2022年に小学館創業100周年を記念して再アニメ化した『うる星やつら』。令和になってもヒロインであるラムの人気ぶりは健在でしたが、実は当時高橋留美子先生に連載終了を決意させたのは、ラムではなくもう一人のヒロインの存在だったといいます。
◆生み出したキャラクターの幸せを誰よりも願うのが高橋留美子先生
『うる星やつら』の物語は大半が一話完結型となっており、『サザエさん』や『ドラえもん』といった作品のように、物語の中で時間が経つことはありません。こうした作風からか、高橋先生もさまざまなインタビューで「やろうと思えば、いつまでも連載を続けられる」と語っています。
そんな高橋先生に「物語を締めよう」と決意させたのが、もう一人のヒロイン・三宅しのぶの存在だったそうです。2019年11月に出版された『漫画家本vol.14 高橋留美子本』(出版社:小学館)によると、「とにかく連載中ずっとしのぶのことを考えていた」と語っています。
もともとラムが脇役予定だったことは有名な話ですが、その代わり当初ヒロインの立ち位置にいたのがしのぶでした。しばらくは、主人公の諸星あたるとラム、しのぶの三角関係が描かれていましたが、物語が進むにつれて浮気性のあたるに愛想をつかし、しのぶがヒロインの座をラムに明け渡します。
しかし高橋先生は、あたるとラムがくっつくとしのぶはどうなるのかと悩んだといいます。これについては、2022年4月17日、高橋先生の公式X(旧Twitter)でも、「十回連載時、あたると結婚する未来を描いたのですが、どう解決できるかずっと気になっていました」と当時の心境をポストしています。
そして物語終盤、しのぶの新たな恋の相手となる因幡が登場し、「これでしのぶを幸せにできる」と思い、物語を締めてもいいと考えるようになったそうです。同書では、「自分が生み出したキャラクターはすべて、最終回ではいい形で着地してもらいたいと思っている」という高橋先生の想いも語られていました。『うる星やつら』の中でしのぶがどれだけ重要な存在だったのかが分かるでしょう。
──余談ですが、三宅しのぶの名前は、初代担当編集者で元・小学館取締役の三宅克(しのぶ)さんが由来だといわれています。高橋先生が最後までしのぶの幸せを願ったのには、三宅さんへの感謝の気持ちも含まれていたのかもしれません。
〈文/fuku_yoshi〉
《fuku_yoshi》
出版社2社で10年勤め上げた元編集者。男性向けライフスタイル誌やムックを中心に、漫画編集者としても経験を積む。その後独立しフリーライターに。現在は、映画やアニメといったサブカルチャーを中心に記事を執筆する。YouTubeなどの動画投稿サイトで漫画やアニメを扱うチャンネルのシナリオ作成にも協力し、20本以上の再生回数100万回超えの動画作りに貢献。漫画考察の記事では、元編集者の視点を交えながら論理的な繋がりで考察するのが強み。最近では、趣味で小説にも挑戦中。X(旧Twitter)⇒@fukuyoshi5
※サムネイル画像:Amazonより 『「TVアニメ『うる星やつら』公式スターティングガイド」(出版社:小学館)』



