◆サギおとこにはモデルがいた?

 眞人とサギおとこの関係はこの映画でも重要なテーマの一つになっています。

 眞人とサギおとこは作中で何度も揉め合います。そもそも冒頭では怪しい言動を重ねるサギおとこに対して、眞人はかなり攻撃的な姿勢を見せます。

 しかし、物語が進んでいくとともに、そんなお互いの存在に対する思いは、眞人にとってもサギおとこ自身にとっても次第に変化を生んでいきました。

 この“サギおとこ”という名前は、2018年7月15日に放送された、プロデューサー・鈴木敏夫さんのラジオ『鈴木敏夫のジブリ汗まみれ』で早くも名前が明かされています。

 この放送では、さらに「宮崎駿監督にサギおとこにモデルはいるのか?」と直接聞いたエピソードを鈴木敏夫さんは語っており、「鈴木(敏夫)さんじゃないよ」と、明らかに鈴木敏夫さんを意識したような答えが返ってきたといいます。

 主人公の眞人が家族で疎開していたり、父親が航空機の製作所を取り仕切っているなど、宮崎駿監督自身の設定とも近いことを踏まえると、ある意味、眞人は宮崎駿監督自身も投影されているように思わせるとともに、宮崎駿監督が鈴木敏夫プロデューサーをどう思っているのかが、この眞人とサギおとこの関係からも読み取れるのではないでしょうか。

 さらに注目は、実はこの2018年7月15日のゲストは、『君たちはどう生きるか』で主題歌を務めた米津玄師さんでした。

 当時は三鷹の森ジブリ美術館で公開されたばかりの短編『毛虫のボロ』の映画の感想を寄稿した縁でのゲスト参加となっています。

 ですが今思うと、既にこの放送回であえて『君たちはどう生きるか』の話題に触れていることを考えると、この頃には主題歌アーティストとして米津玄師さんは候補に上がっていたのかも、と想像が膨らむところです。

 あの謎のポスターだけでなく、実は多くのヒントが映画の公開前に隠されていたのかもしれません。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレターを配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

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