連載終了から28年が経った『SLUM DUNK』ですが、実は連載終了後に思わぬ形で回収されたキャラにまつわる伏線と、今なお謎のままになっている未回収の伏線があります。
◆牧の色黒にはワケがあった!? 驚異的なボディバランスの秘密も……
海南大付属の主将でありPGの牧伸一のトレードマークと言えばひときわ目立つ色黒の肌と、桜木花道からは「じい」と呼ばれるほどの「老け顔」ですが、実は色黒の裏にはしっかりとした設定がありました。
原作の連載終了から8年後の2004年12月に神奈川県立三崎高等学校校舎で行われた「1億冊ありがとうファイナル」にて、黒板漫画『スラムダンク-あれから10日後』が描かれましたが、そこで牧の趣味がサーフィンであることが分かりました。
インターハイから10日後とあって季節は夏だったため、海パン1枚で上半身は裸の状態で波乗りを楽しんでおり、初登場時にロッカールームで見せた黒光りする鋼のような肉体を作っている理由の一つが判明したのです。
高い波を颯爽と乗りこなしている様子から、かなりの上級者であることもうかがえますが、シュート時にブロックを受けながらもフォームをキープし得点する驚異的なボディバランスの秘密も、サーフィンで培われたものだったのかもしれません。
この黒板漫画では、週刊バスケットボールの記者である相田弥生と、新米記者の中村がインターハイ2位となった海南大付属の強さの秘密をさぐるという名目で牧をさがしているシーンから描かれていますが、サーフィンをしている牧を見て「とりあえず……黒さの秘密はつかんだわね……」とこぼすコマで終わります。
作者の井上雄彦先生は黒板漫画のメイキングで、牧については最初からサーファーという設定があったものの、本編でそのシーンを描くと浮いてしまうので使えなかったと語っており、設定が当初から決まっていたことも分かりました。
◆花道が見た夢は伏線? ラストシーンは予見されていた!?
花道はチームが静岡代表の常誠高校との合宿に行っている間、安西先生とミドルシュート2万本の強化練習に励み、#194~196の3話にわたってその奮闘が描かれました。
その最終話となる#196の冒頭で、花道は海南の牧、清田とともに視察に行った際に目撃した名朋工業との激戦の夢を見ますが、これが原作最後となった王者・山王工業との試合のラストシーンとあまりにも酷似しています。
問題の夢は残り試合時間5秒で1点差という緊迫した状況でタイムアウトを取っており、赤木が檄を飛ばすシーンから始まります。
試合再開後、流川がゴール切り込むもダブルチームに付かれ、シュートに行けず45度位置で待っていた桜木がパスをもらい、特訓していたジャンプシュートを放つところで夢から醒めます。
相手が名朋だという点と、森重のように花道のシュートブロックを試みた選手がいなかった点を除けば、流川にダブルチームでディフェンスが付いたこと、花道にパスが渡った時点で残り1秒程度だったことや、花道がパスをもらった位置など、多くの奇妙な一致があり、「まるで正夢では?」と思わせるものでした。
結果的にこれが伏線だったかは、井上先生の口から語られていませんが、すべては山王戦への布石だったと考えることもできるかもしれません。
読者の中でこの夢を伏線とする見方は多くはありませんが、X(旧Twitter)などのSNSでは「すべては山王戦のため」と考える意見もあるようです。
◆インターハイ優勝校はどこ? 井上先生「一応あるんです僕の中の答えが……」
『SLAMDUNK』の最大の謎ともいえるのが、「インターハイ優勝校はどこなのか?」ということでしょう。
原作では、神奈川県予選1位出場を果たした海南大付属が2位ということだけが描かれていますが、優勝校について語られることはありませんでした。
2018年にYouTubeチャンネル『朝日新聞デジタル』で公開された動画『スラムダンクとバガボンドの違いとは 岡田優介選手と井上雄彦さんが対談 (Bリーグ・主役に迫る)』において、対談相手のプロバスケットボール選手・岡田優介さんは、『SLAM DUNK』のインターハイ優勝校について質問し、「名朋工業」と予想を口にしますが、これに対して井上先生は「それはないんですよ」と否定しています。
続けて「(物語に)出てこないチーム」としており、「名朋優勝じゃヤダなって。まさに才能っていうか、そういう選手はやだなって」「一応あるんですよ僕の中の答えが」と、原作で描かれなかった大きなヒントを語っています。
これらの情報をもとに考えると、まず海南が2位ということは決勝で敗れたということになるので、海南をはじめ湘北、山王がいたトーナメント表の向かって左側のブロックの29校(トーナメント表の1~29番)ではないということになります。
つまりトーナメント表の右側(30~59番)の中の高校が候補となりますが、作中に登場した大阪の大栄学園、愛知の名朋工業、福井の堀、千葉の浦安は消え、それらの高校に敗れた千葉の富房、静岡の常誠、青森の町田三商も可能性はないので、23校に絞られます。
とはいえ、作中に登場した強豪校が序盤で敗退するとは考えにくいため、湘北のいた15校のブロックは愛和学園が、名朋と大栄のブロックは名朋が準決勝まで勝ち上がったとすると、優勝校はどの高校もいなかったトーナメント表の右上にあたる30~44番のブロックの15校のうちのどこかである可能性が高いと考えられます。
残念なことに、大会1日目終了後のトーナメント表は原作では左半分しか描かれておらず、これ以上の推測は難しいですが、SNSなどでは井上先生の出身が九州の鹿児島県であること、実際のインターハイでは連載当時、山王のモデルとなった秋田の能代工業が優勝、準優勝が福岡の福岡大学附属大濠だったことなどから、博多商大付属ではないか? という声もあるようです。
〈文/lite4s〉