<PR>
<PR>

<この記事にはTVアニメ・原作漫画『SPY×FAMILY』のネタバレが登場します。ご注意ください。>

 ヨル・フォージャーが<いばら姫>として所属している「ガーデン」は、秘密警察と同じく裏から「東国(オスタニア)」の治安を守っています。しかし、「ガーデン」を統率する<店長>の言動からは、必ずしも「東国(オスタニア)」の平穏を第一に考えているとは思えません。しかも彼が抱く思想次第では、ロイドのいる「WISE」が新たな標的になる可能性も見えてきます。

<PR>

◆「ガーデン」のモデルは実在した組織?

 「ガーデン」の全容はいまだに謎に包まれています。現状分かっているのは、「ガーデン」があくまでも非合法の組織であること。構成員は<店長>をトップとし、<部長>のマシュー・マクマホンを管理職に、<いばら姫>のヨル・フォージャーなど複数の実行部隊が所属していることくらいです。

 そして、第115話では「ガーデン」への依頼主として「国家保安局」(以下、秘密警察)のヴィルカー局長など一部の人間が関与していることが明かされました。

 『SPY×FAMILY』では、東国や秘密警察といい、実際の国や組織をモデルにしていると推察されています。このことから、「ガーデン」を考察する上で、実在した組織がヒントとなるかもしれないのです。

 実は、ネット上では「ガーデン」のモデルとなったといわれる組織があります。それが、1900年代前半にアメリカで活動していた組織「マーダー・インク」。「マーダー・インク」は暗殺任務を請け負っていましたが、あくまでもビジネスの範囲で「決して民間人を巻き込まない」という厳しいルールの下で活動していたとされています。

 面白いのは、彼らが使用していた武器です。基本的には足のつかない武器を選び、特にアイスピックやロープなどが好まれたといわれています。<いばら姫>も、武器にはアイスピックと形状が似ているスティレットを使っていますし、<部長>のマシューも豪華客船では肉弾戦以外にロープを使用している描写がありました。

 また、「マーダー・イング」の仕事のほとんどは国の上層部からの依頼で、内容は反逆者の粛清や政府密告者の口封じが主だったといわれています。これは、「ガーデン」が秘密警察から任務の依頼や斡旋を受けている構図と共通しています。

 このほかにも任務の伝達に電話を使っていたことなど、設定として似ている点があるのです。これらの共通点から考えても、「ガーデン」は「マーダー・インク」から着想を得たとしても不思議ではないでしょう。

 しかし、そうなると気になる点がいくつか出てきます。まずは、反逆者の粛清がビジネスに入るなら、真っ先に思い浮かぶターゲットが「WISE」である点です。「WISE」は秘密警察の最大の敵でもあり、その秘密警察から仕事の依頼を受けている「ガーデン」が、いずれ「WISE」を任務の標的とする可能性も十分に考えられます。

 また、最終的に「マーダー・インク」の幹部全員が処刑されています。そうなると「ガーデン」所属メンバーたちも同じような結末を迎えるのかどうかが気になってきます。そもそも他人の命を奪ってきた人間が、最終的に自分たちだけ幸せをつかむのかという疑問が残るでしょう。

 「マーダー・インク」との共通点は、ヨルたちフォージャー夫妻に不穏な未来を予感させるのではないでしょうか。

<PR>

◆「ガーデン」の真の目的は「東国」の平和ではない?

 「マーダー・インク」とは別に、「ガーデン」と「WISE」が敵対関係に発展する根拠がもう1つ考えられます。まず「ガーデン」の目的は、東国(オスタニア)に仇なす国賊を粛清すること。そのために「ガーデン」は、秘密警察の依頼に協力しているはずだと考えられています。

 しかし「ガーデン」を統率する<店長>は、第115話でヴィルカー局長に対し、「我々ガーデンが仕えるのはこの国であって、政治屋の手先になるつもりはありません」と牽制していました。実際、ヴィルカー局長が持ってきた首相の依頼も<店長>が断っています。つまり、厳密にいうと「ガーデン」は国家権力者の言いなりではなく、自らの価値観で「国」を守ろうとしていることが分かります。

 ここで注目したいのは、「ガーデン」の全決定権を<店長>が握っている点です。このことから、「ガーデン」の目的は<店長>の目的、「ガーデン」の敵は<店長>の敵と言い換えられるでしょう。そのうえで、<店長>の言う「国」が「東国(オスタニア)」をさしていない可能性が高いのです。もちろん、「西国(ウェスタリス)」でもありません。ヴィルカー局長との会話から察すると、恐らく東西分裂前の旧「帝国」に対して絶対的な忠誠心を持っていると推察できます。

 その証拠に、ヴィルカー局長が「懐古趣味だ」と言った<店長>の私室は、皇帝陛下が王妃のためにあつらえた部屋を再利用していると明かしています。さらに<店長>は数ある依頼の中から、旧「帝国」関連の処刑任務のみを引き受けていました。つまり、<店長>の目的は、「東国(オスタニア)」の治安維持ではなく、自らが忠誠を誓った、「東国」「西国」の垣根がなかった旧「帝国」時代の治安維持なのかもしれません。

 一方で「WISE」の目的は、戦争が再び起きないように未然に防ぐことです。そしてロイドは、東西の垣根をなくした平和を新たな未来につなげようとしています。一見すると垣根をなくした国家という点で、<店長>の目的と「WISE」の目的は似ているように思えます。

 しかし、「東国(オスタニア)」と「西国(ウェスタリス)」が1つの「国家」となったとしても、それは決して<店長>が忠誠を誓った旧「帝国」に戻るわけではないのです。仮に<店長>の本当の目的が旧「帝国」復活というナショナリズムだったとしたら……?

 <店長>は常々ヨルに対して「この世界が美しくあり続けるために」と言って「剪定」任務を任せています。美しい世界が旧「帝国」の礎の存続であった場合、新しい文化が融合した世界を、果たして<店長>は受け入れることはできるのでしょうか? もし、それが旧「帝国」とは真逆の国家だったなら、両者の対立は必然となるのかもしれません。

 

 ──「ガーデン」と「WISE」がぶつかった場合、もちろん<黄昏>であるロイドと<いばら姫>であるヨルは、相対する立場になってしまいます。そのとき、それぞれが「忠誠を誓った組織」か「仮初の家族」か、どちらかの選択を迫られることになるでしょう。

〈文/fuku_yoshi〉

《fuku_yoshi》

出版社2社で10年勤め上げた元編集者。男性向けライフスタイル誌やムックを中心に、漫画編集者としても経験を積む。その後独立しフリーライターに。現在は、映画やアニメといったサブカルチャーを中心に記事を執筆する。YouTubeなどの動画投稿サイトで漫画やアニメを扱うチャンネルのシナリオ作成にも協力し、20本以上の再生回数100万回超えの動画作りに貢献。漫画考察の記事では、元編集者の視点を交えながら論理的な繋がりで考察するのが強み。最近では、趣味で小説にも挑戦中。X(旧Twitter)⇒@fukuyoshi5

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「SPY×FAMILY ANIMATION ART BOOK」(出版社:ウィットスタジオ)』

<PR>
<PR>

※タイトルおよび画像の著作権はすべて著作者に帰属します

※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

※無断複写・転載を禁止します

※Reproduction is prohibited.

※禁止私自轉載、加工

※무단 전재는 금지입니다.