高橋留美子先生原作の格闘ラブコメディー『らんま1/2』の完全新作アニメが10月5日より放送されますが、本作には豆知識ともいえるあまり知られていない設定などが存在します。
◆らんまの赤髪はアニメオリジナル設定だった
らんまといえば、赤髪の一本おさげがトレードマーク。しかし、この特徴的な髪色は、実はアニメオリジナルの設定だったのです。
実際のらんまの髪色は、乱馬と同じく黒髪。原作コミックスの表紙を見てみると、第1巻~第4巻は黒髪で、第5巻以降になると、黒髪だけでなく、茶色や紫色、水色など、さまざまな髪色のらんまが描かれています。その中には赤髪のらんまが描かれている巻も多く存在し、アニメからの逆輸入だったと考えられます。
アニメで赤髪が採用されたのは、男性の乱馬と女性のらんまを区別しやすくするためだったのでしょう。
ちなみに2024年版のらんまは公式サイトや映像を見る限り、ほんのりピンクがかった髪色になっています。
◆あかねがショートヘアになった意外な理由
初期にロングヘアからショートヘアにチェンジしたあかね。序盤でキャラクターがイメチェンするのはけっこうなレアケースですが、それにはストーリー上の理由とは別に意外な“ワケ”がありました。
あかねの髪がショートになったのは、コミックス第2巻「けがはなくとも」でのこと。乱馬と響良牙の戦闘に巻き込まれ、あかねの髪は肩につかないくらいまで短くなってしまいます。その後、姉である天道かすみの手によって整えられ、今の黒髪ショートヘアになりました。
しかし、髪型変更の真の理由は、作者の高橋先生があかねのロングヘアに納得していなかったためでした。
ムック本『劇場用アニメ うる星やつら 完結篇・ボーイ ミーツ ガール 少年サンデーグラフィック・スペシャル』の中では、「ヒロインのあかねという女の子に悩まされてしまった。気持ちがイマイチわからん。描きづらい。どうやら髪型に原因があるらしいと気づいて、“ええい!切ってしまえッ!!”と、あかねの髪をバッサリやってしまった。これであかねのキャラが完ペキに立ったといえないのが辛いところなんですが(笑)」と、あかねの髪型に関する真相が語られています。
◆アニメ版ではシャンプーの語尾が変化
シャンプーは、乱馬に求愛し、らんまの命を狙う武闘民族出身のチャイナ娘。「~ある」といった、中華キャラ特有の語尾が印象的な人物です。
しかし、アニメでは「〜ある」という特徴的な言葉じりは封印され、「〜ネ」など少しマイルドな口調になっています。「〜ある」と聞けば中国人のキャラクターを連想しますが、実際のところ中国ではそのような語尾は使われていないことから、コンプライアンス的な理由で変更されたのでしょう。
この変更を、シャンプー役の声優・佐久間レイさんは演技力で補っています。訛った日本語のようなカタコトのイントネーションで、見事に“中華少女”っぽさを表現しました。
佐久間さんのボイスによって、かわいらしさと色気を兼ね備えたシャンプー。新作アニメでは、「〜ある」口調が解禁されるのか注目どころです。
◆『らんま1/2』はあるカンフー映画を参考にしていた
乱馬の格闘スタイルやポーズは、どこかカンフー(中国武術)を彷彿とさせます。それもそのはず、『らんま1/2』は、あるカンフー映画を参考にしていたそう。
その事実が語られたのは、2019年に開催された「アングレーム国際漫画祭最優秀賞記念」で行われた高橋先生へのインタビューでのこと。そのなかで高橋先生は、ジャッキー・チェンさん主演の映画『ドランクモンキー 酔拳』に憧れており、『らんま1/2』のコミカルなカンフーの作風はそこから影響を受けたと話しています。
コミックス第8巻「ジュリエット ゲーム」では、らんまが酔拳を披露する場面も。乱馬たちの躍動感あふれるリアルなアクションシーンは、実際に存在する作品からきていたのです。
ちなみに、男女が入れ替わる設定は、高橋先生が学生の頃に読んだ弓月光先生の漫画作品から着想を得たそう。『らんま1/2』は、2つの作品へのリスペクトがうまく調和した、奇跡的な作品だったことがうかがえます。
〈文/繭田まゆこ〉
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