既に30作以上が作られてきている『映画クレヨンしんちゃん』シリーズ。その中でも近年、際立って目立った活躍をしている映画があります。それが1996年に公開された映画『クレヨンしんちゃんヘンダーランドの大冒険』です。四半世紀以上前の作品でありながら、なぜ今注目を浴びているのでしょうか。

◆『ヘンダーランドの大冒険』のグッズ展開が拡大中?

『クレヨンしんちゃんヘンダーランドの大冒険』の映画の活躍は、2025年現在、ある方面で大きな変化をしています。それが“グッズ展開”です。映画の公開時期からはかなりの時間が経過しているのですが、ここに来て急激に関連商品のバリエーションが増えています。

 ヘンダーランドの人気の片鱗が見えてきたのは2018年頃。このころには遊べる本屋として雑貨類を多数展開しているヴィレッジヴァンガードにてヘンダーランドをテーマにした限定商品の展開が始まっていました。当時は『クレヨンしんちゃん』の商品こそ多数展開されていましたが、過去の映画であり、なおかつ単作に対してスポットを当てた例としては珍しいものでした。

 2022年には『クレヨンしんちゃん』の映画シリーズに特化したグッズショップ“シネマパレード”がオープン。ここで多くの『映画クレヨンしんちゃん』グッズが展開されているのですが、中でも不定期にリリースせれる新商品の割合が大きいのは、やはりヘンダーランド! ついには2024年にヘンダーランドグッズの新商品を一挙に発売する「HENDER STORE」という企画が実施されました。

 その他、カプセルフィギュアなどの立体化にも恵まれ、直近では一番くじシリーズのラインナップにも登場が告知されたばかりです。

 グッズ展開はどんどん拡大し、旧作の映画でありながら日々露出が増えているのが現状です。

◆なぜヘンダーランドは人気なのか?

 なぜこれほどまでにヘンダーランドの人気が高まっているのでしょうか。

 第一に公開当時に本作を観ていた世代が購買層となっていることは大きいでしょう。『クレヨンしんちゃん』自体がキャラクターブランドとして現役なうえ、現在では女性人気も高く、キャラクター自体のポテンシャルが高いところに“その世代”に刺さる映画のグッズの需要が高まるのは必然といえます。ではなぜ、ピンポイントにヘンダーランドの映画だけがピックアップされるのでしょうか。

 理由の二つ目として、ヘンダーランドが本来の『クレヨンしんちゃん』のキャラクターの雰囲気に合致しているのも大きいでしょう。カラフルでかわいらしくポップなデザイン。それでいてどこかオシャレにも見える映画の雰囲気やキャラクターデザインは『しんちゃん』の作品性という点でも、グッズ展開のしやすさでいっても相性は良いです。

 映画シリーズの人気作では、過去の人気投票企画などで『嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』や『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』といった作品が上位に選ばれるのが定番ですが、これらの作品よりも優先して商品化されるのは、そんな作品性の違いでしょう。

◆唯一無二の存在、マカオとジョマ!

 人気の理由の三つ目として、忘れてはいけない最大の特徴が本作オリジナルのキャラクター“マカオとジョマ”の存在です。

 映画における敵のボスであり、作中でもとても強いとされている存在です。2人の名前を逆さかから読むと“オカママジョ”となるように、風貌や設定を考えると、現代ではかなり攻めたキャラクター設定なのですが、そんな2人がたびたびメインとなるグッズが登場しているのは人気が高いからこそ。

 実際映画を観ると分かるのですが、マカオとジョマは敵のボスでありながら、野原一家とも対等に戦おうと紳士的であり正々堂々としています。それでいてコミカルな動きや演出にも恵まれており、好きになってしまう要素にあふれています。

 そんな特異性からか最近では2人の作中のスクリーンショットがネットミーム的に広がるなど、現在では公式以外の方面でも存在感は波及しています。

 配信サービスの普及により、気軽にアーカイブにも手を伸ばしやすくなった今。ヘンダーランドの良さが再認識されていると言っても良いでしょう。

 『映画クレヨンしんちゃん』シリーズは、今年も夏に『映画クレヨンしんちゃん超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』の公開が発表されていますが、それに負けないくらい“現役”の作品としてヘンダーランドが今存在しているのです。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteではアニメ映画ラブレターマガジンを配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi

 

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