赤木と小暮が引退した湘北バスケ部は、主将・宮城や流川、花道といった全国レベルの選手もいますが、選手層が薄く、全国制覇への道はかなり険しいと思われます。
控え選手に大きな期待はできませんが、意外なところに「救世主」となれそうな人物がいます。
◆宮城、流川、花道のポジションは?(三井離脱後)
冬の選抜までは三井が残るものの、選抜後の主力は宮城、流川、花道のみ。赤木、三井が抜けた穴をどのように埋めるかが課題です。ポジションを変更する必要があるかもしれません。
宮城は身長が低く、スピードと判断力が強みなので、そのままガードが適任でしょう。流川は「オフェンスの鬼」と言われるほど高い得点力を持っているため、SFのままが良さそうです。
問題は、赤木の引退によって不在になるスタメンのセンターです。控えの2年生の角田は、身長が180センチしかなく、山王・野辺を相手に手も足も出なかったなど、試合経験も不足しています。そこで、チーム内で一番背が高く、リバウンドに強い花道が必然的にセンターへ転向する可能性があります。
赤木、三井の“得点力”の穴を、どのように埋めるかも重要でしょう。三井の3Pは何度も勝利に貢献し、苦しい場面で逆転への希望を与えました。赤木も、インサイドで得点を重ねていたため、2人の穴は非常に大きいといえます。
スコアラーが流川のみになる湘北にとって、得点源の確保は不可欠です。また、花道は背中のケガの不安もあるため、インサイドのフォローができる長身の選手も必要でしょう。
◆湘北バスケ部の控え選手で「レギュラー有力候補」は?
湘北は、控え選手をあまり試合に起用していません。シックスマンの小暮以外はつなぎ程度のごく短時間でした。そのため、控え選手の得点シーンはほとんど描かれていません。
そんな控え選手の中で、インサイドの補充要員としてまず候補にあがるのは、センターの角田でしょう。しかし、試合形式の練習でも花道に圧倒されていたことを考えると、実力不足は否めません。
スコアラーの候補として、2年生の安田、潮崎もいます。しかし、豊玉戦にも出場した安田は、宮城より身長が低く得点力は期待できそうにありません。潮崎も、SGとして三浦台戦に出場しているものの、得点力は三井に遠く及びません。1年生の桑田、石井、佐々岡は全くの未知数です。
また、今の控え選手たちには、バスケの実力だけでなく、「度胸」や「勝利への断固たる決意」が足りないといえるかもしれません。たとえば、三井一派の襲撃事件で、安田は勇敢にも説得を試みましたが、三井に一撃で打ちのめされています。
一方、スタメンの3人は、不良相手に一歩も引かずに立ち向かうなど、精神的な強さを持ち合わせています。その気迫がインターハイという大舞台で発揮されたのは間違いないでしょう。
良くも悪くも「人が好い」控え選手の面々ですが、全国の強豪相手に物怖じせず戦えるのか不安が残ります。もしかすると、彼ら自身が一番不安を感じているかもしれません。
◆「桜木軍団」はまたも湘北バスケ部を救う?──4人のバスケ部入部の可能性
現状の部員で補えないなら、外から新たな戦力を呼び込むしかありません。花道がわずか数ヵ月で全国レベルの選手に成長したことを踏まえると、翌年のインターハイまでに、未経験者を育てることも不可能ではありません。
そこで白羽の矢が立つのが「桜木軍団」です。黒板漫画『あれから10日後-』では、花道がリハビリ中で試合観戦に行けず、ヒマを持て余している4人が描かれています。グチをこぼしたあと、4人が一斉に押し黙るシーンは、「全員がバスケ部への入部を意識している」と解釈することもできるでしょう。
特に水戸は、翔陽戦の翌日、花道から体育館に呼び出されたとき、遊びではあるものの3Pシュートを打っていたことから、バスケットへ興味を示しています。
野間、大楠、高宮も、花道の2万本のシュート練習に最後まで付き合うなど、バスケ部への入部には前向きといえそうです。
また、4人は上級生を相手にケンカするほどの度胸と実力を持っています。プレッシャーに負けない精神性の強さは、バスケット選手に必要な要素です。
桜木軍団が入部すれば、湘北バスケ部の控え選手に足りない要素が補われ、チームに良い影響を与えるでしょう。
◆水戸と大楠は「即戦力」レベル?
桜木軍団のリーダー格である水戸は、実は「バスケ部に入部する予定」だったという話があります。
原作者・井上雄彦先生が『バガボンド』の連載を開始したころ、お笑い芸人の今田耕司さんと東野幸治さんのラジオ番組『Come on FUNKY Lips』で、「連載当初は水戸洋平がバスケ部に加入する予定だった」と明かしています。
書籍『漫画がはじまる』(出版社:スイッチパブリッシング、2008年5月出版)で、急きょ設定を変更し、水戸の代わりに三井をバスケ部に入部させた経緯も語られました。
並外れた判断力と駆け引きの強さ、花道に次ぐケンカの実力を加味すると、水戸はバスケの才能も秘めているかもしれません。
また、大楠は4人の中で一番身長が高く、最終話の集合写真では、隣の角田とほぼ同じ身長でした。高さ不足が深刻な湘北バスケ部にとって、高身長で度胸があり、ゴール下で体を張れる選手は、喉から手が出るほど欲しいでしょう。
また、大楠は三井一派の竜を圧倒するなど、水戸に並ぶケンカの実力を持っています。ケンカの強さが運動能力に比例するなら、花道、水戸に次ぐ逸材だといえるかもしれません。
──残念ながら、新生・湘北バスケ部の選手層では、全国制覇は難しいでしょう。花道はまだリハビリ中で、あと1年すれば宮城、安田ら2年生も引退し、さらに厳しい状況になります。
桜木軍団がバスケ部に入部し、花道以上に努力をすれば、新生・湘北は全国制覇に大きく近づけるかもしれません。
〈文/lite4s〉
《lite4s》
Webライター。『まいじつ』でエンタメ記事、『Selectra(セレクトラ)』にてサスペンス映画、韓国映画などの紹介記事の執筆経験を経て、現在は1980~90年代の少年漫画黄金期のタイトルを中心に、名作からニッチ作品まで深く考察するライター業に専念。 ホラー、サスペンス映画鑑賞が趣味であり、感動ものよりバッドエンド作品を好む。ブロガー、個人投資家としても活動中。
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