SLAM DUNK』には、キャラ名の由来となった元ネタや、実在する人物をモデルに生み出されたキャラが登場しています。

◆三井の名前の由来はお酒だった?

 挫折からはい上がった天才プレーヤー三井寿は、『SLAM DUNK』の登場人物の中でも高い人気を誇るキャラクターです。実は、彼の名前には意外な由来があります。

 2008年6月に出版された『漫画がはじまる』(出版社:スイッチ・パブリッシング)の『第一章“SLAM DUNK”を語りつくす』によると、三井の名前は福岡県の株式会社 みいの寿という酒造メーカーが製造している「三井の寿」(みいのことぶき)という日本酒からとったそうです。

SLAM DUNK』の人気にあやかり、湘北バスケ部・三井の「14」番のユニフォームを模したラベルの「三井の寿 純米吟醸 山田錦 +14 大辛口」も販売されています。

『漫画がはじまる』によれば、三井はもともとただの不良役で登場させる予定でした。しかし、体育館での喧嘩シーンを描いているうちに、井上先生が三井に感情移入し、「元・中学MVP」という設定を加え、急遽湘北バスケ部に加入させることになったそうです。

 鹿児島県出身の井上先生にとって、同じく九州発祥の日本酒が名前の由来である三井は、特別な思い入れがあったのかもしれません。

◆河田美紀男には実在のモデルがいた?

 王者・山王工業バスケ部に所属する河田美紀男は、『SLAM DUNK』史上最大の巨漢で、兄は高校生No.1センターといわれる河田雅史です。恵まれた体格を持ちながらもゴール下シュートしか打てないなど、花道と同じく駆け出しの選手でしたが、実は彼のモデルになったといわれる人物がいます。

 20236月に『読売新聞オンライン』が報じた記事「父親はスラムダンク登場人物のモデル、本人も“忠実に再現”と苦笑……親子で闘志燃やす高校総体」によると、河田美紀男のモデルはかつて秋田の能代工業高校バスケットボール部の所属していた関口聡史選手だそうです。

 山王工業高校のモデルが、秋田県立能代工業高等学校(現・秋田県立能代科学技術高等学校)であることは有名です。当時の関口選手は、坊主頭や体形、プレースタイル、背番号が「15」など、河田美紀男と多くの共通点があります。

 関口選手は、高校時代(198789年)に5度の全国優勝を果たすなど、山王に負けない輝かしい実績を残しています。原作者・井上先生が能代の試合を観戦していたこともあり、関口選手は河田美紀男について「忠実に再現していただいている」と語っています。

◆堀田番長の名前は原作者・井上先生ゆかりの人物からとった? 

 湘北高校の番長でありながら、1年生の桜木軍団に歯が立たないなど、コミカルな描写の多い堀田徳男。三井のバスケ部復帰後は応援団を結成して試合に駆けつけるなど、友情に厚い一面も見せています。

 初期の『SLAM DUNK』には、ヤンキーや喧嘩漫画の要素が強く、体育館での三井一派の襲撃事件など過激なシーンも描かれていますが、堀田番長は、そんなヤンキー漫画要素を象徴する存在といえるでしょう。

 バスケ部への報復に固執する三井を見て、「三っちゃん本当は……」「バスケ部に戻りたいんじゃ……」と心情を察するなど繊細な一面も見せており、三井への深い友情を感じさせます。

 そんな名脇役の堀田には、実は名前の由来になった人物が存在します。『漫画がはじまる』の『第一章“SLAM DUNK”を語りつくす』で、原作者の井上先生が大学時代に古着販売店で働いていた人物からとった名前だと明かしています。

 なお、井上先生の過去の作品『カメレオンジェイル』(出版社:集英社)に収録されている『JORDANみてーに』にも、同名の人物が登場しています。

◆諸説ある山王・沢北のモデルとは……

 高校生No.1プレーヤーといわれ、湘北戦では凄まじいオフェンス力を披露した山王のエース・沢北栄治。原作者・井上先生の口から明確なモデルがいたと語られたことはありませんが、今なおSNSではさまざまな考察が飛び交っています。

 中でも有力なのが、連載当時、秋田県立能代工業高等学校でエースだった田臥勇太選手です。1996年に能代工業に入学し、現役高校生としては史上2人目の全日本候補選手に選出され、その後、2004年には日本人初のNBAプレーヤーとなりました。

 もう一人の有力候補は、連載当時NBAでオーランド・マジックに在籍していたアンファニー・デオン・ハーダウェイ(Anfernee Deon Hardaway、通称・ペニー)選手です。

 ペニー・ハーダウェイ選手は、2メートルを超える長身と、中からも外からもシュートを決めるオールラウンドなプレースタイルで「次期ジョーダン」と呼ばれていました。そのプレースタイルと髪型が沢北と似ていたことから、沢北のモデルではないかと囁かれるようになりました。

 明確なモデルがいたのかは不明ですが、連載時期と彼らの現役時期が一致することや、井上先生が大のバスケットボールファンであることから、少なくとも沢北のキャラ設定の参考となった可能性は高そうです。

 

 ──白熱した手に汗握る試合シーンが印象的な『SLAM DUNK』は、体形や身体能力が現実的な設定になっているのも大きな特徴です。

 モデルとなった人物や元ネタの存在が、『SLAM DUNK』のリアリティを高めているのかもしれません。

〈文/lite4s〉

《lite4s》

Webライター。『まいじつ』でエンタメ記事、『Selectra(セレクトラ)』にてサスペンス映画、韓国映画などの紹介記事の執筆経験を経て、現在は1980~90年代の少年漫画黄金期のタイトルを中心に、名作からニッチ作品まで深く考察するライター業に専念。 ホラー、サスペンス映画鑑賞が趣味であり、感動ものよりバッドエンド作品を好む。ブロガー、個人投資家としても活動中。

 

※サムネイル画像:Amazonより

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