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 フォージャー家の愛犬ボンド。その正体は、未来を予知する超能力犬です。しかし彼が見る未来は、なぜかロイドが命を落とす瞬間など、不吉で最悪なものばかり。彼の能力には、何か特別な「ルール」があるのではないでしょうか。

 ボンドの未来予知は、アーニャの「心を読む力」と組み合わさることで初めて完成する、二心一体の“安全装置”なのかもしれません。

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◆「真っ黒な未来」の意味──ボンドの予知能力の“限界”と“特性”

 ボンドの未来予知は、一見すると非常に強力な能力に思えます。しかし、その実態は多くの「限界」を抱えた、とても不便で使いこなしが難しいものなのかもしれません。

 犬である彼は、予知を言葉で伝えられず、アーニャのような読心術が可能な者がいなければ意味をなしません。さらに、いつ、どのような未来が見えるかも完全に気まぐれで、数分後のことから数日後のことまで、タイミングはバラバラ。時には、今日の夕飯のメニューといった、どうでもいい情報まで見えてしまうのです。

 とくに彼の能力の限界を象徴しているのが「未来が真っ黒になる」ことについての、彼自身の解釈です。彼は、その真っ黒な未来を「何も見ることができない=自分が命を落とすこと」だと考えています。これは、彼が「自分が命を落とす」という絶対的な結末は予知できても、その過程や詳しい理由までは理解できない、という能力の不完全さを示しているのかもしれません。

 しかし、これほど不完全なはずの能力が捉える重要な未来は「ロイドが爆弾で命を落とす」など、身近な者の“命”に直結する危機ばかりでした。これは、たんなる偶然なのでしょうか。

 これらの描写から、ボンドの予知はランダムではなく、フォージャー家に迫る「回避可能な危機」を優先的に見せる“警報装置”のようなものである可能性が高いと考えられます。

 つまり、ボンドの未来予知は不完全ですが、その中に「身近な者の危機を知らせる」という明確な“特性”が隠されているといえます。彼は、まるでフォージャー家の平和を守るために生まれてきたような存在だといえるでしょう。

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◆なぜ「アーニャがカギ」なのか?──二心一体の“未来回避術”

 ボンドの予知が危機を知らせる“警報装置”なら、なぜその警報は犬である彼に与えられたのでしょうか。その答えは、彼がフォージャー家に来るきっかけとなった、あの爆弾テロ事件の中に隠されているのかもしれません。

 あのとき、ボンドは「ロイドが命を落とす」未来を予知しましたが、犬である彼一人の力では未来を変えられませんでした。彼には、状況を判断する洞察力と、未来を変える実行能力が欠けていたといえます。

 その状況を覆したのが、アーニャの存在でした。アーニャは心を読む力でボンドの予知を理解し「ちちがしぬ」危機を回避するため行動します。ボンドの予知とアーニャの読心術。二つの力が一つになったことで、初めて「未来を変える」という奇跡が可能になったといえます。

 ここから、ボンドの能力の本当の仕様が見えてきます。なぜ彼の予知は「回避可能な危機」ばかりを映すのか。それは、彼の能力がアーニャという“最高の相棒”の存在を、最初から前提として設計されているからなのではないでしょうか。

 ボンドが見る「最悪の未来」とは「アーニャが何もしなければ起こる未来」の映像と考えられます。それはアーニャに行動を促す引き金として機能しているのかもしれません。アーニャが未来の意味を読み取り、行動することで、予知は「回避された未来」へと変わるといえるでしょう。

 つまり、ボンドの予知は単体では完成しない、アーニャとの“コンビ技”といえます。ボンドが「危機」を予知したものをアーニャが「解読」し、家族が「実行」する。この三位一体の連携こそが、フォージャー家を救う「未来回避術」の正体であり、ボンドの能力がアーニャなくしては成り立たない理由なのかもしれません。

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◆プロジェクト<アップル>の真実──“番犬”を生み出した目的とは

 アーニャの心を読み危機を知らせるボンドと、ボンドの予知を理解し未来を変えるアーニャ。まるで互いのために生まれてきたような奇跡のコンビですが、この出会いが偶然ではなかったとしたらどうでしょうか。その可能性を示唆するのが、謎の研究施設「プロジェクト<アップル>」です。

 原作の回想では、アーニャとボンドがともに「プロジェクト<アップル>」の被験体であったことが描かれています。アーニャは<被験体007>、ボンドは<被験体8号>と、連続した番号が与えられていました。さらに、二人の記憶に登場する研究者たちがとても似た顔をしている点から、彼らが同じ場所で、関連性の高い実験の対象だった可能性が高いと考えられます。ここから、プロジェクト<アップル>の本当の目的が見えてきます。

 その目的とは、アーニャという強力な超能力者を生み出すこと、そして同時に、彼女の力が暴走したり、彼女自身が危険に晒されたりしないよう、未来を予知し彼女を守る“安全装置”として、ボンドを生み出すことだったのではないでしょうか。

 アーニャの力は、使い方を間違えれば国家の運命さえ揺るがしかねません。研究所の科学者たちは、その危険性を理解していたからこそ、彼女を正しく導き、守る存在として、忠実な「番犬」のような能力を持つボンドをデザインしたのかもしれません。

 つまり、アーニャとボンドの出会いは偶然ではなく、プロジェクト<アップル>によって運命づけられた、必然の出会いだった可能性が高いです。

 ボンドは、アーニャという強力な超能力者を生み出してしまった科学者たちが、最後の良心として遺した「安全装置」であり、彼女を良き未来へと導く「道しるべ」。彼はその壮大な目的のために、この世に生み出された存在なのかもしれません。

 

 ──ボンドが見る「最悪の未来」の謎。彼が見る不吉な未来は、アーニャに行動を促し、フォージャー家に迫る危機を回避させるための、“警報”だったのかもしれません。そして二人の出会いは、プロジェクト<アップル>に仕組まれた運命である可能性が高いです。

 心を読む少女と、未来を見る犬。この奇跡のようなコンビの存在が、偽りの家族を、そして世界の運命を、少しずつ良き未来へと導いていくのでしょう。

〈文/凪富駿〉

《凪富駿》

アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。特にジャンプアニメに関する考察記事の執筆を得意とする。作品とファンをつなぐ架け橋となるような記事の作成がモットー。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『Animage(アニメージュ) 2023年 11 月号(出版社:徳間書店)』

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