最近ではすっかり定番となってきた映画の入場者プレゼントですが、ついに『果てしなきスカーレット』もラージフォーマットでの上映開始に合わせて12月13日(土)から配布されます。
今回の入場者プレゼントは細田守監督描き下ろし歴代ヒロインのイラストミニ色紙。『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』『未来のミライ』『竜とそばかすの姫』、そして今回の『果てしなきスカーレット』の細田守監督が手がけた7作品からの選出となっています。
非売品ということで、ぜひ手に入れたいアイテムになっているわけですが、この特典は“ランダム封入”というのが注意点。そもそもの集客の施策として是非を感じてしまう例といえます。
◆欲しい色紙が手に入るか分からない──ランダム封入特典の問題とは?
今回発表されたイラストミニ色紙は全7種類ということで、少し厄介な印象もあります。もしこの色紙を全部を揃えるには最低でも7回は劇場に足を運ぶ必要がありますし、特定の作品の色紙が欲しい人も必ずその色紙が手に入るわけではないです。種類が多いのにランダム封入にしてしまうのは“不親切”に感じられます。ランダム封入の良さはどういった点なのでしょうか。
特典をランダム封入していると、なんども映画館に足を運ぼうという人にとっては、その一回、一回に個別の楽しみが増えるという意味では嬉しい試みです。それはまるで映画館に足を運ぶ度にくじ引きが引けるような感覚。昨今では面白い映画や好きな映画には何度も通うという例も増えてきました。
そういった二回以上通おうという人にとって嬉しい企画であり、“ラージフォーマットでの上映開始”というタイミングはまさに『果てしなきスカーレット』という映画が好きだったのでもう一度観たいという人の背中を押すパワーとなるでしょう。
一方で良い例ばかりではありません。ランダム封入の特典自体が足を運ぶ目的になってしまう、という例も出てきています。本来個人的な売買などを禁止している前提の特典は多々あるものの、今なおオークションサイトやメルカリといった個人での売買ができるサイトで、こういった来場者特典が高額で取引されるという例も少なくありません。
ランダム封入で種類が多い特典となると、特定の一種類を手に入れられる可能性が低くなるので、余計に高額で売買されやすくなります。
そういった前提もあるので人気作品の特典に関しては、そもそも転売目的で特典だけを手に入れるために座席予約をして、特典だけ貰って映画を観ないという人もいたり、配給側も人気の高かった入場者プレゼントを改めて再配布期間を設ける例も出てきています。
もうそうなってくると“オマケ”どころの話ではなくなってくるのですが、入場者プレゼントを配布してなおかつそれをランダム封入にすることは、現状では集客力を上げる効果的な施策として扱われています。
◆ランダム封入特典は悪いことなのか? むしろ時代としては当たり前?
映画館に足を運ぶ目的が特典の方になってしまう、という意味では本末転倒となってしまうので、ランダム封入特典自体が“悪いもの”として受け止めてしまう人もいるかもしれません。しかし現状では、こういった特典を用意すること自体のほうが多数派になってきています。
昨今のヒット映画では、初週末から入場者向けのプレゼントを用意するのは“定番”というほど当たり前になってきています。
当初からロングラン上映を想定している作品に関しては、公開前から何段階かに分けて特典を用意することが、あらかじめ発表されていることがあります。『果てしなきスカーレット』のように公開後に後発で配布が発表されるプレゼントも稀な例ではありません。ヒット作ほどリピーター施策としてどんどん入場者プレゼントを追加していく傾向にあります。
こういった入場者プレゼントはかつてはアニメーション映画などが主に取り組んでいたものですが、最近では実写映画などでもプレゼントの配布や、そのランダム封入の例を踏襲する作品も出てきています。
最近ではファン向けの商品として缶バッジやアクリルスタンドといった小物のアイテムの中身が分からない、いわゆる“ブラインド式”の商品も一般化してきました。そんな販売方式がすっかり定着した今となっては、入場者プレゼントをランダム封入にすること自体はむしろ“正攻法”な集客方法と化してきているといえるでしょう。
ただ忘れてはいけないのは、商品のメインはあくまでも“映画”の方であること。劇場版『名探偵コナン』シリーズなど作品によっては入場者プレゼントをあまり積極的に行わない例もあったりすることを思うと、そういった作品に対して「あえて作品で勝負にしにきている」という印象は出てきます。
それらが存在し続ける以上は、どうしても入場者プレゼント自体に“ずるい”という印象を持ってしまうことは仕方がないことなのかもしれません。
──果たして『果てしなきスカーレット』が入場者プレゼントを始めること自体が“どう受け取られるのか”。それ自体が注目点になるのかもしれません。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi
※サムネイル画像:『果てしなきスカーレット』メインカット (C)2025 スタジオ地図


