◆シャディク・ゼネリはなぜクワイエット・ゼロの罪を背負ったのか?
ただでさえ、プラントクエタの件で重罪を課せられそうなシャディクですが、なぜ、さらにクワイエット・ゼロの分まで罪を背負ったのでしょうか。
考えられる理由は、ミオリネの存在です。作中では、シャディクはミオリネに思いを寄せているような描写が見られ、クイン・ハーバーでプロスペラがミオリネを陥れたときには「グエル、汚したな、ミオリネを」と普段は冷静なシャディクが、ミオリネを守れなかったグエルに対して怒りを見せていました。そんな大切な存在であるミオリネを守るためにシャディクは罪を背負ったのかもしれません。
もし、シャディクが罪を背負わなかった場合、真の首謀者であるプロスペラだけでなく、クワイエット・ゼロに加担していたデリングも罪に問われ、デリングの娘であるミオリネも追求を避けられないでしょう。最悪の場合、ミオリネは一時期プロスペラと協力関係にあったため、罪に問われるかもしれません。
また、首謀者のプロスペラの娘であるスレッタだも、追求を避けられないうえ、犯人の娘と言われ迫害を受ける可能性があるでしょう。
スレッタが追求や迫害を受けた場合、スレッタだけでなく彼女を大切に思うミオリネだって傷つくでしょうし、スレッタとミオリネの結婚に影響する可能性が考えられます。
そのような事態を避けるために、ミオリネを守ろうとシャディクは無関係の罪まで背負ったのかもしれません。
好きな子を守れたからこそ、最終話でミオリネに別れを告げたときのシャディクは、清々しい態度だったのかもしれません。そんなシャディクの真意に、ミオリネは気づいていたのではないでしょうか。
最終話でスレッタと並ぶミオリネの左手の薬指には指輪が輝いていましたが、シャディクと会っていたときには指輪をつけていませんでした。ミオリネとシャディクは、かつてともに事業プランを作成、提出するぐらい仲が良く、当初は御三家のなかで誰よりも仲が良さそうでした。そんなシャディク相手だからこそ、罪を背負った理由や自分への気持ちを察して、もう二度と会えない可能性があるシャディクに配慮し、ミオリネは指輪をつけずに会いに行ったのかもしれません。
──罪の重さから考えてシャディクの死刑は免れないように思えますが、子どもに罪を背負わせるのはなく大人たちに責任をとってもらいたいもの。今後、シャディクの行方が語られるとしたら、可能性があるのは小説でしょう。シャディクが死刑を免れるのを願うばかりです。
〈文/林星来 @seira_hayashi〉
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