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※この記事にはTVアニメ・漫画『幽☆遊☆白書』のネタバレが含まれます。ご注意ください。

※本記事はTVアニメ・漫画『幽☆遊☆白書』に関するライター個人の考察・見解に基づくものであり、公式の設定や見解とは異なる場合があります。

 『幽☆遊☆白書』の妖怪たちは、ただ人間を脅かす存在として描かれているわけではありません。戸愚呂弟、樹、雷禅のように、誰かへの想いを捨てきれず、その愛情ゆえに自らの人生を大きく変えた者もいます。敵として立ちはだかった彼らの行動を振り返ると、残酷さの奥にある深い孤独と信念が見えてきます。

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◆弟子を守れなかった男が選んだ、自分への罰

 戸愚呂弟(以下、戸愚呂)は、浦飯幽助たちの前に立ちはだかった強敵であり、暗黒武術会編を象徴する存在です。圧倒的な肉体と力を求め、かつて人間でありながら妖怪へ転生した彼は、冷酷な戦士のように見えました。

 しかし、その選択の裏には、ただ強くなりたいという単純な欲望だけでは片づけられない過去があります。若き日の戸愚呂は、弟子や仲間を妖怪・潰煉に奪われました。守るべき者を守れなかった記憶は、彼の人格を大きく変えてしまいます。

 その後の戸愚呂は、力と若さを求めて妖怪へ転生しました。けれども、それは復讐だけのためではなく、守れなかった者たちへの償いであり、自分自身に課した罰でもあったと考えられます。幽助との戦いで全力を出し切ったのち、戸愚呂が選んだのは軽い地獄ではなく、もっとも過酷な冥獄界でした。

 幻海に対して見せた最期の表情も印象的です。サングラスを外し、「世話ばかりかけちまったな」と告げる姿からは、冷たい妖怪ではなく、かつて人を深く愛していた男の面影がにじんでいました。戸愚呂の強さは、守れなかった愛情を抱え続けた弱さと表裏一体だったのかもしれません。

◆仙水のすべてを見届けた、樹の歪んだ純愛

 樹は、仙水忍の相棒として境界トンネル計画に関わった妖怪です。彼の愛情は、まっすぐで温かいものではありません。むしろ、見る人によってはかなり歪んだ感情に映ります。

 桑原から仙水のどこが気に入ったのかを問われた樹は、仙水の強さも弱さも、純粋さも醜さも、哀しさもすべてだと答えています。仙水が傷つき、汚れ、堕ちていく姿を見ていたかったという言葉は、常識的な愛情からは大きく外れているでしょう。

 それでも樹は、仙水を都合よく理想化していたわけではありません。善人としての仙水も、壊れていく仙水も、すべて含めて受け止めようとしていました。だからこそ、仙水が敗れたあと、コエンマに対して「忍の魂は渡さない」と言い切り、彼の亡骸とともに時空の彼方へ消えていきます。

 樹の愛は、誰かを救う愛ではありません。止めることも、正すこともせず、ただ最後まで見届ける愛でした。歪んでいるのに、どこか純粋でもある。その危うさこそ、仙水編に残る忘れがたい余韻の一つです。

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◆一夜の出会いを700年守り抜いた雷禅

 雷禅は、幽助の先祖にあたる存在であり、かつて魔界でも恐れられた食人鬼です。「闘神」と呼ばれたほどの力を持ちながら、彼の最期は戦いによるものではありませんでした。人を食べることをやめ、長い断食の末に命を落としたのです。

 きっかけは、人間界で出会った一人の女性でした。雷禅はその女性に一目で惹かれ、一夜を共にします。その後、再会の約束を明確に交わしたわけではありません。それでも雷禅は、自分の中で「再び会うまで人は食べない」と決め、その誓いを700年ものあいだ貫きました。

 その女性は雷禅の子を産んだあとに亡くなり、二人が再会することはありませんでした。それでも雷禅は誓いを曲げません。命をつなぐために必要だったはずの食事さえ拒み続けた姿は、執念にも見えますが、同時に信じられないほど一途な愛情でもあります。

 雷禅の物語が胸に残るのは、強大な妖怪がたった一度の出会いに人生を捧げたからでしょう。力で世界を従わせることもできた男が、誰にも強制されていない約束を守り続けた。その不器用な純愛が、幽助へとつながる大きな血の物語を生んだのです。

 

 ──戸愚呂弟、樹、雷禅は、それぞれまったく違う形で愛を貫いた妖怪です。戸愚呂は守れなかった者たちへの後悔を背負い、樹は仙水の光も闇も見届け、雷禅は一人の女性への想いを何百年も手放しませんでした。

 彼らの愛情は、必ずしも正しく、健全で、幸せなものではありません。それでも、自分の命や未来を犠牲にしてまで誰かを想い続けた姿には、たんなる悪役では終わらない重みがあります。人間側にも暗い影を持つ人物が多い『幽☆遊☆白書』だからこそ、妖怪たちの中にある愛や孤独が、より強く心に残るのでしょう。

〈文/最上明夫 編集/相模玲司〉

 

※サムネイル画像:Amazonより 『「幽☆遊☆白書」第19巻(出版社:集英社)』

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