◆ロボットとしてドラえもんは間違っているのか?
ただし今回の『映画ドラえもんのび太と空の理想郷』の面白いところは、むしろこのソーニャとドラえもんが仲良くなった“あと”にあると言っても過言ではありません。話題性だけでパーフェクトネコ型ロボットをただ登場させたワケではないことが、しっかり映画の後半にかけて描かれていきます。
ソーニャはパーフェクトネコ型ロボットというだけあって、従順で仕事を立派にこなすキャラクターとして描かれています。本来の人間の役に立つために作られた存在である「ロボットらしさ」が強調され、あまりにも自由奔放すぎるドラえもんのロボットとしての違和感が浮き彫りになってきます。
じゃあロボットとしてドラえもんは間違っているのか? といった疑問が湧いてきたとき、本作の映画に隠された“あるテーマ”がより際立ってきます。
ソーニャがいかにしてパーフェクトネコ型ロボットとして生まれたのか。そもそもパーフェクトネコ型ロボットとはなんなのか。物語が進んでいくことでそういったソーニャの背景についても明かされていくので、ロボットはかくあるべきか? という疑問に対するこの映画の答えも自然と見えてくるようにできています。
クライマックスでドラえもんがソーニャに訴えかける「ある言葉」は、ロボットではなく人間である観客までをも「ハッ」とさせてくれるので必見です。
──ドラえもん映画といえば、ゲストキャラと仲良くなるのはどちらかといえばのび太がその役割を担ってきました。
しかし今回の『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』ではその役目を担うのはドラえもんでした。そういった視点でも、これまでのドラえもん映画に親しんできた人ほど今年の映画は衝撃的なのではないでしょうか。
42作品も作っているといい加減ネタも尽きてくるんじゃないかという気になるドラえもん映画ですが、今年は「そんな切り口がまだ残っていたのか」という驚きの作品となっています。
子ども向けの作品とあなどれないドラえもん映画。パーフェクトネコ型ロボットとの出会いは、ドラえもんの胸の内だけでなく私たちの心も揺さぶってくれるはずです。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi
『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』公式サイト
配給/東宝 ©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 202