『らんま1/2』の完全新作アニメの放送・配信が10月5日から始まりますが、SNS上では「今でも同じ内容で放送できるの?」と不安視する人もいます。

 たとえば語尾に「アル」をつける嘘中国語や、親が勝手に許婚を決めることなどは、「不適切にもほどがある!」と叱られてしまいそうですが──。

◆今でも笑える!? 暴力メシマズヒロイン

 メインヒロインの天道あかねは恐ろしく料理が不得意な一方で戦闘力は高いことから、いわば暴力メシマズヒロインとして扱われています。

 背景に料理は女性がするものという考えが根強かった時代の影響がありますが、時代の変化により、最近では男性がバリバリ料理をして、ヒロインが戦闘で活躍する作品も増えました。

 むしろ男性キャラが料理や裁縫などの家事やサポートが得意で、女性キャラの戦闘を支援する作品も珍しくありません。

 あかねは怪力ではあるものの直情的な戦い方なので、実力者として扱われてはいませんが、その怪力で振るわれた包丁はまな板まで削り、料理に欠片が混入するほどです。

 料理下手の大きな原因は味見をしないことなので、味を見てていねいに作る努力をすれば改善する可能性はあります。

 また、『らんま1/2』の作中では、乱馬から「ずん胴」などデリカシーのない発言を受けるため暴力を振るっていました。しかし注意を引くことや照れ隠しのために、悪態をついたり悪口を言ったりするアプローチの仕方も、単純に相手を傷つけるのでやめたほうがいいという認識に変化してきているので、この辺りの描かれ方が気になるところです。

◆語尾に「アル」がつく! 嘘中国語

 本作は中国出身のキャラクターも多く、人気キャラであるシャンプーは、語尾に「アル」をつける昔ながらの嘘中国語を話します。

 近年だと『銀魂』の神楽もこの話し方をしていましたが、神楽は中国人ではなく夜兎族なので特に問題視されなかったのかもしれません。

 この嘘中国語のルーツは協和語という旧満州国で使われていた簡略化された日本語で、漫画では1931(昭和6)年から連載されていた『のらくろ』でも使われています。

 シャンプーは登場当初は中国語でしゃべっていましたが、再登場時からは協和語風の嘘中国語です。

 旧アニメ版では佐久間レイさんの好演もあり、シャンプーの口調はチャームポイントの一つにもなっていました。リメイクで口調を変えると昔からのファンは相当な違和感を抱くかもしれません。

 『らんま1/2』は言葉以外にも中国っぽい要素が散りばめられているので、ファンタジー要素の一つとして描くことができれば、問題なく放送できるのではないでしょうか。

◆性別を自在に変えられる設定

 乱馬は娘溺泉に入ったことで水をかぶると女性に変身し、お湯をかぶると男性に戻るという体質になりました。

 二者択一の性別に悩みを抱える人たちの存在が認知され、関わり方がナーバスになる中で、フィクションとはいえその設定を楽しめない人も出てくるかもしれません。

 実際あかねは、最初に女乱馬と対面して仲良くなった後、風呂場でお互いに裸で、男の姿の乱馬と出くわす目にあっています。その結果、乱馬は「変態」となじられることになったので、トイレの設置や更衣室の利用の仕方などで議論が起きている最近の時勢ともつながります。

 女乱馬は心と体の性別が一致しない状態にあるトランスジェンダー男性とも解釈できるので、現実にそのことで悩んだり、生きづらさを抱えることになったりしている人たちがどのように受け止めるか、制作側は考える必要があります。

 一方であくまで『らんま1/2』はフィクションであり、1987年から1996年まで連載されていた漫画作品です。

 昔を懐かしむということではなく、その時代の人たちがどのようなことを考え、どのような夢を見て物語を作っていたのか。問題意識が高まり注目を集めている今だからこそ、深堀りした作品が作れるのではないでしょうか。

◆親が勝手に許婚を決める──結婚しなくても幸せになれる時代に!?

 『ゼクシィ』ですら「結婚しなくても幸せになれる時代に」というキャッチコピーを打ち出す世の中になりましたが、乱馬とあかねは許婚という関係です。

 しかも本人の意志ではなくお互いの両親が決めたというダメ押しつき。

 ですが『らんま1/2』が連載されていた当時も、既に許婚というものが一般的だったわけではありません。

 時代や社会が変わり、過去に存在した許婚というものが珍しくなったとしても、人々の結婚観や結婚の形式は多様です。お見合い結婚が主流だった時代もあれば、恋愛結婚が主流の時代もあり、主流ではない結婚の形式を選ぶ人々もいます。

 『らんま1/2』のリメイクの舞台が現代になるかどうかは分かりませんが、昭和レトロも流行っているので、あの頃はこういう時代だったと記録するように作られる可能性もあります。

 

 ──許婚に限らず、理不尽に決められた枠組みの中で、どのように葛藤していくかということはどの時代の人にとっても重要なテーマです。

 せっかくの再アニメ化なので、性別も国籍も結婚制度もぶっ飛ばす痛快なアニメを期待したいところです。

〈文/雨琴〉

 

※サムネイル画像:Amazonより

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