4月から放送が始まったTVアニメ『ウィッチウォッチ』は、原作でもおなじみのコメディ要素も盛りだくさんの作品なのですが、作中では「それをやっちゃうんだ」というネタまでアニメーション化を果たしています。
◆そのネタ、そのままやっちゃうんだ!『ジャンプ』ネタをストレートに投入!
『ウィッチウォッチ』で驚かされるのが、原作にあった“ジャンプ漫画”ネタを堂々とTVアニメでも投入してくるところにあります。
たとえば、第2話「大型ルーキー」では主人公の魔女・ニコの魔法で、同居人である守仁の髪の毛が異常なぐらいに逆立ってしまうというシーンがあります。
それに対して「ゴンさんみたくなった」と別作品である『HUNTER×HUNTER』になぞらえたツッコミが使われます。
“ゴンさん”といえば、念能力によって急成長を遂げたゴン=フリークスのことを称する俗称。そんなツッコミから畳み掛けるように、担任の先生も「ゴン=フリークスくん入学した」「大体私の推しはクラピカよ」と『HUNTER×HUNTER』を知っていること前提のツッコミが続きます。
それ以外にも同じく第2話「飛ぶ教室」のエピソードでは、教室の重力を変化させる魔法に対して「無限城来ちゃった」「先生、鳴女に落とされたかな」といった『鬼滅の刃』になぞらえたツッコミが原作と同じくTVアニメでも再現されています。
“無限城”はまだしも“鳴女”という呼称に関してはTVアニメでもピックアップされたキャラクター名でないので、名前を聞いてピンと来たという人も限られるはず。そういったマニアックなツッコミをそのまま取り入れるのは攻めた判断でしょう。
なにより、そもそもほかの作品から引用したボケやツッコミはTVアニメ化の際には割愛されることが多々あります。そんな中、同じジャンプ発の作品ネタとはいえ、堂々と再現してくれるところは原作ファンはニヤリとさせられるし、原作を知らない人もより原作の引用要素の面白さを体験できる試みです。
◆原作にはない演出も続々!3話目からOPにもサプライズ
TVアニメ『ウィッチウォッチ』では原作漫画にあったネタの再現だけではなく、原作漫画にもなかった小ネタなども多数盛り込まれています。
第7話「カンニコチャンネル」ではサブカル好きのケイゴの私物といった小道具に『ファンタスティック・プラネット』や『アタック・オブ・キラートマト』などを思わせるビジュアルをチラリと登場させたりと、伝わる人に伝わるよりケイゴのキャラクターを強調させる演出が加わっています。
パロディではない演出で忘れてはいけないのがTVアニメ第3話のOP映像。放送からまだ1ヵ月も経っていないタイミングで、早くもOP映像のバージョン違い……、それも映像の製作工程や素材を見せてくれるという特別版が放送されました。パッケージ版の映像特典ならまだしも、実際の放送でここまで赤裸々に完成前の状態を見せてくれるとは大胆です。
凝っている部分で忘れてはいけないのが「次回予告」。登場キャラクターたちが毎回原作にはない会話劇を見せてくれるのですが、ここでもパロディギャグであったり、出演している声優さんの名前を出してきたりとこれまた作品の枠を超えた楽しみを用意してくれています。
「アニメだからこそ難しい」ネタを盛り込むことに加えて、「アニメだからできること」にも果敢に挑戦していってくれる作品なのだとよく分かります。
◆『ウィッチウォッチ』は『銀魂』の系譜にあった?
こういった攻めた演出やパロディで思い出すTVアニメに、同じく『週刊少年ジャンプ』で連載していた原作をアニメ化した『銀魂』があります。
『銀魂』の原作では同じ『ジャンプ』作品に限らず、他の漫画やゲーム、映画、さらには実在の人物などを引用したギャグがこれでもかと詰め込まれており、さらに凄いことにTVアニメ版でもそういったギャグをそのまま再現したり、アニメ独自のギャグなどをさらに加えたりするなど、今振り返ってみても挑戦的な作品でした。今回のTVアニメ『ウィッチウォッチ』もそういった系譜にあるという見方もできるでしょう。
なにより、実は『ウィッチウォッチ』の原作者の篠原健太先生はかつて『銀魂』の空知英秋先生のもとでアシスタントをしていたこともある人物。ギャグであったりテンポであったり近いイズムを感じる両作品ですが、実際に近い系譜にあります。
原作漫画と同じくTVアニメ『ウィッチウォッチ』も『銀魂』のように果敢に攻めた演出に引き続き挑戦していってほしいところ。もしかすると『銀魂』のような長寿コメディ作品として活躍していく作品になっていくかもしれません。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。『FILMAGA』、『めるも』、『リアルサウンド映画部』、『映画ひとっとび』、『ムービーナーズ』など現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。映画『ミューン 月の守護者の伝説』や映画『ユニコーン・ウォーズ』のパンフレットにライナーノーツを寄稿するなどその活動は多岐にわたる。noteでは『アニメ映画ラブレターマガジン』を配信中。X(旧Twitter)⇒@nejimakikoibumi