第1話からあまりにも攻めた内容で恐ろしいことに──。

 アニメ『タコピーの原罪』の配信が、Netflix、Amazon Prime Video、ABEMAほか動画配信サービスで、きょう6月28日から始まりました。第1話の冒頭では命に関わるといった重々しい警告が表示されているとおり、ショックな内容が第1話早々に生々しく登場しています。

 実はこの『タコピーの原罪』というアニメーションは原作を尊重した、かなり挑戦的な作品になっていました。

◆衝撃的な内容の多い原作漫画をいかに映像化するのか?

 元々『タコピーの原罪』にはヒットを生んだ原作漫画が存在し、それをいかに映像化するのかで、まず今回のアニメーション化企画の“本気”の度合いを思い知ります。

 原作の漫画は2021年にタイザン5先生により『少年ジャンプ+』で発表された同名作品で、発表早々にSNSで話題となり、わずか2巻完結の短期連載作品でありながらも発行部数145万部のヒット作品でした。

 ハッピーを広めるために地球へやってきたハッピー星人のタコピーが、人間の女の子・しずかにピンチを助けてもらったことをきっかけに彼女の笑顔を取り戻そうと不思議な道具で奔走するのですが、無知なタコピーは徐々にしずかが置かれている状況を知っていく……。というところから物語が始まります。

 このしずかというキャラクターに関わらず、同級生のまりなや東らもそれぞれ生々しい背景を持ったキャラクターとして描かれていて、前述のような警告文も納得の内容であることはその第1話で描かれる“命に関わる”深刻な描写でもはっきりと分かります。

 そういった衝撃的な内容をストレートに描いた作品でもあるため、視聴に当たっては注意が必要ではあるものの、ただたんにそういった表現を盛り込んでいるのではありません。

 前述の警告に続くように「原作の意図を尊重し、映像として表現したものであり、決して当該行為を推奨するものではございません。」とある通り、原作漫画に含まれた意図をアニメーション化するに当たって表現が損なわれないよう、真正面から映像化に取り組んでいることは映像や音楽など演出面からも原作漫画を改変しないことからはっきりと分かります。

◆実はアニメの発表体制から普通じゃない作品だった

 そんな内容の面だけでなく、実はこの『タコピーの原罪』は発表形式からほかの作品とは異なる戦略を取っています。

 企画やプロデュースに大きく携わっているのがTBSでありながらも、TBSでのテレビ放送が一切予定されていません。

 昨今では配信限定でのアニメ作品も増えてきましたが、テレビ局が主導する作品としては珍しい例といえます。

 配信限定としたことでより衝撃的な表現を盛り込みやすくなったこともありますし、一般的な放送形式に捉われない発表の仕方ができるようになったのも本作の強みとなっています。

 たとえば、本来であれば夏季のTVアニメとして7月以降に放送を開始する作品が多い中、6月28日というほかの作品よりもやや先行して配信ができています。

 話数も一般的な10話〜12話といった1クールの枠に捉われない6話完結であることも発表されています。2巻しかない原作のボリュームを無理に足したり、引いたりしない映像化が予想できます。

 本来1分30秒前後の尺と決まっているOPやED映像も実は『タコピーの原罪』では1分強のやや短い長さになっていたり、CMを想定したアイキャッチなども導入されたりしていません。

 “TVアニメでないこと”を生かして『タコピーの原罪』を映像化するうえでの最良を選択した様子が随所から感じ取れます。

 原作を読んでいると第1話だけで終わらず、以降も引き続き衝撃的な表現や展開が待っていることは分かるのですが、今までであれば「果たして映像化できるのだろうか」と心配にも思うところを、この第1話時点で「これならこの後も果敢に映像化に挑んで来るだろう」という確信と、原作漫画の衝撃が映像化されることでより増幅して叩きつけられるのではという期待と興奮を持てます。

 表現としても、発表形式にしても、従来のTVアニメとは違った試みに挑む『タコピーの原罪』は夏季アニメのダークホースとして注目してもよいかもしれません。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi

 

※サムネイル画像:『アニメ「タコピーの原罪」第1話 場面写真』 ©タイザン5/集英社・「タコピーの原罪」製作委員会


アニメ「タコピーの原罪」公式サイト

©タイザン5/集英社・「タコピーの原罪」製作委員会

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