原作の連載終了から30年以上が経過した『幽☆遊☆白書』には、のちに明かされた知られざるキャラ設定がいくつもあります。
特に、さまざまな都合によりあっという間に終わってしまった「魔界編」には、いまだに謎に包まれているキャラや、原作以外で明かされた設定もありました。
◆ぼたんの友人「たった1コマキャラクター」とは?
ぼたんには、原作の1コマのみに登場する幻の友人キャラが存在します。
その名もレナ。コミックス第4巻で、コエンマの依頼で幽助、桑原が「幻海師範門下生大選考会」に潜入捜査したときのこと。四次審査での武道家・牙野と幽助のバトルシーンの中、一瞬だけ姿を現した彼女は、当時の少女漫画のキャラクターのような可愛らしい容姿で、「死」と書かれたカチューシャを身に着けていました。
ぼたんと同じ霊界案内人で、「好みのタイプの男の子に死の宣告をするのが一番幸せ」というキャラ紹介文が添えられており、セリフは「あなた来月死にますよー♡」という一言のみ。その後、原作に登場することはありませんでした。
一方、アニメでは67話でレナはモブキャラとして登場します。死者を霊界に案内することを「仕事とはいえ無情を感じる」とぼやくぼたんとあやめに、今月20人も案内したことを嬉しそうに語っています。
レナは、『幽☆遊☆白書』を原作としたアプリゲーム『幽☆遊☆白書 100%本気(マジ)バトル』にも登場するなど、知る人ぞ知るキャラです。
◆スナイパー・刃霧要のその後、一緒にいた少女との関係
仙水一味のメンバーは、仙水がこの世を去ったあとは散り散りになりました。「狙撃手」(スナイパー)・刃霧要は、コミックス第17巻に収録された「魔界の扉編」の最終話「それぞれの明日」に登場し、謎の少女とのやりとりが描かれています。
手首を縛られ、ボーガンの矢で射貫かれて息絶えた子猫を河原で見付けた少女は、刃霧らと同じく「残留思念を読み取る」という能力を持ち、子猫の遺体から読み取った記憶を刃霧の頭に触れて見せています。
原作では2人の関係性は恋人なのか、肉親なのか、まったく不明のままでしたが、『幽遊白書 パーフェクトファイル No.2』(出版社:ホーム社、1995年出版)によると、アニメでは兄妹という設定だったことが明かされています。
妹によって子猫の記憶を見せられた刃霧は、3人の犯人が自分のクラスメイトであることに気付き、「これからそいつら狩りに行ってくるよ」と言い残して失踪。その後の消息は不明です。
失踪直後から5年間、母親へ月20万円の仕送りを続けていたことから、最低でも5年間は生きていた可能性が高いです。
刃霧は、失踪当時まだ17歳という若さでした。若くして月20万円の仕送り金と、自身の生活費を工面するのは決して容易ではなかったでしょう。危険な人物と関わったり、ヤバい仕事を請け負ったりした結果、何かしらのトラブルに巻き込まれて命を落とした可能性もありそうです。
◆「柘榴」とは何者だったのか?
「魔界編」で、登場自体が謎とされているキャラの1人が「柘榴」でしょう。コミックスにしてわずか2冊分ほどしかない「魔界編」において、さらに本編がほとんど描かれなかった「魔界統一トーナメント」の中、柘榴の登場シーンは丸々1ページに及びました。
予選終了後の会場で、柘榴は幽助に対し、「最後にオレが残り」「魔界は真の闇の世界になるのだ」と、まるで勝利宣言のような、意味深な予告を残しました。
ところが、その2ページ後には1回戦のトーナメント表で、柘榴でなく対戦相手の「枢」(とぼそ)という登場すらしないキャラが勝ち抜いたことが判明します。柘榴のバトルシーンが描かれることはありませんでした……。
また、柘榴に勝った枢は、2回戦で幽助に敗れています。3回戦で黄泉と対戦したときの幽助がまったくの無傷だったことや、幽助が1回戦であたった猫糞との闘いは1コマながら描かれたことを加味すると、枢の実力は幽助に遠く及ばなかったと想像できます。つまり、柘榴はさらに弱いキャラだったのでしょう。
アニメには柘榴の登場シーンすらありません。しかし、最終回で、柘榴と思しきキャラが、パトロール隊となり奇淋、飛影らと軀について会話している姿が描かれていますが、最後のキャスト紹介では「妖怪」のみで、これが柘榴だったのかは不明のままです。
◆雷禅の旧友・棗と九浄の関係
雷禅の旧友たちの中でも、特に描写が多かった「棗」と「九浄」の関係性は、原作では不明のままでした。容姿が似ていることから、「同じ種族では?」との憶測も飛び交いました。
魔界編の終了後の「平和の群像」に棗、九浄は登場し、原作ではここで初めて2人のやりとりが描かれています。
魔界統一トーナメントの1回戦で対戦相手だった酎を圧倒し、その後酎に口説かれた棗。棗との修行の中で、めきめきと実力を上げる酎について棗が嬉しそうに語ると、九浄は「おいおい そしたらあいつと本気でつき合う気か?」と慌てた素振りで確認します。このやりとりから、「2人は恋人同士なのでは?」と思った読者も多かったでしょう。
『幽遊白書 パーフェクトファイル No.2』で、棗と九浄は、双子の兄弟(兄、妹)であることが明かされました。酎との交際の可能性について、九浄が棗に慌てて確認をしていたのは、最強の妹・棗が、酎のような弱小妖怪と交際するのが兄としてイヤだったからなのかもしれません。
──『幽☆遊☆白書』には、のちにさまざまな媒体で明かされた設定もあれば、いまだに残っている謎がいくつもあります。今後、思わぬ形で「新たな真実」が明かされることがあるかもしれません。
〈文/lite4s〉
《lite4s》
Webライター。『まいじつ』でエンタメ記事、『Selectra(セレクトラ)』にてサスペンス映画、韓国映画などの紹介記事の執筆経験を経て、現在は1980~90年代の少年漫画黄金期のタイトルを中心に、名作からニッチ作品まで深く考察するライター業に専念。 ホラー、サスペンス映画鑑賞が趣味であり、感動ものよりバッドエンド作品を好む。ブロガー、個人投資家としても活動中。
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