キャラクターの関係性、名シーンの解釈などを読者目線でわかりやすく解説している。作品を読み返したくなるような記事制作を心がけている。
※サムネイル画像:プレミアムバンダイ公式Webサイトより 『「Portrait.Of.Pirates ワンピース SA-LIMITED “鷹の目” ジュラキュール・ミホーク Ver.R」 (C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション』


