磯野家とフグ田家の日常を、ほのぼのとしたタッチで描いた『サザエさん』。1969年10月5日にアニメ第1話が放送され、2024年には放送55周年を迎えました。
そんな『サザエさん』の中には、トリビアともいえる衝撃の事実や意外な設定が存在します。
◆タマがしゃべった回がある
真っ白なオス猫・タマは、磯野家のなかで唯一声優がシークレット。公式Webサイトのキャラクター紹介には「声の出演:?」と表記され、エンディングのスタッフロールには項目すらありません。
そういった背景もあり、タマの声は「機械による合成音声」や「出演者が入れ替わりで声を当てている」「猫の鳴き声を録音したもの」など、さまざまな説が噂されました。そんなタマには、人間の言葉をしゃべった回が存在します。
描かれたのは、1979年10月に放送された「ぼくらの心はキズついた」でのこと。波平が勢いよく閉めた襖にしっぽが挟まれ、タマは大ケガを負うことに。ラストシーンでは、タマに向かって謝り、反省する波平を見て「やったやったー! やったぜー!」と言いながら嘲笑するタマが映し出されるのです。
タマが鳴き声以外のセリフを発したのはこのエピソードだけ。しかし、この回のエンディングでも、タマの声の主は明かされず……。タマの声についてますます謎が深まる、レアなエピソードとなりました。
◆中島の下の名前は「たかし」?
カツオの親友・中島。彼のフルネームは、長年謎に包まれてきました。というのも、公式Webサイトでは、名字である「中島」としか書かれていないのです。
さらに、カツオは「中島」、他の同級生は「中島くん」と呼んでいることもあり、彼の下の名前を知る機会はほとんどありませんでした。
しかし、アニメ放送の中には、中島を下の名前で呼んでいる人物が存在しています。それは、中島の祖父です。
1973年3月に放送された「コンビ解消」で、カツオと喧嘩しているところを祖父に見られ、説教される中島。そのとき、祖父は「たかし、だいたいお前は……」と、はっきり中島のことを「たかし」と呼ぶのです。
フルネームが「中島たかし」と判明した中島。真偽は不明ですが、SNS上では中島の下の名前は「博」(ひろし)だという説もあるようです。
また、同級生のなかでは、早川さんや橋本、西川の下の名前が未だ明かされていません。今後放送されるエピソードでは、中島のように、不意に彼らの名前が呼ばれるかもしれません。
◆磯野家のペットはタマだけではない?
磯野家のペットといえば、白い毛並みに大きな鈴がトレードマークの猫のタマ。しかし、原作の磯野家は、猫以外にもさまざまな生き物を飼っていました。
たとえば、犬は3匹おり、それぞれ名前は「エルザ」「ジョン」「太郎」。当時『サザエさん』が掲載されていた朝日新聞の朝刊には、サザエさんが白い犬に向かって「エルザ! ごはんだよ」と呼びかけるシーンがあります(1966年4月2日掲載分)。
ほかにも、リスの「マイク」や金魚、亀、ネズミなどを飼育していた時期もあり、磯野家のペット遍歴は多岐にわたります。
ちなみに、猫のタマはアニメオリジナルキャラクター。原作ではタマではなく、「ミー公」(朝日文庫版第17巻など)をはじめとした複数の猫が磯野家のペットとして飼われていました。
作者の長谷川町子先生は動物好きで、自身でも犬や猫、シマリス、鳥などを飼っていたそう(企画展「町子の動物ワールド」より)。その動物愛が、漫画に反映されたのではないでしょうか。
◆サザエさんは独身時代にバリバリ働いていた 結婚してからも……
サザエさんは現在24歳。料理、洗濯、裁縫などをこなす専業主婦として磯野家を支えています。主婦のイメージが強いサザエさんですが、実は独身時代はバリバリ働いていました。
彼女は高校卒業後、出版社「ハロー社」に就職、記者として精を出します。その中では、“体験取材”の一環で婦人警官として働いたり、作家・菊池寛の接待を行ったりしたことも(漫画『サザエさん』第2巻より)。
また、短期間ではあるものの、マスオと結婚してからもさまざまな職業を経験しています。
たとえば、原作では探偵事務所の助手(別冊『サザエさん』「私立探偵入門」より)や、デパートの店員(別冊『サザエさん』「アルバイトの巻」より)を。アニメ版では、大金持ちの湯水家のお手伝いさんとして働いたり(2016年3月放送「私、お手伝いさんでございます」)、スーパーにパートに出たり(2015年4月放送「スーパーのお姉さん」)もしています。
中には、デパートを1日で退職してしまった失敗談も(2013年12月放送「花のデパートガール」)。多彩な職歴からは、サザエさんのバイタリティの高さがうかがえます。
──ほかにも、「タラちゃんが大阪弁をしゃべった回がある」「サザエさんとマスオはスピード婚だった」など、数々のトリビアが存在する『サザエさん』。上記のトリビアを知っておくと、より『サザエさん』が味わい深いものになるかもしれません。
〈文/繭田まゆこ〉
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