今なお高い人気を誇り、舞台化や実写化作品が制作されている『幽☆遊☆白書』。原作は1990年から1994年まで連載され、TVアニメも1992年から1995年にわたって放送されましたが、忘れられた設定や謎があります。また、『幽☆遊☆白書』の作中には、過激なシーンや設定があり、今の時代はもちろん当時でもアニメ化が難しかったエピソードが存在します。
◆『幽☆遊☆白書』の忘れられた設定・残った謎
オカルトコメディ漫画から格闘バトル漫画へと路線変更し、大幅に内容を省略するような形で連載が終了した『幽☆遊☆白書』ですが、回収されなかった伏線や設定の歪みが多く残されています。
●飛影はなぜ「変身」しなくなったのか?
飛影といえば、幽助の仲間でありながら、影があり狂気を秘めたミステリアスな存在ですが、コミックス7巻、12巻で行われたキャラクター人気投票では2連覇を達成するなど、非常に人気の高いキャラクターです。
そんな飛影ですが、元は幽助の前に敵として登場し、のちの「四聖獣編」でコエンマから人間界での罪の軽減を条件として幽助たちに協力することになりました。
邪王炎殺拳を習得してからは、剣術との二本柱での戦闘スタイルが定番となりましたが、幽助と最初に対峙したときに見せた「変身」の能力をその後見せることはありませんでした。
体中に無数の目が開き、肌の色は緑色に変色……まるで水木しげる先生が描く妖怪・百目のような見た目ですが、その効果は見た目に反してパワーが増強される程度と少々インパクトに欠けるものでした。
飛影が変身を使わなくなった最大の理由としては、キャラの大幅な路線変更が考えられます。
『幽☆遊☆白書 公式キャラクターズブック 霊界紳士録』(2005年3月出版、出版社:集英社)によれば、元々飛影は仲間にする予定はなく、蔵馬のみが仲間になる予定だったそうです。
しかし、当時の編集担当・髙橋氏から「こっちじゃない?」と飛影を指摘され、仲間入りさせることにしたと2016年8月に発売された『ジャンプGIGA VOL.2』の「冨樫義博×岸本斉史SP対談」で明かしています。
主人公の仲間として、変身後の容姿が相応しくないとテコ入れされ、邪王炎殺拳など新たな能力が登場したと考えられます。
●最期まで謎に包まれていた「BBC・左京の本名」、アニオリの「桑原静流との関係」
「暗黒武術会編」の戸愚呂チームの大将兼オーナーであり、闇の組織BBC(ブラックブラッククラブ)のメンバーでもある左京。生い立ちについて自ら語る場面がわずかに描かれたものの、その多くは謎に包まれています。
まず「左京」というのは苗字なのかファーストネームなのか? あるいはどちらでもなく偽名なのかさえ謎のままです。
彼の名前に関する数少ない描写がTVアニメで描かれていました。アニオリ設定となりますが、桑原の姉・静流が暗黒武術会の会場で妖怪に襲われたところを左京に助けられたことで好意を持ち、最期に左京は自分のライターを静流に渡すというシーンがあります。
ライターには「S・N」とイニシャルが刻まれていたことから、左京は本名でファーストネームであった可能性が高いと考えられます。
ちなみに『幽☆遊☆白書 公式キャラクターズブック 霊界紳士録』によると、冨樫先生は彼の名前に「きょう」という音を入れたいという希望があり「左京」になったと明かしています。
詳しく読む⇒「左京は本名だったのか?」「飛影はなぜ変身しなくなった?」 『幽☆遊☆白書』忘れられた設定・残った謎
◆『幽☆遊☆白書』連載当時でも「アニメ放送できなかった」トンデモ設定
『幽☆遊☆白書』の連載当時は、まだまだコンプライアンスが大らかな時代でしたが、当時でもアニメ放送できなかった描写や、今では絶対放送できないトンデモ設定が多く存在しています。
●主人公が彼女の制服を売っていた!?
幽助は幼馴染である雪村螢子と相思相愛の仲ですが、「魔界編」終了後のコミックス19巻「探偵業復活」では、螢子が通う学校の学生寮に関する依頼に幽助たちが霊界探偵として対応することになります。
問題解決したにも関わらず、報酬を支払わない依頼人である螢子に腹を立てた幽助は、探偵料代わりとばかりに螢子の制服を売り払い、その代金10万円を懐に納めていたのでした。
原作では、事実を知った螢子がバットを持って幽助を追いかけるコミカルな1コマで描かれましたが、現代では完全にNGな内容でしょう。
さらに、次の1コマでは制服を着て「あたしもまだまだ」と、まんざらでもないと言わんばかりの幽助の母・温子が描かれるなどカオス状態……90年代当時だからこそ許された、人気少年漫画では考えられないトンデモ設定だといえます。
●連載当時でも原作通り放送されなかった! 軀の壮絶な生い立ち
魔界で最大級の勢力を誇っていたS級妖怪の軀について、原作でその生い立ちが描かれましたが、内容はあまりにも壮絶なものでした。
軀は、産まれて間もなく父・痴皇から虐待を受けはじめ、欲望を満たす目的で体を改造までされています。
生き地獄のような日々から逃れるために、自ら酸を浴びて父の興味を削ぐという苦肉の策で自由を手にしましたが、そのせいで右半身は筋肉組織が露呈し、まるでゾンビのような見た目に……。右目は眼球がむき出しになっており、本来は美人な女性であった彼女は、見た目も過去のエピソードもかなりキワドい設定となっていました。
そのため、当時のTVアニメ放送でも、父から虐待を受けていたことは「囚われの身」という少々ぼかした内容に変更され、右目についても怪盗ルパンのようなレンズに変更されています。
1994年に発行された同人誌「幽遊白書終了記念 ヨシりんでポン!」では、軀は原作者・冨樫先生のお気に入りのキャラクターの一人で、彼女の過去をもっと詳しく描きたかったと明かされていますが、もしかすると描かれることのなかった設定もTVアニメでは放送できる内容ではなかったかもしれません……
軀は冨樫先生が描くダークな世界観を象徴するキャラクターの1人だったといえるでしょう。
詳しく読む⇒今では絶対にアウト!? 『幽☆遊☆白書』連載当時でも「アニメ放送できなかった」トンデモ設定
〈文/アニギャラ☆REW編集部 @anigala01〉
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