『幽☆遊☆白書』は、魔界統一トーナメント以降、それぞれのキャラのその後について十分な描写がなされませんでした。そこで、暗黒武術会で結成された「浦飯チーム」の4人、幽助、飛影、桑原、蔵馬のその後について、原作で描かれた事実から考察していきます。
◆妖怪に転生した幽助は人間を食べるのか?
魔界の扉編の仙水との対決で命を落とした幽助は、魔族大隔世により闘神・雷禅の遺伝子を受け継いでいたことから妖怪の力が覚醒し、妖怪として新たに生を受けました。
雷禅といえば、人間をエネルギー源とする「食人鬼」でありながら、一人の人間の女性に一目惚れしたことから断食した末、餓死したという過去を持ちます。そんな雷禅の遺伝子をもつ幽助は、妖怪として覚醒した後、人を食べるようになったのでしょうか?
答えは「NO」です。妖怪に転生した幽助の「食」についての描写が、少ないながらも原作に残されています。
コミックス17巻「それぞれの決心!! の巻」で、螢子にフラれた幽助が、螢子の実家である「雪村食堂」で普通の定食を食べる姿や、コミックス18巻「雷禅の遺言」で、雷禅からの「お前はオレの息子だが人を食いたいと思うか?」という問いかけに「いいや」と明確に否定する様子が描かれています。
雷禅は「きっとオレ達魔族の一部が過渡期の突然変異なのさ」とも語っており、人を食べる妖怪自体、今後はいなくなっていく可能性も示唆していました。
しかし、妖怪に転生し、螢子や桑原よりもはるかに寿命が長いであろう幽助が、今後どのようなエネルギー源を必要とするのかは、興味深い点です。
◆飛影は人間を食べていた? 大好物は意外な料理!?
人間に憑依した蔵馬と異なり、生粋の妖怪である飛影は人を食べていたのでしょうか? こちらも、答えは「NO」です。
1997年1月にリリースされたサウンドトラック『幽☆遊☆白書ミュージックバトル編2』(レーベル:ポニーキャニオン)に収録されていたスペシャルミニドラマ「戦士の空腹」で、食事に行くことになった幽助たち一行が「何を食べるか?」で揉めるシーンがあります。
幽助は中華、桑原は和食などそれぞれが食べたいものを提案する中、食べに行きたいものを問われた飛影は「……もんじゃ焼き」と答えています。
飛影と蔵馬の過去を描いた「TWO SHOTS」に妖怪・八つ手、魔界編に軀、黄泉など、人を食べる妖怪も多く登場しますが、飛影は人間の食事が口に合ったことが幸いしたようです。
また、剛鬼が「前科十二犯」「魂を食う鬼」と説明があったのに対し、飛影の初登場時の霊界データは「前科なし」であった点からも、人間界で常習的に人間を捕食していた可能性はほとんどないと考えていいでしょう。
◆桑原は霊剣を発動できなくなった?
魔界の扉編以降、バトルシーンがほとんどなかった桑原。仙水一派との闘いの序盤は霊剣が発動せず、能力が失われたかと思われましたが、水兵(シーマン)・御手洗との接触時に突如、新たな能力「次元刀」を発動させました。
魔界統一トーナメントにも参加せず、1人受験勉強に励んでいた桑原は、もう闘うこともなくなり、霊剣の能力は消えてしまったかのように思われました。
しかし、魔界編の終了後に描かれた「のるか そるか」で、霊界の過激派である「正聖神党」のもとに乗り込む際、最初は次元刀が発動するか本人も不安な様子だったものの、雪菜の言葉を思い出した途端、あっさり次元刀を出しています。
暗黒武術会編でも、美しい魔闘家鈴木から渡された「試しの剣」によって、戸愚呂兄との対戦では剣の形状を自由自在に変化させたり、四聖獣・白虎との闘いでは「化け物の串刺しドーナツ・ヴァージョン」を急遽思いついたりするなど、実は浦飯チームのメンバーでもっとも多彩な技をもつアイデアマンです。
魔界編後に雪菜と同居を始めたことで守るものができ、さらなる能力の覚醒も期待できるかもしれません。
◆蔵馬はなぜ「妖狐」の姿に戻らなくなったのか?
暗黒武術会編の裏浦島との闘いの中で、「前世の実」の作用によって妖狐の力を取り戻した蔵馬ですが、その後は基本的に南野秀一の姿で闘いに挑んでいます。
魔界編でもそれは変わらず、黄泉の陣営に加わってからも南野秀一のままで、バトルシーンのここぞという場面でのみ妖狐の姿を見せましたが、蔵馬はなぜ魔界でも妖狐の力を開放していなかったのでしょうか?
2005年に発売された『幽☆遊☆白書 公式キャラクターズブック 霊界紳士録』(出版:集英社)によると、仙水編以降、魔界の穴の影響や前世の実の副作用により敵意が限界点に達すると、約50%の確率で妖狐に戻るとされています。
しかし、妖狐化が南野秀一の生命力を大きく削る点や、人間界で南野秀一としての生活を望む蔵馬自身の意志を考慮すると、彼は意識的に南野秀一の姿を選択しているのかもしれません。
その裏付けに、アニメ放送では魔界統一トーナメントで強敵・時雨を相手に一時的に妖狐化したのち、すぐに南野秀一の姿に戻り、見事勝利しています。
──魔界統一トーナメント編の終了後、あらたに霊界探偵としてのストーリーが展開していくことが期待されましたが、連載終了を迎えた『幽☆遊☆白書』。
その後、出版されたファンブックなどで一部設定が補完されたものの、未回収の伏線や、説明不足の描写がまだまだ残されたままです。
また新たな媒体で、新情報が飛び出すこともあるかもしれません。
〈文/lite4s〉
《lite4s》
Webライター。『まいじつ』でエンタメ記事、『Selectra(セレクトラ)』にてサスペンス映画、韓国映画などの紹介記事の執筆経験を経て、現在は1980~90年代の少年漫画黄金期のタイトルを中心に、名作からニッチ作品まで深く考察するライター業に専念。 ホラー、サスペンス映画鑑賞が趣味であり、感動ものよりバッドエンド作品を好む。ブロガー、個人投資家としても活動中。
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