『クレヨンしんちゃん』の４つの裏話　「吉永先生には実は子供がいた!?」「またずれ荘が生まれた意外な理由」ほか

　初めて雑誌で連載されてから今年で35周年を迎える『クレヨンしんちゃん』。TVアニメも放送から33年を迎える長寿番組となっていますが、しんのすけに浪人生のいとこがいことや、吉永先生に子供が生まれていたなど、あまり知られていない裏話が存在します。

◆野原家に突然やって来た幻のいとこ──桜チル子とは？

　TVアニメ1995年2月13日放送の「受験生に気をつかうゾ」では、しんのすけのいとこ「桜チル子」が初登場しました。

　チル子はアニメオリジナルキャラクターで、大学受験に失敗し、浪人生として受験勉強のために野原家へやって来ました。

　秋田に住む祖父の銀の介からの「チル子を頼む」という手紙や、父親のひろしの「姪っ子のチル子ちゃん」との発言から、チル子は父方のいとこであることが分かります。

　チル子の明確な年齢は作中で明かされていないものの、見た目や浪人生という事実から、19歳前後と推測できます。

　2022年8月6日放送の「野原せまし登場！だゾ」では、ひろしの実の兄・野原せましが登場しますが、当時のせましは独身で子供もいなかったため、ひろしにはほかに「桜」姓の姉妹がいると考えられます。

　受験のストレスで腹痛に襲われていたチル子ですが、しんのすけのペースに巻き込まれるうちに緊張が解け、リラックスして受験でき無事大学に合格。

　後日、野原家に送られたお礼の手紙には、それまでのメガネ姿からコンタクトレンズに変えた顔写真が同封され、あまりの美しさに、しんのすけは見とれてしまいます。

　しかし、チル子はそれ以降、2025年3月現在に至るまで原作・アニメともに登場することはなく、1997年8月15日放送の「じいちゃんの家で遊ぶゾ」で、銀の介が妹のひまわりのことを「オラの2人目の孫」と発言していることから、存在がなかったことにされています。

◆ひまわりの名前は「ゆずほ」になる予定だった？──10万7135通の応募の中から選ばれる

　1996年10月18日放送の「赤ちゃんの名前が決まったゾ」で、しんのすけの妹は正式に「ひまわり」と名付けられました。

　作中ではしんのすけが名付け親となっていますが、実際は一般からの公募であり、10万7135通の応募の中から原作者・臼井義人先生が選んだことが、同日放送の「赤ちゃんの名前発表」で明かされています。

　アニメの中で野原家は名付けにかなり頭を悩ませており、同日放送の「赤ちゃんの名前を考えるゾ」で母親のみさえは「ゆずほ」という名前を希望していました。「赤ちゃんの名前が決まったゾ」で、それぞれが考えた名前を書いた半紙を紙飛行機にして飛ばしたときも、みさえは「ゆずほ」と書いていました。

　しかし、ひろしは「我が家のイメージとは違う」と却下し、しんのすけも「ローンが32年残ったおうちで、納豆食べながらゆずほはないよね」とコメント。

　ちなみに銀の介は「ぎん子」、祖母のつるは「かめ」、ひろしは「りえ」という名前を希望しており、幼稚園の友人であるネネちゃんは「ねねみ」、ボーちゃんは「スカーレット」を提案していました。

◆原作をリセットするために家を爆発──「またずれ荘編」が生まれた驚きの経緯

　2001では、野原家が爆発事故によって全壊する悲劇に見舞われます。

　野原家は格安アパートの「またずれ荘」に引っ越し、家を建て直すまで家族4人で暮らしていました。

　2016年6月出版のテレビ情報誌『TV LIFE』13号掲載の「25年目突入『クレヨンしんちゃん』の作り方　ムトウユージ監督インタビュー」で、同作の監督を務めるムトウユージさんが「またずれ荘編」について、「原作の臼井（儀人）さんいわく、「漫画アクション」から「まんがタウン」に連載が移行するときにリセットの意味を込めて描いたというようなことをおっしゃっていて、あぁ、なるほどなとは思ったんですけど、それでも爆発までさせちゃうかっていう（笑）」と語り、驚きの理由で家がなくなったことが明かされています。

　自宅の爆発から「またずれ荘」編はとても人気の高いシリーズの一つであり、『クレヨンしんちゃん』の公式YouTubeチャンネルで今年3月15日に公開された「【チャンネル2周年ありがとう！】2年間をぎゅぎゅっと詰め込んだ人気エピソード 8本一気見SP【クレヨンしんちゃん】《アニメ公式》」では、視聴者アンケートで2001年5月11日放送の「突然家が大変だゾ」が選ばれました。

　「またずれ荘」の住人たちとは、野原家が新しい家に戻ったあとも交流があり、アニメにも時々登場しています。

◆吉永先生は子供を生んでいた!? ──子供がアニメ未登場の理由は……

　2004年出版のコミックス第40巻（出版社：双葉社）で、しんのすけの担任・吉永みどりは第一子となる娘の「桃」を生みましました。

　産休に入った吉永先生の代理で、同年出版のコミックス第39巻（出版社：双葉社）からは熱繰椎造（あつくるしいぞう）という男性教諭が登場しますが、アニメ版では吉永先生が妊娠エピソードがカットされ、熱繰は「教育実習に来た22歳の大学生」という設定に変更されました。

　吉永先生の妊娠と子供を生んだことがカットされた理由は明かされていませんが、原作では吉永先生がみさえに借りた本を返しに野原家を訪れたときに陣痛が始まり、たまたま居合わせた「またずれ荘」の大家・大屋主代の助けを借りて無事に子供を生みます。

　アニメでは、子供に関するエピソードがないため、吉永先生と夫の石坂純一は新婚夫婦のままです。

〈文/花束ひよこ〉