『幽☆遊☆白書』のキャラクターの名前には、意外な由来や元ネタが隠されています。連載当時、時代を飾った有名人から、「まさか」のダジャレまで……!?

◆蔵馬の名前は「昭和の人気アイドル」が由来? 

 蔵馬は、妖怪としての名前「妖狐・蔵馬」、人間としての名前「南野秀一」という2つの名前を持ちますが、これらの名前には意外な由来があります。

 『幽☆遊☆白書 公式キャラクターズブック 霊界紳士録』(出版社:集英社、20053月出版)によると、その由来は元・アイドルの南野陽子さん。「南野 陽子→南野 妖狐(ようこ)」と連想し、命名したそうです。

 妖怪名の「蔵馬」は、京都府にある、密教の山岳修験の場として有名な霊山「鞍馬山」が由来という説が、連載当時世間に広まっていました。

 ところが、コミックス7巻カバーの折り返し部分の作者コメント「制作白書シリーズその②~名前編~」にて、「キャラクターの名前はひらめきで、あまり深く考えていません。」「“飛影と蔵馬”も思いつきでして」と、ウワサをキッパリと否定しています。

 また、前述の『幽☆遊☆白書 公式キャラクターズブック 霊界紳士録』では、「感覚で選んだ音に漢字を当てた」と語っています。

 クールで知的な蔵馬の妖怪名、人間名の2つの由来がまさかのアイドルの名前だったとは驚きですが、原作者の冨樫義博先生の音感とネーミング・センスの高さがうかがえる裏話といえます。

◆軀のモデルは「ジブリのあのキャラ」?

 内に秘めた狂気と、グロと美が共存する容姿を持ち、魔界最強といわれる実力者・軀。魔界編に登場したキャラクターの中でも高い人気を誇る妖怪ですが、実は「ジブリのあのキャラ」がモデルだったことが判明しています。

 1994年に発売された同人誌、『幽遊終了記念 ヨシりんでポン!』で、そのモデルは宮崎駿監督の作品『風の谷のナウシカ』に登場するキャラクター「クシャナ」だと明かされました。

 三つ巴状態となった魔界において、一つの国を統治していた軀と、トルメキア王国の第4皇女で、トルメキア第3軍最高指揮官として軍を率いていたクシャナ。境遇だけでなく、強い女性でありながらどこか寂しそうな影を感じるところなど、さまざまな共通点があります。

 『幽☆遊☆白書』のアニメ放送で軀を演じた高山みなみさんが、ジブリの映画作品『魔女の宅急便』で、主人公・キキとウルスラの2役を務めたのも何かの縁でしょうか。

 原作者の冨樫義博先生は『幽☆遊☆白書』に登場する数々のキャラクターの中でも、軀がお気に入りのキャラクターだったそうで、「もっと詳しく描きたかった」と語っています。

 コミックスにして、わずか2巻ほどしか描かれなかった魔界編において、軀が強い存在感と高い人気を博したのは、作者のキャラクターへの愛情の表れかもしれません。

◆飛影のモデルは『パタリロ!』の悪役キャラクター!? 

 『幽☆遊☆白書』に登場するキャラクターの中でも、圧倒的な人気を誇る飛影ですが、実は意外なアニメのキャラクターがモデルです。

 『幽遊終了記念 ヨシりんでポン!』によると、1982年から1983年にかけてフジテレビ系列にて放送された『パタリロ!』(ぼくパタリロ!)に登場するキャラクター「スカンキー」がモデルだったと明かされています。

 スカンキーは、主人公・パタリロを打倒し、世界一のロボット工学者になることを目論む悪役ですが、意図せずパタリロの作ったロボットを幸福にしてしまうなど「憎めない悪役」です。キャラクター像も飛影と通ずるものがあります。

 また、「飛影」という名前は、蔵馬と同じく「比叡山」という山の名前が由来という説がささやかれていました。比叡山といえば、天台宗の総本山・延暦寺があることでも有名で、蔵馬の名前の由来とウワサされた「鞍馬山」と場所も近いことから、有力な説とされていました。

 ところが、コミックス7巻カバーの折り返し部分の作者コメント「制作白書シリーズその~名前編~」にて、原作者の冨樫義博先生の「思いつき」だったことが明らかになっています。

◆桑原の名前は球界の「KKコンビ」からもらった?

 幽助のケンカ友達であり親友の桑原は、昭和から平成にかけて野球界を席巻した「2人の選手」の名前が由来です。

 『幽☆遊☆白書』といえば、主人公・幽助の苗字が「浦飯」、通っていた中学校が「皿屋敷中学」など、日本の怪談に由来するネーミングが特徴です。桑原の苗字の由来も、『幽☆遊☆白書 公式キャラクターズブック 霊界紳士録』によると、おまじないの「くわばらくわばら」だったことが明かされています。

 そこに漢字をあててみたところ、偶然にも、当時人気プロ野球選手だった「桑田選手」と「清原選手」の名前の1文字と一致。ファースト・ネームも「和博」、「真澄」から1文字ずつもらい「和真」と命名したと明かされました。

 スポーツと結びつかない『幽☆遊☆白書』で、主人公の親友である桑原の名前の由来が、まさか野球界を騒がせた「KKコンビ」であったことは驚きでしょう。

 桑原が霊刀を振るう姿は、もしかするとプロ野球選手の姿を重ねていたのかもしれません。

 

 ──ファンの間にすっかり浸透した『幽☆遊☆白書』のキャラクター名には、さまざまな由来や元ネタがありましたが、連載が終了してから10年以上経過して明かされたものも多くあります。今後も、『幽☆遊☆白書』の思いもよらない裏話が飛び出すかもしれません。

〈文/lite4s〉

《lite4s》

Webライター。『まいじつ』でエンタメ記事、『Selectra(セレクトラ)』にてサスペンス映画、韓国映画などの紹介記事の執筆経験を経て、現在は1980~90年代の少年漫画黄金期のタイトルを中心に、名作からニッチ作品まで深く考察するライター業に専念。 ホラー、サスペンス映画鑑賞が趣味であり、感動ものよりバッドエンド作品を好む。ブロガー、個人投資家としても活動中。

 

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