「常勝」の横断幕が印象的な王者・海南大付属のスコアラーにして神奈川インターハイ予選の得点王に輝いた神宗一郎。入部当時から彼が2年で迎えたインターハイ予選までの1年間には、ビジネスシーンで役立つ重要な出世術のヒントが隠されています。

◆逆境でも事実を冷静に受け止め「自分には何ができるのか?」を考える

 神は中学でセンターを務めていたものの、入部当時、名門に集う一流選手との競争ではまったく歯が立たず、高頭監督からは「センターはとうていムリだ」と選手としての「戦力外通告」を受けてしまいます。

 これから名門高校で練習を頑張ってレギュラーメンバーを勝ち獲ろうと希望にあふれた入部当時の選手にとっては、あまりにも残酷な通告です。会社員であれば「辞めようかな……」と思うのが自然なほどでしょう。

 しかし、神はそこで冷静に自己分析をして自分の長所と可能性を模索し、「アウトサイドシュート」に行き着きました。

 営業職を例に挙げると、クライアントとの商談が苦手でも、分析力に長けていれば営業部署内で活躍できる可能性が生まれますし、データ処理能力が高ければリサーチ部門のスペシャリストになれるかもしれません。

 冷静に自分を見つめ直し、「きれいなシュートフォーム」を見つけられた神は、海南のレギュラーになるための最初の壁を見事に超えることができました。

「センターは無理=選手として終わり」ではなく、「他にもっと自分に適した役割は無いか?」と悲観せず思考を止めないことが、戦力外を脱する第一歩だといえます。

◆自分の中の「原石」を見つけ徹底的に磨き上げる

 神は自身のきれいなシュートフォームを見事自分で見出しましたが、それだけでレギュラーになれるほど海南のレギュラー争いは甘くありません。それは社会でも同じです。

 第二のステップは、自分の中に見つけた「原石」を磨いていくための「たゆまぬ努力」が必要です。神の場合、チーム練習後のシューティング練習500本がその努力にあたりました。

 原作ではサラッと描かれていましたが、並大抵のことではありません。桜木がインターハイ前の1週間でミドルシュート2万本をやり遂げましたが、そのときはほかの練習はしない集中的なトレーニングでした。それでも体力自慢の桜木でさえ、一時は腕が上がらなくなるほど疲弊しています。

 神は誰に言われたわけでもなく、チーム練習後の疲労困憊の状態で黙々とシューティング練習をし、血の滲むような努力によりわずか1年で才能が開花しました。

 会社員でも同様ですが、周囲がまだ気付かない「才能=原石」の状態は評価の対象ではありません。磨いてこそ初めて輝きを放つ「スキル」になります。

 先ほど例に挙げた情報処理能力が長けている人であれば、パソコンの扱いはもちろん、エクセル関数などデータ処理におけるソフトウェアの扱いでは、部署内で1番を目指すことが重要です。

 人は2番目に信頼できる人には頼みません。1番になって初めて「あいつに任せれば大丈夫だろう」という信頼と需要が生まれることが多いといえます。

◆磨き上げたスキルを「どこで、どう生かすか?」を考える

 海南には神の1学年先輩に宮益というシューターがいましたが、彼は並みの運動能力と小柄な体型の選手です。

 一方神は元センターで身長は189cmと宮益よりもシューターとして有利でした。

 さらに、PG牧のペネトレイトから展開するオフェンスという海南の王道パターンにおいて、イン・アウトどちらからも攻められるシューターはチーム内でも需要の高いポジションでした。

 神がそこまで計算してシューターの道を選択したかは描かれていませんが、結果的にチームに必要な要素と彼のスキルが合致し、神のレギュラー入りはチームに大きく貢献しています。

 誰しも自分のやりたいことを仕事にできれば良いのですが、得てしてそれが組織に求められるとは限りません。一流の営業マンになって契約をバンバン獲ってくることを夢見ていても、現実は自分よりも高い交渉術を持っている同僚が大勢いて、到底敵わないと感じているかもしれません。

 そんな中、営業チーム内に情報処理に長けた人が1人もいなかったら? 情報処理がチームの課題解決に役立ちそうなら? 高い情報処理スキルを身に付ければ、必ずやチームに必要不可欠な人財となれるでしょう。

◆「影の努力」であっても必ず上司・指導者にアピールを!

 最後に重要なのは、磨いた自身のスキル、さらに才能を磨くための努力を上司やチームメンバーに確実に認知してもらうことです。

 神が毎日500本のシューティング練習をしていたことを高頭監督は知っていました。

 知られていないスキルは活かしてもらいようがありませんし、努力を知られることで続ける責任感が増し、緊張感と張り合いも生まれます。

 また、宮益もチーム内で信頼が厚かい選手でした。その理由は、高校で初心者からバスケットをはじめ、身体能力や体格にも恵まれていない不利な状況にもかかわらず、1年で2割も残らないと言われる海南の地獄の練習に耐え、ユニフォームを勝ち獲るまで努力を継続できたからです。

 人の心を動かすほどの努力は簡単ではありませんが、知ってもらえてこその努力でありスキルなので、「頑張ってさえいれば、きっと誰かが見ていてくれる」と悠長に構えず、アピールして確実に知ってもらうことが必要です。

「戦力外」となった人は特にですが、自分に上司や同僚の目を向けさせることこそ、「デキる男」になるための本当の第一歩と言えるでしょう。

 

 ──言うは易く行うは難し。神のように努力するのは簡単ではありませんが、本当に努力を継続できたなら、思いがけない自身の才能が開花するかもしれません。

〈文/lite4s 編集・監修/水野高輝(マネーメディア コンテンツディレクター)〉

 

※サムネイル画像:Amazonより

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