『SLAM DUNK』に登場する湘北高校バスケ部の監督といえば、誰もが「白髪鬼」こと安西先生を思い浮かべるでしょう。しかし、実は安西先生のほかに、チームを支える「顧問」の先生が存在していたことはあまり知られていません。また、同様に「監督不在」で知られる強豪・翔陽高校にも、ベンチにひっそりと座る謎の顧問が存在します。
◆湘北には監督のほかに顧問が存在した! 翔陽にも……
湘北高校バスケ部の監督といえば安西先生ですが、実は別に「顧問」の先生が存在していたことは、記憶に残っていない読者も多いのではないでしょうか?
インターハイ直前、湘北バスケ部が静岡代表の常誠高校との合宿に向かうときのこと。安西先生は同行せず、花道の個人練習を指導するために神奈川に留まりましたが、代わりに選手たちの引率を任されていたのが「鈴木先生」でした。
鈴木先生は安西先生がメインのコマの後方に小さく描かれ、見た目はYシャツにネクタイ、メガネをかけた中年男性で、いかにも昭和生まれの教師という風貌。セリフもなく、ただただ安西先生から引率を頼まれている旨が紹介されただけの登場でした。
実はそんな鈴木先生ですが、湘北バスケ部の公式戦には過去にも同行していたことが判明しています。
安西先生が不在のままインターハイ出場を懸けた挑んだ陵南戦に、登場こそなかったものの、鈴木先生が選手たちを引率していたことが安西先生のセリフで明かされたのでした。
バスケットボールの指導ができる人かどうかは不明で、これまでの練習シーンや試合で登場することはなかった鈴木先生ですが、陰ながら顧問として湘北バスケ部を支え、安西先生の不在時も選手を引率するなど責任をまっとうしていました。その割にはあまりにも知名度が低く、もはやモブキャラ扱いの鈴木先生は、湘北バスケ部関係者の中では「忘れられた不遇の人物」だといえそうです。
一方、神奈川屈指の強豪校でありながら、正式な監督が不在で主将の藤真が選手兼監督を務めていた翔陽高校バスケ部。翔陽の監督不在という設定は、ファンの間でも『SLAM DUNK』最大の謎ともいわれていますが、実は顧問にあたる人物は存在していました。
名前や年齢などの素性は一切不明ですが、湘北戦では翔陽ベンチに顧問として座っており、湘北の鈴木先生と同じく見た目はYシャツにネクタイ、メガネをかけた髪の薄い初老の男性。こちらも絵に描いたようなモブキャラのおじさんという感じです。
彼を見た湘北バスケ部1年の桑田は、先輩・小暮に「翔陽の監督はあの人ですか? 小暮さん」「強豪の監督には見えないな……」と質問しており、小暮の返答からその先生は少なくとも昨年のインターハイ予選時より前から翔陽の顧問を務めており、バスケットについては素人であることも判明しました。
神奈川では海南に次ぐ強豪校であり、陵南の田岡監督に「牧と藤真の時代」とまで言わしめた翔陽高校バスケ部。それだけの実力を持ち、試合会場の客席一角を埋め尽くすほど多くの部員を抱える強豪校が、何年にもわたり正式な監督不在のまま、バスケについては素人の顧問を置いているというのは、あまりにも不可解であり『SLAM DUNK』最大の謎と言われるのもうなずけます。
翔陽バスケ部の象徴ともいえる選手兼監督の藤真。彼の存在を引き立てるために、対比として描かれたであろうバスケ素人の顧問先生。セリフもなく、あまりにも存在感が薄かった彼もまた『SLAM DUNK』屈指の不遇のキャラだといえるかもしれません。
──湘北の鈴木先生も、翔陽の謎の顧問も、試合中の華々しい活躍や熱い名セリフがあるわけではありません。
しかし、彼らのような「バスケ素人の顧問」という存在が描かれたことで、安西先生の卓越した指導力や、藤真健司という選手兼監督の異質さが、より一層際立つこととなりました。
強豪校の舞台裏を支える彼らの存在を意識して読み返してみると、また違った角度から『SLAM DUNK』の世界観を楽しめるかもしれません。
〈文/相模玲司〉
《相模玲司》
大学卒業後、編集プロダクションに入社。メンズファッショ誌の編集に従事したのち、フリーランスの編集・ライターとして独立。アニメ・漫画関連のムック本の制作や、週刊誌のWeb版でアイドルの取材記事やサブカルチャー記事の作成に携わる。
※サムネイル画像:Amazonより 『SLAM DUNK DVD第16巻(販売元:東映)』



