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<この記事にはTVアニメ・原作漫画『SPY×FAMILY』のネタバレが登場します。ご注意ください。>

 アーニャとボンドを生んだ謎の研究計画、プロジェクト<アップル>。なぜその名前は“林檎”だったのでしょうか。このかわいらしい名前にこそ、旧東国政権の恐るべき野望が隠されているのかもしれません。

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◆「知恵の実」と「禁断の果実」──“林檎”に込められた二つの意味

 プロジェクト<アップル>という、一見かわいらしい名前。なぜ研究者たちは、この果物の名を極秘の研究計画に名付けたのでしょうか。その答えは、多くの神話や伝承の中で、“林檎”に与えられてきた特別な意味を読み解くことで見えてきます。

 まず、もっとも有名なのが、旧約聖書の「知恵の樹の実」としての林檎です。神から禁じられていた知恵の樹の実を、アダムとイヴが食べてしまう。結果、二人は善悪を知る「知恵」を手にしますが、代償として楽園を追放されます。この物語から分かるように「林檎」とは古くから「人間が手にしてはならない知識」の象徴として描かれてきました。

 アーニャが持つ、人の心を読む力。これは、まさに他者の思考という「知恵」を盗み見る力です。プロジェクト<アップル>という名前は、この研究が「禁断の知恵」を生み出すことを、最初から示していたのかもしれません。

 そして、この「知恵の実」は、同時に「禁断の果実」とも呼ばれます。なぜ知恵を得ることが“禁断”なのか。それは、人がそれを手にすることで神の領域を侵し、世界の秩序を乱してしまう危険な力だからです。

 人の心を読む力もまったく同じといえます。嘘や建前、優しい秘密といった、人間社会を成り立たせるルールを、心を読む力はすべて無効にする可能性があります。それは個人の心という最後の聖域を土足で踏み荒らす行為に他なりません。まさしく、人間が手にしてはならない「禁断の力」といえるでしょう。

 つまり、プロジェクト<アップル>という名前は「人の心を読み解く」という“知恵”と、「神の領域を侵す」という“禁断”、この二つの意味が込められた象徴的な命名だったと考えられます。研究者たちは、自分たちが手を染めていることの重大さと危険性を、自覚していたのではないでしょうか。

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◆アーニャという“禁断の果実”──力がもたらした楽園追放

 プロジェクト<アップル>が生み出した、人の心を読む力。それは「禁断の果実」である可能性が高いです。そして、その力を宿したアーニャ自身もまた、この悲しい果実の宿命から逃れることはできませんでした。

 まず思い出したいのは、アーニャが自らの能力を知られることを恐れている事実です。その原因は、研究所や過去の里親のもとで、その力が「不気味だ」と気味悪がられた、辛い経験にあります。彼女の心には「この力を知られたらまた捨てられる」という深いトラウマが刻まれているといえます。

 この姿は、神話で「知恵の実」を食べ、自らが裸であることを知ったアダムとイヴが、体を隠した場面と似ているようにも見えます。アーニャもまた、禁断の知識である「人の心」を知ってしまったがゆえに本当の自分を隠し、自分の殻に閉じこもらざるを得なかったのかもしれません。

 そして、その悲劇は彼女の孤独な半生にはっきりと影を落としています。フランキーの調査によれば、アーニャはフォージャー家に来るまで「里親を4回、孤児院を2回」も転々としていました。彼女は、新しい家族という「楽園」を見つけるたびに、その力が原因で追い出され、孤独へと突き落とされてきたのです。

 これは、楽園を追放されたアダムとイヴの運命そのものといえます。アーニャは、まるで「禁断の果実」を食べた者の宿命として、安住の地を得られないまま、孤独にさまよい続ける運命を背負わされていたのではないでしょうか。

 つまり、アーニャ自身がまさに歩く「禁断の果実」だったと考えられます。彼女が持つ「知恵」は、決して彼女を幸せにはしませんでした。むしろ、その力こそが彼女から温かい居場所を奪い、孤独な“楽園追放”を繰り返させてきた、悲しい呪いであったのかもしれません。

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◆旧政権の“傲慢”──神になろうとした者たちの末路

 人の心を知るがゆえに孤独な運命を背負わされたアーニャ。では、旧東国政権はなぜ、これほど危険な「禁断の果実」を生み出そうとしたのでしょうか。その根源にあるのは「神になりたい」という、人間の傲慢な願いだったのかもしれません。

 彼らがプロジェクト<アップル>で手に入れたかった力。それは、敵国の要人の心を読み、嘘や裏切りを見抜く「絶対に欺かれない諜報員」。あるいは、国民の心を掌握し、意のままに国を動かす「完璧な独裁の道具」だったのかもしれません。

 いずれにせよ、人の心を完全に支配することは、神にも等しい力といえます。旧政権は、その禁断の力を手に入れ、世界の頂点に君臨しようとした。その傲慢な野望こそが、この研究計画の始まりだったと考えられます。

 しかし、その野望が叶うことはありませんでした。原作で語られている通り「旧政権の崩壊に伴って計画は頓挫」します。神の領域を侵そうとした者たちの野望は、脆くも崩れ去ったといえるでしょう。

 そして、その野望が遺した唯一の“成果”であるアーニャという「禁断の果実」は、研究所から逃げ出し、闇の世界へと流出しました。

 皮肉なことに、世界を支配するために作られたはずの力は、今や「子供が泣かない世界を作る」と願うスパイの手に渡り、世界平和のために動こうとしています。この皮肉な運命の巡り合わせこそが『SPY×FAMILY』の面白さの一つなのかもしれません。

 つまり、プロジェクト<アップル>とは、旧政権の「神になりたい」という傲慢な願いの象徴だと考えられます。しかし、禁断の果実に手を出した者は、神話の通り破滅する。彼らの失敗とアーニャの存在は、科学の行き過ぎと人間の傲慢さに対する、痛烈なメッセージになっているのではないでしょうか。

 

 ──謎の研究計画、プロジェクト<アップル>。その名は、人の心を読む力が「知恵の実」であり「禁断の果実」であることを示す象徴だったのかもしれません。そしてアーニャ自身が、その力ゆえに孤独な“楽園追放”を繰り返してきた「禁断の果実」だと考えられます。

 神になろうとした者たちの傲慢さが生んだ孤独な少女。しかしその力は今や、偽りの家族の絆をつなぎ、世界を救うカギになろうとしています。皮肉な運命の果てに、彼女が本当の楽園を見つける日はそう遠くないのかもしれません。

〈文/凪富駿〉

《凪富駿》

アニメ・漫画に関するWebメディアを中心に、フリーライターとして活動中。特にジャンプアニメに関する考察記事の執筆を得意とする。作品とファンをつなぐ架け橋となるような記事の作成がモットー。

 

※サムネイル画像:Amazonより 『Blu-ray TVアニメ「SPY×FAMILY」第2巻(販売元:東宝)』

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