『【推しの子】』なぜ有馬かなの「目には星が出ない？」　有馬が魅せる“ある演技”が理由？

　現在放送中のTVアニメ『【推しの子】』では、作中の人気漫画作品「東京ブレイド」を舞台化したエピソード「2.5次元舞台編」が幕を閉じました。

　本編は有馬かなと黒川あかねが異なったベクトルの演技でぶつかり合い、互角といえる戦いを見せています。

　しかし、ふたりとも同じ力量のはずなのに、黒川には天性のアイドル・星野アイが持つ目の星が現れたのに対し、有馬には現れていません。なぜ、有馬の目には星が出ないのでしょうか？

◆目の星にはどのような意味がある？

　そもそも、本作の特徴ともいえるアイやその子供たちのアクアやルビーの目に宿る六芒星状の星には、どのような意味があるのでしょうか。

　作中では「恋愛リアリティショー編」でアイを模倣した黒川の目に六芒星状の星が出たときに、「視線を向けざるを得ない不思議な引力」があったと記されています。その場にいるキャストやスタッフ、カメラマンですら黒川に引き付けられ、このときの黒川にはアイのようなカリスマ性がありました。

　また、「中堅編」では通常の演技中にも星が宿るようになった黒川の目について言及されています。黒川が所属する劇団「ララライ」 の代表・金田一は黒川の目について、「人を騙す眼 嘘を真実だと思わせる力 役者にとって最高の資質」と、評していました。

　このふたつの描写から六芒星状の星には周囲の目を惹きつけるカリスマ性があり、嘘の言葉や態度、演技を信じさせる力があるといえるでしょう。

◆目に星が出ないのは演技のベクトルの違いか？

　六芒星状の星について解説したうえで、なぜ有馬の目には星が現れないのでしょうか？　それは、有馬が見せる演技のベクトルの違いにあるでしょう。

　有馬は「2.5次元舞台編」で自分の演技を抑えて周りを立てるような演技をしていたところ、演技を通してアクアに説得され、演りたい演技を見せます。本気を見せた有馬の演技は全身から楽しさが伝わってきて、まばゆい光を放ち、観ている人を圧倒させていました。

　そんな有馬の演技はフリーのプロデューサー・鏑木に「目を焼く程に眩い太陽の様な巨星（スター）の演技」と評価され、「「私は特別に可愛い」という嘘を信じさせてくれる説得力」、ずばり「スター性」があったといわれています。

　鏑木の評価を聞くと有馬の演技は六芒星状の星と同じ力があるように思えますが、両者には「太陽」と「星」という大きな違いがあるでしょう。

　六芒星状の星は先述したように「視線を向けざるを得ない不思議な引力」で人の目を引き付けるといわれ、夜空に浮かぶ一番星のような引力を持っています。

　一方で「太陽」と評される有馬の演技は「目を焼く程に眩しい」といわれ、目を引くのではなく「もっと私を見て」とアプローチする演技です。

　六芒星状の星と有馬の演技にはこのようなベクトルの違いがあるからこそ、有馬の目には星が出ないのかもしれません。

◆一方で有馬の目に星が出ていたという見方も

　しかし、一方で有馬には六芒星状の星ではなく、十字状の星が現れていたという見方もあります。

　確かに有馬が巨星の演技を見せたときには、目にいくつもの十字状の輝きが現れていました。この十字状の輝きは芝居やアイドル活動だけでなく、日常生活のなかで嬉しいことがあったときにも現れており、巨星の演技中のみのものではありません。

　また、この十字状の輝きは有馬のほかに、東京ブレイドの作者・アビ子先生にも現れています。「2.5次元舞台編」でアビ子先生が実現できないと思っていた動作を鳴嶋メルトが再現したときに、アビ子先生は「すごいすごい！」と喜び、目に十字状の輝きが現れていました。

　ふたりの十字状の輝きが出ていた場面を振り返ると、本人が偽りなく純粋な気持ちで楽しんでいるときに輝きが現れるように見えます。

　この輝きを星と受け取るかは意見が別れそうですが、もし十字状の輝きが星ならば、「嘘付きの目」と評されることもある六芒星状の星とは違う意味があるのでしょう。

◆今後有馬かなに六芒星状の星は現れるのか？

　有馬の目に浮かんだ十字状の輝きが星かはともかく、彼女の目にアイや黒川のような六芒星状の星が現れる可能性はあるのでしょうか。

　おそらく、今後の展開のなかで有馬の目に六芒星状の星が現れることはないでしょう。理由としては、有馬は黒川と対比する存在であることが挙げられます。

　有馬は「かつて天才と呼ばれた子役」である一方、黒川は「今まさに天才と呼ばれてる役者」です。

　対称的なふたりは演技のタイプも異なっており、作中では有馬は周りの演技を綺麗に受ける「適応型」、黒川は役にどっぷり入り込む「没入型」と評価されていました。

　本人たちもおたがいの演技が違うのを理解しており、有馬は黒川の演技からは「私が正しい」という圧力を感じるといいます。

　一方で、幼い頃から有馬のファンである黒川は、自分が好きだった有馬の演技は周りに合わせる適応型の演技ではないと、今の有馬を否定していました。

　もし、今後有馬に黒川のような六芒星状の星が現れては、ふたりの演技が近いものといえてしまうでしょう。対比した演技を見せるふたりだからこそ、黒川には六芒星状の星が現れて有馬には星が現れないと考えられます。

〈文/林星来 @seira_hayashi〉