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※この記事にはTVアニメ・原作漫画『SPY×FAMILY』のネタバレが登場します。ご注意ください。

※本記事は漫画『SPY×FAMILY』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。

 「心を読める」超能力の持ち主であるアーニャ・フォージャー。作中でもとりわけ異質な存在ですが、彼女の過去には未だ多くの謎が残されています。特に、超能力に覚醒した経緯は明かされていません。アーニャはどのようにして超能力に目覚めたのでしょうか?

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◆アーニャが捕まっていた理由とは?

 謎に包まれているアーニャの過去において唯一明かされている手がかりが、かつて被験体“007”としてある研究組織に捕まっていたことです。この組織自体も謎に包まれていますが、アーニャの回想シーンでプロジェクト<アップル>の研究を行っていた研究員と同じ人物が登場していることから、同じ研究組織だと目されています。

 そもそも、なぜアーニャはその組織に目をつけられてしまったのでしょうか? 考えられる理由の1つとしてアーニャが孤児だったことがあげられるでしょう。孤児であれば被験体として証拠が残らないので、そういった理由でアーニャが狙われた可能性は十分にあり得ます。

 しかし、コミックス第111話では、まだ幼いアーニャが実の母親とともにいる描写があり、組織に捕まる前から孤児だったとは言い切れません。ここで、改めてアーニャの回想シーンが描かれた第1話を見ると研究員たちがアーニャに対し「その力は誰にも話してならない」「おまえの力は世界の平和に役立てる」と言っています。

 つまり、研究対象はアーニャではなく、あくまでもアーニャの「力」であったことがうかがえるのです。そしてこの発言から、根本的な疑問が浮かんできます。それは、アーニャの超能力ははたして組織によって後天的に与えられた能力なのか、という点です。

 研究員の発言は、捉えようによってはアーニャが先天的に「力」を持った存在とも解釈できます。そうなると、アーニャが研究対象となった理由は最初から超能力を持っていたからなのかもしれません。

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◆先天的な超能力者の可能性は高い?

 実は、アーニャが生まれつき超能力を持っていた根拠は作中でもいくつかあります。まず根拠の1つとなるのが、ドノバン・デズモンドの存在。デズモンドは、コミックス第110話でアーニャと同じく「心を読める」超能力を持っている可能性が示唆されています。

 そんなデズモンドですが、原作でもTVアニメ版でも側頭部に意味深な縫い目が描かれているのです。しかも、この傷跡は若かりしころのデズモンドには描かれていません。また奇妙なことに妻・メリンダも、デズモンドはある時から急に人が変わったと語っています。つまり、デズモンドの超能力は組織の実験によって後天的に得た可能性が高いのです。

 仮にデズモンドの頭の縫い目が研究組織の実験による手術痕だとした場合、同じ超能力を持つアーニャにも同様の手術痕があることになります。しかし、現状それらしき傷跡は確認できません。もちろん、アーニャは髪の長い女の子なので隠された部分に傷跡がある可能性もあります。

 しかし、本作が少年漫画である点を踏まえたら、ヒロインの1人であり、何より幼い子供に手術痕がある可能性のほうが考えにくいのではないでしょうか。続いて根拠の2つ目として考えられるのが、ボンド・フォージャーの実験描写です。

 ボンドはプロジェクト<アップル>の被験体“8号”として非人道的な実験を繰り返しされていました。一方で、アーニャに対してはそういった実験がなされている描写は一切ありません。動物と人間の差はあるのかもしれませんが、仮にアーニャが元から超能力を持っていたとしたら、手荒な実験を受けなかったことと辻褄が合うのではないでしょうか。

 そして3つ目の根拠が第111話で描かれたアーニャと実の母親のやり取りです。注目したいのは、アーニャが飛んでいる蝶を見かけた後のやり取り……。アーニャは蝶を見てから、「?」と疑問を浮かべ母親の方を振り返ります。母親は微笑んでいるだけなのですが、次のコマでアーニャが「ちょちょ、さん?」と言葉を発するのです。

 つまり、2人は心の中で会話していたことが分かります。このシーンは、アーニャがまだ単語を覚えていないことや、歩くのに母親のサポートがいることから、1歳後半から2歳頃の出来事だと推察できます。そうなると、アーニャが先天的に能力を秘めていた可能性も高くなるのではないでしょうか。

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◆アーニャはなぜ「心」が読めるのか?

 ここまでの仮説が正しかったとして、そもそもなぜアーニャは先天的に超能力を持っていたのでしょうか? 第111話の描写を見る限り、アーニャの母親も「心を読める」と考えていいでしょう。つまり、アーニャは特別な家系の子供である可能性が考えられます。

 アーニャは勉強が苦手にも関わらず、古語だけは学年2位の実力を誇ります。これについてロイドは、アーニャが幼少期から古語に触れる環境だったと考察しており、母子ともに特殊な環境にいたことはほぼ間違いないでしょう。

 また、アーニャは何かと高貴な身分に見立てられることが多いのです。コミックス第6話では古城の囚われの姫となっていました。さらにコミックス第88話でも、ダミアンがアーニャへの借りを返すため準備したお菓子が、「ウィリー二世が敵国の女王に和睦のために贈った」とされる逸話のある品でした。

 この辺りはコメディとして描かれていますが、もしかしたらアーニャが高貴で特殊な一族の子供である伏線なのかもしれません。そうなれば、謎に包まれているアーニャの過去と、先天的に超能力を得ていた理由にも繋がるのではないでしょうか。

 

 ──キャラクターが特殊能力を持つ背景として、「血筋」に起因するケースは数多くの少年向け作品で採用されています。仮に、アーニャの超能力が生来のモノで、それが特殊な一族に由来していたとしても、意外と納得感は高いのかもしれません。

〈文/fuku_yoshi〉

《fuku_yoshi》

出版社2社で10年勤め上げた元編集者。男性向けライフスタイル誌やムックを中心に、漫画編集者としても経験を積む。その後独立しフリーライターに。現在は、映画やアニメといったサブカルチャーを中心に記事を執筆する。YouTubeなどの動画投稿サイトで漫画やアニメを扱うチャンネルのシナリオ作成にも協力し、20本以上の再生回数100万回超えの動画作りに貢献。漫画考察の記事では、元編集者の視点を交えながら論理的な繋がりで考察するのが強み。最近では、趣味で小説にも挑戦中。X(旧Twitter)⇒@fukuyoshi5

 

※サムネイル画像:『TVアニメ「SPY×FAMILY」第31話 場面写真 ©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会』

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