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※この記事にはTVアニメ・原作小説『Re:ゼロから始める異世界生活』のネタバレが含まれます。ご注意ください。

※本記事はTVアニメ・原作小説『Re:ゼロから始める異世界生活』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。

 エキドナはベアトリスに「その人」が誰なのかを、最後まで教えませんでした。愛娘への想いからではなく、知ることへの飽くなき欲望から。

 400年という孤独な時間は、ベアトリス自身の意志ではなく、魔女が仕掛けた"仕組み"の上に成り立っていた可能性があります。

 「その人」の正体を伏せたまま縛りつけた理由、禁書庫が果たしていた本当の役割、そしてエキドナがベアトリスの心の摩耗さえも観察していたとしたら──。

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◆「その人」が誰か教えなかった理由──希望をエサにした終わりのない番人

 エキドナがベアトリスに課した契約には、不自然な点があります。それは、待つべき「その人」の正体を一切明かさなかったことです。

 エキドナが、本当に特定の誰かとベアトリスを会わせたいと願っていたのなら、その人物の名前や見た目、あるいは現れる時期を具体的に伝えれば間違いなかったといえます。しかし、彼女はあえて「その人」という正体不明の言葉だけを残しました。

 この「教えない」という行為こそが、ベアトリスを400年間縛り付けたもっとも残酷な罠なのかもしれません。相手が誰か分からないからこそ、ベアトリスは禁書庫の扉を叩くすべての人に「もしかしたらこの人が」というあわい期待を抱かざるを得ませんでした。

 「その人」が「黒髪の少年」と決まっていれば、それ以外の来訪者を無視して入室を拒むこともできたでしょう。しかし正体が伏せられている以上、たとえ来訪者が危険な人物であっても、彼女はあらゆる可能性を捨てきれず一秒たりとも番人の役目を放り出すことができなくなったと考えられます。

 エキドナにとって「その人」とは、特定の人物をさす言葉ではなく、ベアトリスを禁書庫という場所に固定し続けるための「重石」に過ぎなかったといえるでしょう。いつか現れるという不確かな希望をエサにすることで、ベアトリスの心を永遠に禁書庫へつなぎ止め、彼女が自ら外の世界へ逃げ出す選択肢を奪ったのではないでしょうか。

 つまり「その人」が「特定の誰か」であるかは、エキドナにとって最初からどうでもよいことだったといえます。大切なのは「誰かが来るかもしれない」と信じ込ませ、ベアトリスを400年間一歩も動かさずに禁書庫の番人として居座らせることそのものだったといえるでしょう。

◆禁書庫は「世界の歴史を貯める場所」だった──歴史を見届けるための窓

 エキドナがベアトリスを禁書庫に留めて置いたのは、たんなる気まぐれではない可能性が高いです。そこには、知識に対して異常な執着を持つ「強欲の魔女」らしい極めて妥当な理由があったのではないでしょうか。

 禁書庫には、エキドナが集めた世界中のあらゆる知識が収められているとされていますが、それ以上の情報は明らかにされていません。そこで重要なのは、ベアトリスが過ごした「400年という時間」そのものです。

 命を落としてなお、世界のすべてを知りたいと願うエキドナにとって、自分がいない間に外の世界で何が起き、歴史がどう変わっていくのかを記録し続ける手段が必要だったと考えられます。

 つまり禁書庫とはたんなる本の置き場所ではなく、外の世界の動きを吸い上げ、書き溜めていくための「記録帳」だったのではないでしょうか。そしてベアトリスは、その記録帳が正しく機能し続けるように管理し、失われないように守り続けるための「生きた番人」として配置された可能性があります。

 ベアトリスが一人きりで扉を閉ざし続けた400年間。その長い時間は、エキドナにとっては価値ある情報を収集するための「待ち時間」にすぎないのかもしれません。ベアトリスという、年を取らず衰えることもない精霊を禁書庫に固定することで、エキドナは自分が命を落とした後の世界さえも、のぞき窓から眺めるように把握し続けようとしたのではないでしょうか。

 ベアトリスの献身や孤独は、歴史という膨大なデータを集めるための「仕組み」の一部として利用されていた可能性があります。ベアトリスが400年間出られなかった本当の理由は、誰かを待たせるためではなく、彼女という記録係を外の世界へ逃がさないためのエキドナの仕掛けだったのかもしれません。

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◆知りたいという欲望が招いた非道──400年後の結末を覗く実験

 エキドナがベアトリスに押し付けたのは、たんなる記録係としての終わりのない働きだけではありませんでした。もっとも残酷な真実は、エキドナがベアトリスの「心」が摩耗し、壊れていく過程さえも興味深い観察対象として楽しんでいた可能性があることといえるでしょう。

 その証拠に、聖域編でのスバルとの「茶会」においてエキドナは、ベアトリスの今後について「ワタシは『その人』を待つようにあの子と契約を結んで……あの子が、誰を『その人』に選ぶのか、その結果を待っているんだ」という発言をしています。

 これは、エキドナがベアトリスを「愛する娘」としてではなく「極限状態に置かれた彼女が、長い年月の果てにどのような答えを出すのか」という自らの知的好奇心を満たすための被検体として見ていた証拠ではないでしょうか。

 ベアトリスは感情豊かに造られた人工精霊であるといえます。しかしその豊かな感情さえも、魔女にとっては実験の結果をより劇的なものにするための「仕掛け」の一部だったのかもしれません。

 ベアトリスが心を持たないただの人形であれば、400年の待機はたんなる時間の経過にすぎません。しかしそこに「寂しさ」や「お母様への敬愛」、そして「救いへの期待」という心があるからこそ、エキドナは「心が限界を迎え最後に何を選び取るのか」という残酷な結末を、特等席で見届けたかったと考えられるでしょう。

 ベアトリスが抱き続けた「その人」への希望は、彼女という記録装置を壊さずに動かし続けるための「燃料」であり、同時にその燃料がいつ尽きて絶望に変わるのかを計るための「実験材料」でもあったといえるでしょう。

 契約という名の嘘で縛りつけ、400年後の果てに訪れる結末を覗き見る。それこそが、強欲の魔女が仕掛けた、もっとも悲しく非道な実験の正体だったのではないでしょうか。

 

 ──ベアトリスにとっての400年は、エキドナが仕組んだあまりにも孤独な「実験」だったといえます。「その人」という不確かな希望で彼女を縛り付け、心が壊れゆく過程さえ観察する。それが強欲の魔女の与えた契約の真実だったのではないでしょうか。

 しかし、その残酷な仕組みを壊したのがナツキ・スバルでした。彼はエキドナのクイズを拒み、「俺を選べ」とベアトリスに手を差し伸べました。呪縛の象徴である「福音書」を焼き捨てたとき、ベアトリスは「生きた記録係」という役目から解放されたと考えられます。

 スバルとともに生き、精霊ではなく人間らしく振舞う姿こそが、エキドナの試練を乗り越えて手に入れたベアトリスの本当の幸せなのかもしれません。

〈文/凪富駿〉

《凪富駿》

アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。特にジャンプアニメに関する考察記事の執筆を得意とする。作品とファンをつなぐ架け橋となるような記事の作成がモットー。

 

※サムネイル画像:TVアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』オフィシャルサイトより 『TVアニメ「Re:ゼロから始める異世界生活」第53話 場面写真 (C)長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活3製作委員会』

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