◆宮崎監督は『エヴァ』を意識していた?
『君たちはどう生きるか』では、これまで『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズなどで活躍してきた本田雄氏が『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の制作組から引き抜かれるような形で、作画監督に抜擢。宮崎監督が「また庵野が恨むんです」とつぶやく様子も収められていました。
そんな体制で制作されていながらも、試写の直後に宮崎監督が「エヴァンゲリオンが越してきたな」「現代的になった」と、やや不本意気味のニュアンスで映像の感想を漏らす様子が収められていたのが衝撃でした。
実際『君たちはどう生きるか』の作中には従来のジブリ作品では観られなかった“映像”が紛れているように思える瞬間は多々あり、それらは意図的な新たな風を取り入れようという試みと想像もできたのですが、今回の番組に収められた発言を思うと「もしかすると本意ではなかったのかも」なんて想像をしてしまう瞬間でした。
明確に方向性が分かるドキュメンタリーだったからこそ、こういった別の衝撃が走る瞬間の登場に、製作中に起きた事件はもっと無数にあったのだろうと想像が膨らみます。
◆意味深な「ナウシカを描く様子」が意味するものとは?
「プロフェッショナル 仕事の流儀『ジブリと宮崎駿の2399日』」は、スタジオジブリや宮崎監督がこの数年間、何をしていたのか。そして今何をしているのか。その片鱗を垣間見れる番組となっていましたが、終わり方が“意味深”だったことも放送終了まもなくSNSなどで話題になりました。
番組の最後には『君たちはどう生きるか』を制作している様子ではなく、宮崎監督が新たに『風の谷のナウシカ』のナウシカと、原作漫画版に登場する巨神兵オーマのビジュアルに着色をしている様子の映像が流れます。
不可解なことにこの作業がなんのために行なっているのかに言及がなかったことから、視聴者は「ナウシカの続編が作られるのか?」 「ジブリパークの展示じゃないか?」と、さまざまな予想をすることになりました。あえて新たな仕事が何かを具体的には説明せずチラ見せしてくれるところが、これまたニクい編集となっており、今後、注目すべき点といえるでしょう。
〈文/ネジムラ89〉
《ネジムラ89》
アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは『読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレター』を配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi
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