『SLAM DUNK』では、全国制覇を目指す才能あふれる選手が数多く登場し、読者それぞれに「推しの選手」がいたものです。

 もし、湘北や海南といった高校の壁を越えた幻のチーム対決が実現したらどうでしょう? 実は、原作で描かれなかった「SLAM DUNK ALL STARS」という夢のようなチームが存在します。

◆幻のチーム「SLAM DUNK ALL STARS」とは? 

 『SLAM DUNK』が週刊連載されていた当時、『週刊少年ジャンプ』のために描き下ろされた混成チームが「SLAM DUNK ALL STARS」です。赤、白の2チームに分かれ、神奈川県内の強豪校から選抜された12人の選手が集結したチームが描かれました。

 赤チームには、湘北から三井、宮城、花道、陵南から魚住、福田、そして海南から信長が選出されています。

 一方、白チームは湘北から赤木、流川、海南から牧、神、陵南から仙道、そして翔陽から藤真という、これまた豪華な顔ぶれです。彼らのユニフォームには『SLAM DUNK』の略称と思われる「SD」と、「ALL STARS」という文字が刻まれていました。

 そうそうたるメンバーで、まさに神奈川県「オールスターズ」といえる夢のチーム編成ですが、残念ながら実際にこのチームの試合が描かれることはありませんでした。しかし、本当に両チームが対決していたら、結果はどうなっていたでしょう?

 原作で描かれた彼らの活躍や性格、実績をもとに、勝敗の行方を考察してみます。

◆「神奈川ベスト5」を擁する「白」チームが圧倒的に強い!

 原作者・井上雄彦先生がどのような意図でこのイラストを描いたのかは不明ですが、両チームの戦力を見ると、明らかに白チームに強力な選手が集中しています。

 白チームのメンバーをあらためて見てみると、6人中5人が「神奈川ベスト5」です。インターハイ神奈川県予選のMVPを含むもっとも活躍した5人の選手が白チームに名を連ねており、明らかにパワーバランスが偏っているように見えます。

 さらに、6人目の選手は、牧とともに神奈川の一時代をけん引した翔陽・藤真。

 ポジション別に見ても、Cに赤木、SGに神、Fに仙道、流川、PGに牧と藤真を擁する白チームは、まさに最強の布陣です。

 白チームに穴があるとすれば、花道や山王・野辺のようなリバウンダーがいないことぐらいでしょう。しかし、視野が広く、FPGもこなす仙道、湘北戦では赤木のマークもしていた牧がその穴も十分にカバーできるでしょう。

 はたして、赤チームに勝機はあるのでしょうか?

「赤」チーム勝利のカギを握るのは…… 

 赤チームの布陣を考えると、PGは宮城、SGは三井、Cは魚住、PF(リバウンダー)は花道、Fを福田、信長のどちらか、という構成が妥当でしょう。

 白チームには湘北、海南、翔陽のキャプテンがおり、赤チームは経験値では大きく劣ります。そんな赤チームが「大番狂わせ」を起こすには、花道のポテンシャルが爆発し、魚住と連携して赤木からゴール下の覇権を奪うことが不可欠です。

 そのため、花道のスタメン起用は必須です。陵南・福田は、仙道をライバル視しているため、対抗意識を燃やし実力以上の活躍を見せてくれるかもしれません。勝敗のカギを握るのは、花道、福田といえそうです。

 また白チームには、神奈川の得点王・神がいます。帝王・牧と連携した「海南の攻撃の型」からの3Pシュートに対抗するには、湘北の「とっておきの飛び道具」三井が必要です。

 一方、王者・海南から唯一編成された信長は、海南レギュラーとして全国2位になった実績はありますが、フリースローに課題を残すなど、粗削りな部分もあります。

 2メートルを超える魚住をブロックするなど、驚異的な身体能力と度胸を持ちあわせているものの、ALL STARS対決では、残念ながら出番は限られてしまうかもしれません。

◆監督次第で勝敗は分からない!?

 最強のメンバー対決とはいえ、彼らはまだ高校生。監督の采配次第で、試合の流れは大きく変わってくるでしょう。両チームが接戦になるためには、それぞれのチームで誰が指揮をとるのが最適でしょうか?

 圧倒的有利な白チームの監督は、やはり海南の高頭監督がまず候補にあがります。しかし、キャプテンに海南・牧が抜擢され、そこに海南・高頭監督を据えてしまうと、赤チームに勝ち目はほぼありません。

 湘北を山王戦で勝利に導いた安西先生も、2年生主体のチームで、海南、湘北をあと一歩のところまで追い詰めた陵南・田岡監督も、堅実に白チームを勝利に導く可能性が高いです。

 となると、もっとも面白いのは、翔陽で選手権・監督を務めた「藤真」を、ALL STARS対決でも思い切って白チームの監督に抜擢することではないでしょうか。これにより白チームにハンデが生まれ、赤チームにも勝機が見えてきます。

 そして、赤チームの監督には、海南を全国2位へと導いた高頭監督を据えるのが良いでしょう。安西先生に任せてドラマチックな采配も見てみたいところですが、「智将」の異名を持つ高頭監督の冷静かつ緻密な戦略は、選手の能力を最大限に引き出すはずです。

 藤真、高頭、2人の監督選抜により、戦略面では赤チームが有利となりました。偏ったパワーバランスが調整され、面白い試合が期待できそうです。

 

 ──原作終了から25年もの沈黙を破り、突如公開された映画『THE FIRST SLAM DUNK』で、ふたたび世界を席巻した『SLAM DUNK』。2作目があるとしたら、ぜひとも夢の「ALL STARS」対決を観てみたいものです。

〈文/lite4s〉

《lite4s》

Webライター。『まいじつ』でエンタメ記事、『Selectra(セレクトラ)』にてサスペンス映画、韓国映画などの紹介記事の執筆経験を経て、現在は1980~90年代の少年漫画黄金期のタイトルを中心に、名作からニッチ作品まで深く考察するライター業に専念。 ホラー、サスペンス映画鑑賞が趣味であり、感動ものよりバッドエンド作品を好む。ブロガー、個人投資家としても活動中。

 

※サムネイル画像:Amazonより

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