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 美少女ゲームの歴史において、メインヒロインでありながら「決定的なシーン」が描かれないという異例の構成により、プレイヤーに衝撃を与えたのが、『Pia♥キャロットへようこそ!!3』の高井さやかです。

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◆メインヒロインなのに“妄想”で終了!? 前代未聞の「さやかショック」を振り返る

 2001年にF&C FC02から発売された『Pia♥キャロットへようこそ!!3』(略称、『Piaキャロ3』)は、男性向け恋愛アドベンチャーとシミュレーション要素が融合した人気シリーズの第3作です。

 本作のストーリーは、主人公の神無月明彦が、新たにオープンする「4号店」のヘルプ要請を受けるところから始まります。

 彼は本店でともに働くバイト仲間、高井さやかの存在を気にかけつつも、美崎海岸にある新店舗へと向かい、そこで新たな出会いと恋模様を繰り広げることになります。

 本作の特筆すべき点は、物語のスタート時点で主人公が既に特定のヒロイン(さやか)に片思いをしているという設定です。

 一般的な恋愛ゲームによくある「真っ白な状態から好みの相手を見つける」のではなく、最初から「意中の人がいる」という設定に、当時多くのプレイヤーに新鮮な驚きを与えました。

 そして、本作を語るうえで欠かせないのが、メインヒロイン・高井さやかの存在です。

 パッケージやプロモーションの中心を飾る彼女は、まさに正統派ヒロインといえるビジュアルを誇り、多くのプレイヤーが「彼女を攻略するぞ!」と心に決めました。

 成人向けタイトルである以上、ストーリーを進める中で彼女との甘いシーンを期待するのは、プレイヤーとして当然の心理といえます。

 ところが、そんな期待に胸を躍らせてプレイを進めたユーザーを待っていたのは、信じがたい事実でした。

 なんと、メインヒロインであるはずのさやかに、肝心の「成人向けシーン」が存在しなかったのです。

 あまりの事態に、新手のバグを疑う声さえあがったほどでした。

 実際には、彼女とのシーンは「主人公の妄想」という形で処理され、現実の行為として描かれることはありません。

 もちろん、シナリオそのものは非常に重厚です。主人公との微妙な関係に悩み、揺れ動くさやかの繊細な感情描写は、シリーズ屈指の完成度といえるでしょう。

 しかし、それゆえに当時のプレイヤーが抱いたやり場のない喪失感は大きく、今なお語り草となっています。

 そんなプレイヤーの切ない思いを受け止める救世主のような存在が、4号店の店長代理・羽瀬川朱美でした。

 彼女にはさまざまな見せ場が豊富に用意されています。序盤から大胆な姿を披露するほか、頻繁に成人向けシーンが組み込まれており、ついにはお店の中でまで……まさに成人向けゲームの醍醐味を凝縮したようなキャラクターです。

 「ストーリー重視でさやかの愛おしさを噛み締めたい、でも成人向けゲームとしての刺激も満喫したい!」という人は、さやかルートをクリアしたあと、すぐに朱美ルートをプレイするとよいでしょう。そうすることで、心のバランスが取れるはずです。

 

 ──メインヒロインに「あえて描かない美学」を貫いた本作の構成は、今振り返れば、彼女の純潔さや特別感を際立たせるための演出だったのかもしれません。当時のもどかしい記憶とともに、改めてあの『Piaキャロ』の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

〈文/士隠カンナ〉

《士隠カンナ》

1990年〜2000年代に放送されたアニメに中学・高校の頃にどっぷりとハマり、その後フリー編集・ライターに。主にアニメ・漫画のムック本のブックライターといて活動中。最近のマイブームはもっぱら『ちいかわ』。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「Piaキャロットへようこそ!!3 ~ round summer ~」(発売元:NECインターチャネル)』

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