いったいどう映画にするのか──? 誰しもがそう思ったであろう、“お菓子”を原作にしたアニメーション映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』の5劇場公開が5月1日より始まりました。

 『たべっ子どうぶつ』といえば、ギンビスが1978年から現在に至るまで販売を続けているビスケットのブランド。動物の形とその動物の英語表記が載った見た目でおなじみのロングセラー商品です。

 昨今キャラクターグッズなどの展開もヒットし、パッケージに掲載されている動物のキャラクターたちの活躍も目覚ましいですが、今回はなんとそこから映画へとステップアップ。原作にはストーリーもないキャラクターたちをどう映画にしていったのでしょうか。

◆主役は動物ではなくしっかりと“ビスケット”! なるほどの設定

 ポスターのビジュアルなどでも一目瞭然な通り、今回の映画の主人公は『たべっ子どうぶつ』のお菓子のパッケージに登場する動物たちがメイン。それぞれに性別や性格が割り振られていて、見慣れていた動物たちがこんな性格だったのか、という驚きや発見があります。

 中には“ペガサス”といった今回の映画で初登場となるキャラクターもいるのですが、新顔だからこそなのか、リーダーを謳うライオンからはいけ好かない思いを向けられていたりと関係性にもドラマが加えられています。

 ただ、これだけのビジュアルを見るとただの動物たちのアドベンチャームービーに見えてしまうところですが、この映画の見事なところはしっかりと“お菓子の映画”になっている点にあります。

 作品の冒頭でも説明があるのですが、作中の世界では謎の飛来物が火山に落下したことをきっかけに、お菓子を食べたときにそのお菓子のキャラクターが具現化するようになったという設定になっています。

 つまり、この映画に登場する動物たちはあくまでも元々はビスケットという設定。動物の姿だけでなく、おなじみのビスケットのビジュアルが作中で何度も登場していたり、その設定がしっかりストーリーやクライマックスの展開などにも生かされています。ただの動物たちの映画ではなく、しっかりと“たべっ子どうぶつ”の映画になっているところが見事でした。

◆映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』が生み出した“お菓子映画”の可能性

 実は今回の映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』の功績として、お菓子を食べたときにそのお菓子のキャラクターが具現化するという設定の懐の大きさが素晴らしいといえます。というのも、『たべっ子どうぶつ』の映画なので、この設定を『たべっ子どうぶつ』だけに限定しても練りようがあったと思うのですが、それ以外のお菓子にも幅を広げているところが素晴らしいです。

 実際の今作の悪役として、綿菓子のキャラクターが登場するのですが、それ以外のお菓子の例も多数登場しているほか、この設定さえあれば、続編やほかのお菓子とのコラボレーションも広げていけます。

 たとえば、『たべっ子どうぶつ』とは別に、ギンビスからは『たべっ子水族館』という水棲生物のシリーズもありますが、そのキャラクターたちの作品なども作れる余地が設けられています。

 マーベル・シネマティック・ユニバースの登場を機に作品ごとのつながりや広がりをみせるシリーズも多いですが、今回の設定を使えばお菓子ブランドでのユニバースを広げていけます。

 お菓子が原作のアニメーションといえば、森永製菓のチョコボールのキャラクター・キョロちゃんを主人公にアニメ化したその名も『キョロちゃん』が1999年に登場しています。90話近い長期放送を果たした作品であり、お菓子原作の成功作の前例としては実は既に存在しているといえます。

 そのほか、TVアニメではないながら、やおきんが販売を務める『うまい棒』もキャラクター展開に精力的。パッケージのうまえもんを使ったテーマソングを作ったり、妹キャラのうまみちゃんを生み出し、アニメやゲーム作品とのコラボレーション企画やパチンコ・パチスロなどの展開も進めていたりとお菓子だけにとどまらず、率先して展開を広げています。

 映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』の成功次第では、続編などはもちろんのこと、ほかのお菓子シリーズでのアニメ化・映画化の可能性も広がります。

 それを考えると映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』の登場はお菓子界を揺るがすターニングポイントを生む可能性もあるでしょう。

 小説や漫画など数々の原作がアニメ化を果たしている昨今、アニメ化の“種”となる作品を探している立場の人も多いでしょうが、“お菓子のパッケージキャラクター”は意外と穴場なのかもしれません。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi

※サムネイル画像:YouTubeチャンネル『TBSアニメ』より


映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』
©ギンビス ©劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会

※タイトルおよび画像の著作権はすべて著作者に帰属します

※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

※無断複写・転載を禁止します

※Reproduction is prohibited.

※禁止私自轉載、加工

※무단 전재는 금지입니다.