数多くの謎を残したまま連載が終了した『幽☆遊☆白書』。その後、ファンブック等の出版により回収された伏線もありますが、未解決の問題がまだまだ残されています。原作やアニメ放送の情報をもとに、それら伏線や謎の答えを考察していきます。
◆なぜ突然に死々若丸は「小さく」なったのか?
暗黒武術会編で、裏御伽チームのメンバーとして登場したイケメン妖怪・死々若丸。魔界編で黄泉の陣営に加わった蔵馬の招集によって、酎らとともに再度登場することになりました。
ところが、コミックス18巻「それぞれの一年 蔵馬 後編」にて、再登場した死々若丸は、美しい魔闘家鈴木の肩に乗るほど体が小さくなり、頭には2本の角が生え、まるでマスコットキャラクターのような容姿になっていました。
その後は2つの姿が描き分けられていましたが、肝心な「なぜ小さくなったのか?」についての説明はありません。
「小さくなった」理由は、いくつか推測できます。1つ目は「妖力の消耗を抑えるため」です。
暗黒武術会での幻海との対戦時、死々若丸は魔哭鳴斬剣を使うと「かなりの妖力を消耗させられる」と明かしています。また、コエンマも同じく2つの姿を使い分けていましたが、これは魔封環に霊力を溜めるために普段の消費霊力をセーブする目的がありました。これらの事実を踏まえると、強くなる過程で2つの姿を使い分けるのが効率的だと気づいたためかもしれません。
2つ目は「おとぎ話要素の追加」です。裏御伽チームはそれぞれ金太郎、桃太郎といったおとぎ話に登場するキャラクターがモチーフですが、死々若丸のモデルとされる「牛若丸」は、歴史上の人物・源義経であり、少々路線が異なります。
おとぎ話に登場する小さいキャラクターといえば、「一寸法師」が連想されますが、スマホゲーム『幽遊白書100%本気(マジ)バトル』では、小鬼化した死々若丸が「一寸の奥義」という技を使います。このことから、死々若丸は一寸法師の要素が含まれている可能性が高いといえるかもしれません。
◆戸愚呂チーム「武威」その後の行方は……
暗黒武術会で飛影に完敗し、命さえ捨てようとした武威は、その後の行方はおろか生死さえ明らかになっていません。
魔界編では、蔵馬の招集により酎、凍矢といった有志ある暗黒武術会の敗者たちが再登場しましたが、その中に武威の姿はありませんでした。
武威は、戸愚呂チーム4人の中でも戸愚呂弟に並んで求道者的な信念を持っていた妖怪です。飛影との闘いでも邪王炎殺黒龍波を跳ね返したり、人間界の妖怪では珍しい「武装闘気(バトルオーラ)」を纏ったりと、大きな可能性を感じさせました。
また、飛影との激闘はコミックス17巻に掲載された「発表!!連載3周年突破記念! 『幽☆遊☆白書』 究極の名場面コンテスト」で、見事2位に輝いています。また武威の闘う姿を見たかったという読者も多かっただけに、その後の行方は気になるところです。
アニメ放送版では、武威は敗退後に幽助と戸愚呂の決着を見届けていることから、幽助という新たな強者が現れたことも認識していたはずです。戸愚呂に挑むことだけを糧に生きてきた武威だからこそ、「幽助に勝つ」という新たな目標ができたことで、命を捨てることを踏みとどまった可能性が高いでしょう。
その後、魔界トンネルの結界が解かれ、人間界と魔界を自由に行き来できるようになったことで、対戦相手にも事欠かなくなりました。武威はどこかで「強くなる」ために日々闘いに明け暮れているはずです……。
◆「美食家(グルメ)」の能力者・巻原の生死
戸愚呂兄を食ったことで、逆に自身を乗っ取られてしまった「美食家(グルメ)」の能力者・巻原定男ですが、彼は命を落としたのかさえ定かではありません。
入魔洞窟にて、蔵馬に正体を見抜かれて頭を切断されたことで、おそらく巻原としての命は落としたと考えて良いでしょう。しかし、巻原の身体を乗っ取った戸愚呂兄は、蔵馬が仕込んだ邪念樹によって永遠に蔵馬の幻影と戦い続けることになったため、巻原の身体は朽ちて土に還ることもできません。
その後、霊界に巻原の魂が到着したという後日談などもないことから、巻原の魂は戸愚呂兄と融合し、戸愚呂兄とともに蔵馬の幻影と戦い続けるという永遠の苦しみを味わうことになった可能性があります。また、戸愚呂兄と同様に、巻原に食われた「盗聴(タッピング)」の能力者・室田繁にも同じことがいえるでしょう。
仙水一派には、御手洗や天沼など能力をただ利用されただけで、仙水亡き後も生存していた人間が多かった中、巻原と室田の結末はあまりに不憫だったといえるかもしれません。
◆外伝「TWO SHOTS」、「のるか そるか」はなぜアニメ放送されなかった?
打ち切りもなく、原作の物語をほぼ最後までアニメ放送した『幽☆遊☆白書』ですが、番外編として描かれた「TWO SHOTS」、「のるか そるか」の2つのエピソードはなぜかアニメ放送されませんでした。
蔵馬と飛影の出会いを描いた「TWO SHOTS」、幽助や飛影、コエンマの生死がかかった「のるか そるか」のアニメ放送を望む声は多かったはずです。
そんな期待に応えるかのように、2018年に発売された『25周年記念Blu-ray BOX 魔界編』(発売元:バンダイナムコフィルムワークス)に、OVAとして「TWO SHOTS」、「のるか そるか」がともに収録されました。
OVAでリリースされた2話は、原作を踏襲していたものの、どちらも1話13分ほどしかありませんでした。ストーリー説明の観点ではアニメ化が望ましかった2話ですが、アニメ放送には尺が足りなかったことが、当時見送られた原因だったのかもしれません。
──原作の連載が終了して30年以上が経過した今も、なお根強い人気を誇りさまざまな媒体でファンの期待に応え続ける『幽☆遊☆白書』。期待の声がある限り、今後も新たな真実が少しずつ明かされ続けていくのかもしれません。
〈文/lite4s〉
《lite4s》
Webライター。『まいじつ』でエンタメ記事、『Selectra(セレクトラ)』にてサスペンス映画、韓国映画などの紹介記事の執筆経験を経て、現在は1980~90年代の少年漫画黄金期のタイトルを中心に、名作からニッチ作品まで深く考察するライター業に専念。 ホラー、サスペンス映画鑑賞が趣味であり、感動ものよりバッドエンド作品を好む。ブロガー、個人投資家としても活動中。
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