◆ベル友ってなに?「ポケベル」にまつわる心優しい事件
<画像引用元:https://www.ytv.co.jp/conan/archive/k1169692.html Ⓒ青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996>
いまではほぼ完全に姿を消したポケベルを使った事件もありました。
それはTVアニメ第194~195話「意味深なオルゴール(前編・後編)」のこと。大学進学で上京してきた春菜が無作為でベル友(ポケベル番号を交換した友達)を探したところ、顔も年齢も分からない「秋悟」という男性と仲良くなりました。
春菜は秋悟から高価な品としてオルゴールを贈られ、彼が使っていたポケベルも渡されてしまいました。返したくても連絡が取れずに困ってしまい、毛利探偵事務所を訪れたのです。
ポケベル自体が姿を消した現在、完全に匿名の誰かとの出会いは珍しいシチュエーションにも思えます。
秋悟の家を見つけて訪問したコナンたちですが、不思議なことに、春菜がオルゴールを贈られたのは、高齢の秋悟が亡くなったあとだと発覚しました。さらに、遺族は春菜に2人の関係にしつこく探りを入れてきます。
怪奇事件のようなことも起こり、不穏な空気が立ち込めるのですが……。
オルゴールには欠けた音があり、それを紐解いていくと時価2億円もする切手が見つかるという仕組みになっていました。お金に困っていた遺族たちは、それを探し出したかったのです。
コナンの活躍で解決し、遺族は手のひらを返したように感謝を述べるのですが、秋悟の亡きあと春菜とベル友を続けていたのは誰だったのか? それは、孫の一人・緒方志郎でした。2人のあいだに“春が訪れる”という心温まるエピソードとなりました。
ポケベル自体は平成初期に普及して、女子大生が公衆電話に行列を作る現象も起こりました。コナンも初期は公衆電話を使っていました。しかし、いまでは一人ひとりが携帯電話を所持する時代。ポケベルは送信専用機という一面もあり、「既読」かどうか以前に送信できていたかも分かりません。
コナンの端末もガラケー、スマホへと変化してきたように、リバイバルは難しいかもしれませんが、ポケベルには顔が見えないからこそのロマンもありますね。一方で、ネットリテラシーの緩さにも時代を感じさせます。
──「テープ式の留守番電話」「ファクス」「ポケベル」……平成レトロなトリックも、改めて観てみると懐かしい気分になるのではないでしょうか。世代を超えた国民的アニメなので、お子さんと一緒に昔話をしても楽しいかもしれません。
〈文/mizuno @wr_mizuno 〉
編集プロダクション出身。アニメ系月刊誌『PASH!』編集者・ライターを経験。複数の紙媒体・web媒体で記銘原稿を寄稿する。KADOKAWA、小学館、主婦と生活社、ムービックなど各出版社・メーカー発売のムック・単行本の編集・取材・原稿執筆を務める。現在はフリーランスの編集者・ライターとして企画立案・記事作成を行なう。2023年、働く女性向けの新規コンテンツ立ち上げに運営として参画中。