◆なぜジブリは「海外のみ」で動画配信をはじめたのか?

 そもそもなぜジブリは海外向けには配信を解禁したのでしょうか?

 その目的については、配信を実施しら2020年当時スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが、三鷹の森ジブリ美術館初の公式写真集に合わせて行なった写真展『ジブリ美術館ものがたり』のイベントに登壇したとき、宮崎駿監督には「映画の制作費をこれで稼ぎます」と述べ、宮崎駿監督からは「じゃあしょうがないよね」と承諾を得たという逸話が語られています。

 そもそも当時の宮崎駿監督自身は動画見放題サービスをなんなのかよく分かっていないことも語られており、映像配信サービスを宮崎駿監督が断固として拒否しているわけでもないことが想像できます。

 加えて、このジブリ作品の海外向けのNetflix配信については、これまでの映画の制作に製作委員会として名を連ねていたフランスの配給会社であるワイルド・バンチ・インターナショナル社が交渉窓口となっていることも公になっています。

 スタジオジブリ単身での決断というよりも、ワイルド・バンチ社の働きかけをきっかけに海外配信が実現したという見方ができます。2022年末にはこのNetflixでの配信契約についてイギリスでジブリ作品のソフト配給などを行なっているスタジオカナル社が、自社にストリーミング権利がないことを不当とする訴訟をワイルド・バンチ社に対して行なっていたりと、権利関係の一筋縄ではいかない複雑さを感じさせるニュースも流れたばかりでした。

◆ジブリ作品の日本での配信もいつかは実現する?

 日本に住んでいる人たちからすると、やはり気になるのは日本向けに動画見放題サービスでの視聴がいつ解禁されるのかでしょう。

 現時点で解禁されていないことからも、スタジオジブリとしては、意欲的に配信を行いたいという意図がないことが分かりますが、年を経るごとにどんどんジブリ作品の視聴しづらい傾向が増していることを考えると、今後ずっと配信を行わないということもないでしょう。

 かつては興行収入の100億円を越える日本のアニメーション映画はスタジオジブリ作品だけでしたが、近年ではジャンプ漫画出身作品や新海誠監督の作品の大ヒットなど、アニメーション映画の興行の傾向にも変化が生まれてきました。

 このまま鑑賞しづらい状況が続いて“ジブリ離れ”なんて事態が起こる前に、ジブリ作品を気軽に楽しめる環境作りに動いてくれることに期待したいです。

〈文/ネジムラ89〉

《ネジムラ89》

アニメ映画ライター。FILMAGA、めるも、リアルサウンド映画部、映画ひとっとび、ムービーナーズなど現在複数のメディア媒体でアニメーション映画を中心とした話題を発信中。缶バッチ専門販売ネットショップ・カンバーバッチの運営やnoteでは読むと“アニメ映画”知識が結構増えるラブレターを配信中です。Twitter⇒@nejimakikoibumi

※サムネイル画像:metamorworks / stock.adobe.com(画像はイメージです)

関連する記事

※タイトルおよび画像の著作権はすべて著作者に帰属します

※無断複写・転載を禁止します

※Reproduction is prohibited.

※禁止私自轉載、加工

※무단 전재는 금지입니다.