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 数々のヒット作を生んできた細田守監督の最新作、『果てしなきスカーレット』が興行的に苦戦しています。

 11月21日(金)から250館以上の大規模な興行をスタートさせた『果てしなきスカーレット』は、興行通信社が発表している週末を対象とした動員数ランキングでは『劇場版チェンソーマン レゼ篇』や『劇場版呪術廻戦「渋谷事変 特別編集版」×「死滅回游 先行上映」』といったライバルを押しのけ、初登場3位にランクイン。一見ヒットを果たしているように見えますが、初週末の成績としては2億円を超える程度と見込まれているため、公開規模や監督の過去作と比べると低い水準となっています。なぜこういった状態になっているのでしょうか。

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◆初日早々に公開規模が縮小へ 『果てしなきスカーレット』への厳しい目

 『果てしなきスカーレット』は作品の賛否以上に、想定よりも集客に苦戦している様子が見られます。

 公開の初週末早々に、上映回にあまりお客さんが入っていないという体験談がいくつもX(旧Twitter)などのSNSに投稿されているほか、大阪の109シネマズ大阪エキスポシティではIMAX®︎レーザーGT版の公開スケジュール予定が一日4回上映を当初は発表していたものの、公開初日の午後時点で1日3回の上映へと変更する、という異例の発表がされています。

 具体的に減らした理由などは発表されてはいないものの、集客が見込めるのであれば従来の発表通り上映すればいいはずで、それをわざわざ上映予定が既に発表されている状態から急遽変更するというのはかなり異例の事態で、集客の見込みが弱いという判断が下されたことは容易に想像できます。

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◆“これまでとは違う”が裏目に出る、従来の作品との違い

 細田守監督といえば『時をかける少女』や『サマーウォーズ』といった今なお何度もリバイバル上映やTV放送を果たす作品を送り出してきたとはいえ、それらは公開当初から何億円も稼ぐようなヒットという感じではありませんでした。少しずつ名を上げていき、監督自身のブランディングを確立していった結果、興行収入60億円以上という『竜とそばかすの姫』(2021)のような自身最大のヒット作に辿りついたといえます。

 しかし、今回はそんなハイスコアの直後とは思えない集客となってしまったのは、これまでの作品の傾向から大きく逸脱していることが裏目に出たという見方はできるでしょう。

 細田守監督の作品の傾向として従来は7月末ごろの夏休みシーズンでの興行に臨んでいたところを今回は11月のもはや年末に近いタイミングで上映。しかも、作風は過去作ではおなじみの青空が印象的なビジュアルからは一転し、公開前は真っ赤なビジュアルイメージとして起用して宣伝していたり、そもそも“異世界”を舞台にして、主人公が日本人ですらないという、これまでとはまったく違う路線に振り切ったところが従来の顧客に届かないという結果を生んでしまった、という見方ができそうです。

 新海誠監督が夏休み映画として『天気の子』(2019)をヒットさせたあとに、夏季から上映を11月にズラしながらも『すずめの戸締まり』(2022)は同様にヒットを記録できたという前例はあったものの、細田監督はそれとは同じ流れを汲めなかったことも注目すべきポイントでしょう。

 

 ──そもそもの話として、細田守監督や新海誠監督のようにオリジナルの長編アニメーション映画を公開して、大ヒットさせるという例がかなり少数派であることも念頭に置いておきたい点です。今やアニメーション映画は、映画興行としては大きな軸の一つとなっていて、今年も『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』といったヒットタイトルが登場しています。しかし、いずれも原作漫画や既存のTVアニメの延長線にある作品だったりと、アニメーション映画の特大ヒット作品というと、従来のシリーズの人気を踏まえた成功作がほとんどです。

 ここ数年、アニメーション映画のヒットが続いているとはいえ、『果てしなきスカーレット』の興行の伸び具合は、今後、細田守監督が製作していく作品の公開規模などにも影響していくことは予想でき、スタジオ地図作品という括りの扱いが、これまでとは変わっていく“節目”を迎えたといえそうです。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi

 

※サムネイル画像:映画『果てしなきスカーレット』公式サイトより 『「果てしなきスカーレット」ファイナルビジュアル (C)2025 スタジオ地図』

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