桜木花道が見た夢はラストにつながる伏線──?
連載終了から30年が経つ今も、『SLAM DUNK』をめぐる考察が尽きないのは、作中に張り巡らされた伏線の精巧さゆえでしょう。連載終了後に思わぬ形で明かされたキャラクターの設定、そして今なお謎のまま残されている伏線──それぞれ振り返ってみましょう。
◆牧の色黒にはワケがあった——驚異的なボディバランスの秘密も
海南大付属の主将でPGの牧紳一といえば、ひときわ目立つ色黒の肌と「老け顔」がトレードマークです。しかしその肌の黒さには、しっかりとした設定が存在していました。
原作連載終了から8年後の2004年12月、神奈川県立三崎高等学校の校舎で行われたイベント「1億冊ありがとうファイナル」において、黒板漫画『スラムダンク—あれから10日後』が公開されました。そこで初めて、牧の趣味がサーフィンであることが明かされたのです。
インターハイから10日後という設定で季節は夏。海パン1枚で波乗りを楽しむ牧の姿が描かれ、初登場のロッカールームシーンで披露された黒光りする鋼のような肉体の理由が、ようやく腑に落ちた読者も多かったはずです。
高い波を颯爽と乗りこなすその姿は、かなりの上級者であることをうかがわせます。ブロックを受けながらもフォームを崩さずに得点してきた驚異的なボディバランスも、サーフィンで磨かれたものだったのかもしれません。
作者の井上雄彦先生は黒板漫画のメイキングで、「牧については最初からサーファーという設定があったが、本編で描くと浮いてしまうので使えなかった」と語っており、連載開始当初から構想されていたことが分かります。週刊バスケットボールの記者・相田弥生が牧を探しあて、サーフィンしている姿を目にして「とりあえず……黒さの秘密はつかんだわね……」とこぼす場面で黒板漫画は締めくくられています。
◆花道が見た夢は「正夢」だった? ラストシーンとの奇妙な一致
花道がミドルシュート2万本の強化練習に励む3話(#194〜196)の最終話冒頭、花道は名朋工業との激戦の夢を見ます。牧・清田とともに視察したあの試合を夢で再体験するシーンですが、これが原作ラストとなった山王工業との決戦シーンと、驚くほど似通っているのです。
夢の中では、残り5秒・1点差でタイムアウト。赤木が檄を飛ばし、試合再開後に流川がゴールに切り込むもダブルチームでつぶされ、45度の位置で待っていた花道にパスが渡り、特訓のジャンプシュートを放つところで目が覚めます。
相手が名朋だった点と、花道のシュートをブロックしようとした選手がいなかった点を除けば、流川へのダブルチーム、花道へのパスが渡った瞬間の残り時間、花道のポジションなど……山王戦のラストと重なる要素が少なくありません。
井上先生自身がこれを伏線と語ったことはありませんが、「すべては山王戦への布石だったのでは」と読む向きも、SNS上では一定数存在しています。意図的か偶然かは今も謎のままですが、読めば読むほど引っかかる場面であることは確かです。
◆インターハイ優勝校はどこ? 井上先生「一応あるんですよ、答えが」
『SLAM DUNK』最大の謎といえば、インターハイの優勝校でしょう。原作では、神奈川県予選1位の海南大付属が全国2位だったことだけが示され、頂点に立ったチームは明かされないまま連載が終わっています。
2018年にYouTubeの『朝日新聞デジタル』で公開された、プロバスケットボール選手・岡田優介さんとの対談動画で、岡田さんが「名朋工業では?」と予想すると、井上先生は「それはないんですよ」とはっきり否定。「物語に出てこないチーム」としたうえで、「名朋優勝じゃヤダなって。まさに才能っていうか、そういう選手はやだなって」と語り、さらに「一応あるんですよ、僕の中の答えが」と明かしました。
このヒントをもとに絞り込むと、海南が2位=決勝で敗れているため、湘北・山王らと同じトーナメント左側の29校は候補から外れます。右側の30~59番の学校が候補となりますが、作中に登場した大栄学園・名朋工業・堀・浦安、さらにそれらに敗れた富房・常誠・町田三商も消えます。
各ブロックを整理すると、湘北のいたブロックは愛和学園が、名朋・大栄のブロックは名朋が準決勝まで勝ち進んだと考えた場合、優勝校は作中に一度も登場していないトーナメント表右上(30~44番)のいずれかという可能性が濃厚です。
SNS上では、井上先生の出身が鹿児島であること、連載当時の実際のインターハイでは秋田の能代工業が優勝・準優勝が福岡大学附属大濠だったことなどから「博多商大付属ではないか」とする声もあります。正解は今も、井上先生の胸の中だけに──。
〈文/相模玲司〉
《相模玲司》
大学卒業後、編集プロダクションに入社。メンズファッショ誌の編集に従事したのち、フリーランスの編集・ライターとして独立。アニメ・漫画関連のムック本の制作や、週刊誌のWeb版でアイドルの取材記事やサブカルチャー記事の作成に携わる。
※サムネイル画像:Amazonより 『「PLUS/SLAM DUNK ILLUSTRATIONS 2」(出版社:集英社)』



