『SPY×FAMILY』のアイコン的な存在であるアーニャですが、作中で最も謎に包まれているキュラクターの1人です。勉強ができないはずのアーニャは、なぜ古語だけトップクラスの成績なのか? 実の母親の安否はどうなっているのか? 孤児院に来る前はどこにいたのか? そもそも出身はどこなのか?
謎の数々は、アーニャの知られざる過去につながっています。実はアーニャの過去を知るヒントは意外にも彼女のしゃべり方にあると考えられます。
◆アーニャのしゃべり方が舌足らずな理由
「おはやいます(おはようございます)」「おでけけ(おでかけ)」など、ところどころ舌足らずなしゃべり方をするアーニャ・フォージャー。アーニャらしい独特でキュートな言い回しなのですが、漫画やアニメ特有のキャラの印象づけのためのしゃべり方とは違うように思えます。
実際、同学年のダミアン・デズモンドやベッキー・ブラックベルたちのしゃべり方と比べてみても、アーニャだけ明らかに異質なのが分かるでしょう。実は、アーニャのしゃべり方が独特な理由については大きく2つの要因が考えられます。
まず1つ目は、アーニャの実年齢がダミアンたちよりも歳下である可能性です。アーニャは「オペレーション<梟(ストリクス)>」に際し、ロイドが孤児院で見つけた子供でした。実はこのとき、ロイドの見立てでは「この子はどう見ても4、5歳かそこら……」とアーニャの年齢を推測しています。
イーデン校の就学年齢6歳の子供が任務で必要だったので、当初ロイドはアーニャ以外の子供を探そうとしていました。そんなロイドの心を読んだアーニャが「むっつ」と咄嗟に自分の年齢を偽った可能性も考えられます。つまり、アーニャのしゃべり方は幼さゆえにきちんとした言葉使いがまだできていないと解釈できるのです。
そして2つ目は、孤児院に来るまでアーニャが「東国(オスタニア)」の公用語に触れていなかった可能性です。そもそもアーニャの出自は一切明かされていません。実はアーニャは「東国(オスタニア)」出身ではないという可能性が考えられます。その根拠として注目したいのが、『少年ジャンプ+』掲載の「番外編11」のエピソードで描かれたアーニャのスペルミス……。
この回では部屋にかけるドアプレートにアーニャが自分の名前を彫るのですが、そのスペルが違うとロイドに指摘されてしまいます。この時アーニャが彫ったスペルは「A・N・I・A」。しかし、ロイドが指摘した正しいスペルは「A・N・“Y”・A」だったのです。
アーニャはいつもと違い、何かを言いかけるもしばらく考えて「わかった」と素直にロイドに言われた通りスペルを書き直します。参考までに現実の言語に置き換えると、同じ「アーニャ」という読み方で「ANYA」と表記するのはドイツ語やロシア語、一方「ANIA」と表記するのはポーランド語となるそうです。
ここで重要なのは、どちらも同じ読み方をするのに、国の公用語によってスペルが異なってくる点です。実はこの「ANIA」のスペルミス、コミックスでは序盤から入試の答案やネームプレートなどで記載されていました。また、この回が『少年ジャンプ+』に掲載された時の編集部の煽り文は「己が名にふと心よぎる」となっています。
これらのことから、アーニャのスペルは彼女の過去に繋がる重大な伏線である可能性が非常に高いのです。そうなると、アーニャの出身は「ANYA」のスペルである「東国(オスタニア)」ではなく、「ANIA」が正式表記となる国ではないかと推察できます。
◆アーニャが古語だけは得意な理由
アーニャの出自に関する伏線はもう1つあります。それが、古語の実力です。アーニャは勉強全般が苦手で所属も最低クラスです。しかし、なぜか古語だけは正答率が高く、まさかの学年次席として<星(ステラ)>を獲得するほど長けています。
この理由については、幼少期から古語に触れる環境で生まれ育ったことが随所に示唆されています。事実、コミックス第42話でロイドも「生まれ育った環境で学んだものか?」と考察しています。
そうなると、さきほど触れた「ANIA」のスペル自体が実は古語である可能性も考えられるでしょう。これについてもロイドは「今でも古語を母国語としている国なんて……」と含みを持たせており、古語が得意な理由=母国語だからという解釈もできます。もしかすると、アーニャの出身地が、今後「オペレーション<梟(ストリクス)>」を成功に導く伏線となってくるのかもしれません。
◆アーニャの実の母親は今どこにいるのか?
アーニャの過去を知る上で、切っても切り離せないのが超能力を研究していた施設と、彼女の実の母親の存在です。アーニャが実の母親を覚えていることが示唆されたのは、コミックス第5話でのイーデン校入学審査の面接の描写です。
アーニャはロイドのことを「ちち」、ヨルのことを「はは」と呼んでいますが、面接で実の母親のこと聞かれた際、「ママ」と呼び方が変わっています。そんなアーニャの母親についても、現在のところ一切の情報が隠されています。
ただし、実の母親のことを思い浮かべてアーニャが涙していることと、ロイドが「孤児院にいた経緯はわからんがこいつの実の親は恐らくもう……」と察していることから、アーニャの母親の生存は絶望的と考えられています。
しかしコミックス第111話で、顔は隠されているものの夢の中でアーニャの母親が登場しました。この回で気になるのは、母親が「私たちも空を飛べたらいいのにね……」と語っていたことです。まるで、自分たちが鳥カゴに囚われているかのような言い回しではないでしょうか。
実際、アーニャはかつてとある研究施設の被験体“007”だったことが物語序盤から明かされています。そして、その研究施設が行なっていたのが、プロジェクト<アップル>であった可能性が非常に高いのです。プロジェクト<アップル>の目的は、軍事利用できるIQの高い動物を生み出すコト。
つまり、実の母親も被験者であったと考えられ、アーニャのように超能力を持っていた可能性も必然的に高くなります。そうなると簡単に処分するとは考えられず、現在も生存している可能性が高くなるのではないでしょうか?
研究自体は旧政権が崩壊した時点で止まっているとされていますが、コミックス第78話では研究チームの生き残りがいることが匂わされています。つまり、アーニャの母親は生存しており、今なお組織によって囚われている可能性も十分考えられるのです。もし、アーニャの母親が再登場することがあれば、その時こそアーニャの過去がすべて明かされるのではないでしょうか?
──明るい性格でいつも笑顔なアーニャですが、意外とハードな過去が隠されていそうです。その中でも、出身地に関わる情報は今後物語の根幹に関わる伏線と考えられ、注目すべき点の1つとなってくるかもしれません。
〈文/fuku_yoshi〉
《fuku_yoshi》
出版社2社で10年勤め上げた元編集者。男性向けライフスタイル誌やムックを中心に、漫画編集者としても経験を積む。その後独立しフリーライターに。現在は、映画やアニメといったサブカルチャーを中心に記事を執筆する。YouTubeなどの動画投稿サイトで漫画やアニメを扱うチャンネルのシナリオ作成にも協力し、20本以上の再生回数100万回超えの動画作りに貢献。漫画考察の記事では、元編集者の視点を交えながら論理的な繋がりで考察するのが強み。最近では、趣味で小説にも挑戦中。X(旧Twitter)⇒@fukuyoshi5
※サムネイル画像:Amazonより 『「TVアニメ『SPY×FAMILY』公式スタートガイド ANIMATION×1st MISSION」(出版社:集英社)』





