1980年代に一世を風靡し、数多くの著名人にも影響を与えた野球漫画『タッチ』。青春ラブコメディとしても人気が高い本作ですが、実は長年の間タイトルの意味については謎に包まれていました。
◆あの名シーンは最初から決まっていた?
『タッチ』といえば高校野球をテーマに、主人公の上杉達也と双子の弟・和也、そしてヒロインの浅倉南の3人の恋愛模様を絡めて描いた作品。その内容からタイトルの意味は、野球用語のタッチアウトやタッチアップの「タッチ」、もしくは相手に「触る」の意味がある「タッチ」と考えられていたようです。
しかし、実は『タッチ』には驚きの意味があったことが作者のあだち充先生によって明かされています。
新事実が判明したのは、2016年10月12日発売の『ゲッサン』11月号(出版社:小学館)に掲載されたカメントツ氏があだち充先生にインタビューするルポ漫画。そこであだち先生は、「タイトルの『タッチ』は、“バトンタッチ”の“タッチ”だからねぇ」と語っているのです。つまり、和也から達也に中心人物が変更される物語は連載前から決まっていたことになります。
そのことを裏付けるように、あだち先生は立ち上げ当時から和也が他界する展開を決めていたとも語っています。
もしかしたら、ネットミームでお馴染みの「きれいな顔してるだろ」と霊安室で悲しむ達也と南の名場面も、最初からあだち先生の構想にあったのかもしれません。
──人気キャラだった和也の退場については、編集長から強硬に反対されたそうです。しかし当時の担当編集者が隠れて校了し、編集部から逃亡したため現在の『タッチ』が完成したといいます。作品の舞台裏に隠されたもう一つの物語が時を経て読者の知るところになるのは、ファンとしては嬉しいことかもしれません。
〈文/fuku_yoshi〉
《fuku_yoshi》
出版社2社で10年勤め上げた元編集者。男性向けライフスタイル誌やムックを中心に、漫画編集者としても経験を積む。その後独立しフリーライターに。現在は、映画やアニメといったサブカルチャーを中心に記事を執筆する。YouTubeなどの動画投稿サイトで漫画やアニメを扱うチャンネルのシナリオ作成にも協力し、20本以上の再生回数100万回超えの動画作りに貢献。漫画考察の記事では、元編集者の視点を交えながら論理的な繋がりで考察するのが強み。最近では、趣味で小説にも挑戦中。X(旧Twitter)⇒@fukuyoshi5
※サムネイル画像:Amazonより 『「タッチ」完全復刻版 第11巻(出版社:小学館)』





